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龍翔記  作者: GIN
525/693

0525話 マクシミリアンの屋敷へ

サブタイトルのみ修正(2023/1/28 16:33)

「イムロット教の司教が領主……様ってことか?」


「そ、それより……剣を振り回していたぞ……」


「ち、血もついていた!」


「じゃぁ、中から聞こえた悲鳴も司教……領主様が?」


「そこの信者にも襲いかかっていた……間違いないだろう……」


ざわざわと騒ぎ出す住民たち。


「くっ……!」


教会を遠巻きに見ていた住民たちの間で領主ヘンドリスが剣を持って暴れていたということが広がっていくのを見てアスピアは慌てて、気を失った司教を教会の中へと運び込んだ。


すでに他の信者たちは神の怒りを恐れて祈りに没頭するか、状況が把握できずに混乱したり、呆然としていたりしていた。


「足止めとしては十分か」


ガブリエルは自らが立っている地面を力強く叩く。


そして、その威力で舞い上がる砂煙。


舞い上がった砂煙に紛れてガブリエルは姿を消したのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「ガイル……あれを」


「あー、ありゃ、ミカエルだな」


モントロワの外で待機するガイルとミノスはひとり歩いているミカエルを見つけて合流する。


「カスミとリュウを運んでくれたんだな、ご苦労さん」


「ああ……最後まで持たなかったがな……まったく自分の能力がイヤになる」


「目覚めたばかりだし、戻りきっていないだけなのだろう、気にすることはない、リュウが短時間で戻ってこれる距離まで運んだけで十分だ」


「ふっ、その通りだな、ミカエルにしかできねぇことだ」


「そう言ってくれるのは嬉しいが……」


「ミカエルが眠る前にどういった立場だったのかは知らねぇが、一人で抱えようとするんじゃない……オレたちゃ仲間なんだからよ」


「そのとおりだぞ」


「そう、だな……そうだった……もう少し時間をくれ」


「ああ、ゆっくり馴染んでくれればいいさ」


「そうさせてもらう……」


そう言ってミハエルは眼下に見えるモントロワに目をやる。


「向こうの状況はどうなんだ?」


「……リュウが中に入って大暴れ……って感じだろうな」


「教会らしき建物のところで騒ぎが起きている様子は確認できた、あとは皆が出てくるのを待つのみだ」


「そうか……やはり街には残れなさそうなんだな」


「ふっ、ムリだろうな……ラウルの行方も分からなくなたという話しだったからな、領主が噛んでるんじゃ、街に残るのは危険過ぎる」


「……そうだな……ところで、これは?」


「リュウの指示でな、まぁ、使わないに越したことはないが念のためにな」


「なるほど」


「そういや、森の方はどうだったんだ?、リュウともあまり話しする時間がなかったんでな」


「ああ、行きすがらリュウに聞いた話しだが呪術師は見つけたらしい、だけどアイリスの呪いの診断には失敗したと言っていたな、で、その呪術師とお付きの者たちが仲間になったそうだ」


「ふっ、そうか、ティネリスが仲間になったんだな」


ガイルにとってはリュウに会ってすぐブラウカ王国王都ルーラーンの冒険者ギルドで冒険者となってから一番の目的だったのはアイリスの呪いへの対処だ。


呪いを解くための情報を集めようとし、そのための資金稼ぎをし、貴族らの陰謀に巻き込まれたりしながら、旅をしてきたのは全て呪術師ティネリスを探すためだ。


「……さすがだな」


「ふっ、そうだな……まったく頼もしいよ、我らがリーダーは」


「私たちはここで待っていればいいのか?」


「……少なくともオレらはな」


「どういう意味?」


「ミカエルにしかできないことを頼みたい」


「……なるほど、大体言いたいことは分かった」


「ふっ、話が早くて助かるぜ」


「……まぁ、いいわ、やってあげる」


ミカエルはバッと羽根を広げる。


「私にしかできないのでしょう?」


「ふっ、そうだ……頼んだ」


ガイルの言葉にニコリと笑って飛び立つミカエル。


そのまま西の空へと向かって飛んでいったのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「こっちだ、急いで!」


先行して進路を確認しているマルタンが声を張り上げる。


その声を背中に受けながら俺は刀を鞘に戻す。


俺の目の前で騎士が前のめりに倒れる。


「行くぞ!」


俺の言葉にテレーザとシェリィが頷きマルタンの元へと走っていく。


後を追ってくる騎士に向かって俺は刀を構える。


「に、逃げ切れると思っているのか!」


「大人しく投降しろ!」


追いついてきた騎士は2人。


教会を脱出した俺たちだったが街には人の姿があまりなく騎士が巡回していた。


騎士たちは俺たちを見つけるとすぐに止まるように命令をし、俺たちに従う意志がないと見るや斬りかかってきたのだ。


マルタンからマクシミリアンの屋敷が襲撃されたことを考えると領主の指示によるものであることは明らかだった。


「……」


テレーザとシェリィが逃げる時間を稼ぐために俺は黙って刀を構える。


言葉は不要。


すると、しびれを切らした騎士の一人が斬りかかってくる。


上段から振り下ろされた剣を半身になって躱し、そのまま刀を振る。


「ぐぁぁ……!」


「くっ!、強い!」


もう一人の騎士がたじろぎ、声を上げる。


だが、その一瞬の隙きは命取りだ。


油断した騎士の眼前で刀を振り下ろすと、その騎士は仰向けに倒れた。


直ぐ様、俺はテレーザたちの後を追う。


「はっ!」


マルタンの投げたナイフが騎士が着る鎧の継ぎ目に綺麗に刺さる。


「ぐぁっ!」


「ひぃぃっ!」


「だ、だめだ、逃げろ!」


騎士たちの練度は低く、マルタンが前方にいる騎士を数名倒すと殆どが逃げ出すような始末だ。


その中で何人かは追い縋ってくるので、その騎士を俺が倒していく。


「もうすぐだ!」


「ああ!」


マルタンの言葉にテレーザとシェリィが頷く。


二人は話しをする余裕はないようだ。


獣人であるシェリィはまだ余裕がありそうだが、テレーザはさすがに息も切れている。


だが、目的地はもうすぐ目の前だ。


もう少しだけ我慢をしてもらう。


「いけるかテレーザ」


「は……はい……お屋敷……ま、まで……はしり……きって……みせま……す」


「もうすぐだ、後ひと踏ん張り頼む」


俺の言葉に苦しいはずなのにニコッと笑って見せるテレーザ。


「まてぇ!」


俺は追いかけてくる騎士と相対し、足を止める。


「振り抜かずにいけ」


「はい!」


騎士が振るってきた剣を刀で受け止める。


キィンという金属音が響く。


「ナメるな、冒険者!」


2合3合と撃ち合う。


他の騎士よりは戦えるようだが、まだまだだ。


剣の振りが大きく、力任せだ。


これでは簡単に……


俺は刀を合わせるふりをして直前で止める。


すると目標を失った騎士の剣は空振りの形になり大きく弧を描く。


そして目の前にあるのはがら空きの騎士の身体のみだ。


「……!」


「ぐはっ!」


ドサリと音を立てて騎士が倒れる。


見るとマルタンを先頭に、テレーザとシェリィはマクシミリアンの屋敷の前にある通りへと繋がる角を曲がるところだった。


5名ほどの騎士が追ってくる声が聞こえてくる。


俺もテレーザらの後を追う。


角を曲がる頃に見えたのはテレーザが無事にマクシミリアンの屋敷に入っていくところだった。

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