0051話 ラウルとの会談 その3
新しい国とは、また大きくでたものだ。
「国…?」
ラウルは力強く頷く。
「ええ、新しい国です」
俺はガイルを見るが、彼は黙って目をつぶっていた。
「突然のことで驚かれたと思います…しかし、私は本気なのです」
「うーん、ちょっと話しがみえないな…」
「そうですね、世界情勢はさきほどお話しした通りです、で、王や貴族などの振る舞いについても」
「ああ」
「世界には賢君や慈悲深い指導者がいる国もあります…ただ、結局は程度の差であり、権力構造の上から搾取していく構図に変わりはありません」
俺は黙ってラウルの話しを聞く。
「魔王の侵攻に対しても協力する所か食料や武器の確保で足の引っ張り合いをする始末」
ラウルの声に熱がこもってくる。
「そして、その代償を払うのはいつも民衆なのです」
ラウルは手を力強く握りしめていた。
「で、ラウルはその現状を変えたい、とそう思っているんだな」
俺の言葉にラウルは力強く頷く。
「その通りです、ですが私一人でできることなどたかが知れています…そこで仲間を募って新しい国を興そうとしているのです」
俺の頭に疑問が浮かんでくる。
「なんで新しい国なんだ、自分もそれなりの立場なのだし、そこで出来ることもあるんじゃないのか?」
「おっしゃる通りです…しかし、すでに今ある国々は今のやり方で長年統治されてきています」
「だろうな」
「特権意識に差別意識も根深く、そんな権力者たちの思想を変えていくのは現実的に不可能と判断しました」
まぁ、自分たちのマイナスになる施策など、好き好んで取るはずもない。
「で、その国の新しい王にラウルがなるのか?、そうしてお前が今の権力者たちと同じにならないとどうして証明できる?」
「それは…」
ラウルが言葉に詰まったところにガイルが話しに入ってくる。
「俺とミコトはその計画に賛同しているんだ」
「そうなのか?」
これは意外だった。ミコトはともかくガイルはこういった権力闘争には興味がないと思っていたからだ。
「ああ…俺たちも…ミコトにも過去いろいろあってな、貴族どもにはいい印象を抱いていない」
俺はエリーン家での態度からも分かる、。
「ラウルのことも最初、偽善をしているだけだと思い腹が立って襲撃した」
それは初耳だ。
「あの時は肝を冷やしたよ、オーガと豹人に襲われたんだからね」
ラウルはどこか懐かしそうに話しをする。
「まぁ、実際に命を取ろうと思っていたわけじゃねぇ、一発殴って本性を暴いて帰ろうと思っていたんだ」
「それで?」
「助けられたやつらがラウルのことを必死になって庇いやがったんだ」
「…恩を感じて…?」
ガイルは頷きながら続ける。
「もちろん、それもある、だが、怪我をしている冒険者や戦う力がない子供までもラウルを庇いやがった」
ガイルが当時のことを思い出しながら更に話しを続ける。
「そしてラウルは逆にそいつらを庇いやがった」
この後のガイルの心境はなんとなく想像できる。
「そんな様子を見せられてみろ、乗り込んできた俺たちがバカみたいだ…」
「確かにな」
俺は同意する。
「で、ミコトもラウルはなんか思ってた人とは違うかも、なんていいだしやがるし…」
「それで私はガイルとミコトに今の話しを聞いてもらったんです」
元々、権力構造をよく思っていなかったガイルやミコトはラウルの話しに未来を感じたのだろう。
「あー、分かった…で、俺にもその話しに協力しろってことか?」
ラウルとガイルは同時に頷く。
「ただし、リュウに頼みたいことはただの協力じゃねぇ」
「んっ?、どういうことだ?」
「それは私がお答えします…さきほどの…」
俺はラウルの話しを聞く姿勢を取る。
「さきほどの私が王になるのか?そして私が今の権力者のようにならないのか?というご質問ですが…」
「ああ」
「残念ながら証明はできません、ただ、一つ言えることは私はその新しい国の王にはならない、ということです」
「んっ?、だったら誰が?」
俺はガイルの方を見かけたが、ガイルに務まるはずがないのでやめた。
「リュウ、いま俺に対して失礼なことを想像しただろ」
ガイルがなんか怒っているが俺は無視を決め込む。
「新しい国の王にはリュウ様、あなたに就いていただきたい」
なんでそうなる。
という思考と同時に声も出た。
「なんでそうなる」




