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龍翔記  作者: GIN
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0050話 ラウルとの会談 その2

俺は、とりあえずラウルに座るように促す。


ラウルはソファーに座りなおすと、俺の方を見ながら言った。


「時にリュウ様は現在の世界情勢をご存じですか?」


ラウルがまじめな顔で聞いてくる。


しかし、俺とアイリスは間違いなく世間知らずだ。


「いや、実はロクに何も知らない、つい先日まで老師とアイリスと3人で暮らしていて近くの町にも行ったことがなかったくらいだ」


「なるほど…では、私が知っていることをお話ししてもよろしいですか?」


俺は軽く頷く。


ガイルは黙ったままだ。


「昨年、北の国々を寒波が襲いました、そのためいつもより遅い雪解けになり、新鮮な魚介類の流通が滞りました」


「…」


ラウルは続ける。


「そこに今年の春から夏にかけて、南方で大規模な水害が起こり、さらに西方の諸国で大規模な地震がありました」


災害だらけってことか。


「南方の水害、西方の地震はそれぞれ、人的や建物などの物的な被害に加え、農作物や畜産に大きな打撃を与えました」


それだけの災害が起こればそうなってしまうのは想像できる。


「結果、世界的に米、麦、肉、魚介類などの食料が不足している状態です」


「ん…ということはルイムの町で見た状態は…」


ラウルが頷く。


「ええ、王都ではまだそれほど影響を感じませんが、地方の町や村では食料の不足が深刻になってきていると思います」


「へっ、特に自分たちで作物を作っていない商業町なんかは影響をモロに受けている」


ガイルが補足する。


ルイムの町の人たちがどこか生気がなかったのはそういう事情か。


で、ダールベン村がそれほど影響を受けていないのは自給自足ができているからだろう。


「ルイムの町は影響を受けて、ダールベン村はそれほど影響を受けていない…」


「ああ、だが本来は外から持ってくることで賄っていた農作物なんかが止まっちまう、とするとダールベン村にも影響がでてくるはずだ」


小さな村だからいまは影響が出ていないが、より大きな波が来るとそれに飲み込まれるように影響をうけるのだろう。


「さらに悪いことに何柱かの魔王が領土的野心を持ち、暗黒大陸から侵攻をしております」


「魔王に暗黒大陸?」


「ええ、魔王はご存じだと思いますが、世界に7柱いる通称:7大魔王ですね」


「で、暗黒大陸は魔王のたちの領土のことをそう呼んでいるって話しだ、別に全部が本当に大陸ってわけじゃない」


魔王の領土が暗黒大陸。


大陸と言いながら、全部が本当に独立した大陸というわけではなく実際には普通に国境を接している国もあるらしい。


ただ、強大な力を持つ魔王に対し、普通の国が攻め込むという選択肢はない。


そのため、魔王の領土は暗黒大陸と呼び、不可侵の領域であることを知らしめている、ということのようだ。


「で、そのうちの魔王<アスモデウス>、魔王<マモン>がこのタイミングで侵攻をし始めた」


「魔王か…」


魔王ベルゼバブがあのタイミングで老師の前に姿を現したことも何か関係があるのかもしれない。


「魔王の侵攻は小規模なものでした…それほど大きな影響がでたわけではありません、ただ…」


ラウルが言葉を詰まらせ、ガイルも黙り込む。


「魔王が侵攻する恐怖が、より多数の国、それに貴族などが備蓄に走り、それが民衆の生活を圧迫するという状況になっています」


魔王が攻めてくるかも知れない、という思いがある。だがまともに戦っても勝てるはずもない。


だとすると籠城して魔王軍が去るのをじっと待つ、という選択になるってことか。


大きな台風が来て、それが過ぎ去るまで家でじっとしている、家にこもるために食糧などを買い込んでおく。


そんな感覚なのかもしれない。


ただ、国や貴族、領主などといった連中がそれをすれば、一般の民が買い込む食料が不足し、値段が高騰、より買えなくなる、という悪循環に陥っているのだろう。


「災害は人の手で止めることはできません、起こってしまったことを嘆くよりも復旧や救援といった目の前のできることをする必要があります」


俺は再び頷く。


「そしてそれは…特に王家や貴族、領主など…人の上に立つとされる者の政務だと私は考えます」


まぁ、それはごもっともだ。


だからこそ、税などを集めてるのだろうし、そのための政治だ。


「しかし残念ながらいまの王家や貴族、領主などは民のために食糧事情を改善しようとしないばかりか、税の一時引き下げもせず、自分たちへの物資調達を優先している状態です」


「なるほど、だから王都はまだ活気があるのか」


王や貴族の多い王都は、それだけ物資が集まりやすい。


そのため民衆に流れてくる分も多くなり、それを求めて活気がでる、ということか。


「私は実家であるゴルベール公爵家にもまずは民衆の生活を優先するように進言しましたが、8男の私の言うことになど耳も貸してくれません」


「で、ラウルは自分のできる範囲で困ってるやつらを助けてるってわけだ」


「孤児や元冒険者など一番に切り捨てられていますので…」


ラウルは拳を握りしめている。


おそらく助けられなかった者も多いのだろう。


「ラウルが貴族らしくないことは分かった」


俺は思い切って聞く。


「で、俺に頼みたいことってなんだ?」


ラウルは一瞬考え込む様子だったが、意を決した顔をして俺に言った。


「リュウ様、私と新しい国を造りませんか?」


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