0005話 魔王の力
俺は炎に包まれて倒れるアイリスを見た。
だが、正確には未来のイメージとして、だ。
アイリスはベルゼバブの動きを追い切れておらず、いま目の前にあるベルゼバブの手をじっと見ている状態になっていた。
「まずは一つ目」
「お止めください、ベルゼバブ様!」
老師の声が響く中、ベルゼバブが炎を放つ直前に俺の刀がベルゼバブの前腕を斬り飛ばした。
そしてその勢いのままアイリスを抱きかかえ、老師の元まで戻った。
「えっ、ええっ」
何が起きたか分からず茫然とするアイリス。だが無事だ。
「下がってろ、アイリス」
「う、うん」
それだけ言うと俺は再びベルゼバブを見る。
「ほう、我の腕を斬り飛ばすとは」
斬り飛ばされた前腕を見ながら、薄く笑うベルゼバブ。
予測はしていたが、ショックもなければダメージもないようだ。
「ふん、取るに足らない存在と思い油断したか」
こちらに向き直すベルゼバブ。
「格の違いを見せてやろう」
言うが早いかベルゼバブは先ほど放とうとしていたものとは比較にならないほどの炎の柱を生み出す。
「我に傷をつけた力に免じて苦しまずに死なせてやる」
ベルゼバブが指をくいっとこちらに向けた倒すと、その炎の柱が俺に向かってきた。
「躱せる、か!」
老師もアイリスもその場から離れる。
「ふん」
ベルゼバブが指を動かすたびに炎の柱は向きを変え、俺に向かってきた。
「くっ!」
次第に追いつめられる。
そして勢いを増す炎の柱が俺の右足をかすめる。
「ぐぁぁ!」
転げるが、その際に右足に燃え移っていた炎を消す。
立ち上がろうとするが足の感覚はなく、再び転げてしまう。
「くそっ」
「そこまでだな」
ベルゼバブが再び指をこちらに向けて倒す。
「リュウ!」
アイリスの声が悲痛な声とともにそばに駆け寄ってくる。
「離れるんだ、アイリス!」
「ダメ!」
アイリスは何とか俺を立ち上がらせようとする。
だが、足は動かない。
「よくやった、リュウよ、ベルゼバブ様に手傷を負わせるとは」
老師が俺たちの前に立ちはだかる
老師がしようとしていることを察して声をかける。
「老師、だめだ!」
「これは親の務めだ」
老師は両手を広げ、壁のように立つとベルゼバブの炎の柱をその身で受け止めた。
「老師ー!」