0048話 情報収集
「ねぇ、アルドラ砂漠ってどんな魔獣が生息しているの?」
ギルドの待合場に屯している冒険者に次々と同じ質問をぶつけるミコト。
「そうだな、俺たちが戦ったのは…」
中には話してくれない冒険者もいるが、それでも少しずつ情報は集まっていた。
二人は効いた話しを紙に書き写していく。
「地図があればよかったんだけどね」
アイリスは最初、地図を探したのだがどこにも売っていなかった。
アルドラ砂漠は広く、全体を踏破したものがいないことや似たような景色が多く、地図が作りにくいこと。
さらに、そもそも砂漠で余計な道にそれるのは命の危険があり、そんなところの地図を作っても買い手がないためだ。
「でもまぁ、街道に沿って進んで、この辺とかこの辺の生息魔獣は大体わかったし」
ミコトが情報を書き写した紙を指さしながら言う。
「そうだね、ここで聞けそうな人には大体聞き終わったかな」
「アイリスさん、ミコトさん!」
顔上げたアイリスとミコトの前に、懐かしい笑顔の少女がいた。
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セントラルタウンのエリーン家に着いた俺とガイルはエリーン家の客間で執事と面会していた。
今日は当主のエリーン伯爵は外出でいないとのことだった。
俺とガイルは代理である執事に風狼の牙を入手したことを報告した。
「風狼の牙を入手なさったのですか、さすがはチーム:龍翔<ドラゴニア>の皆様です」
「へっ、苦労したけどな」
「少し時間がかかったので一度報告にきたんだ」
執事は大げさに驚いて見せる。
「それはそれはご丁寧にありがとうございます」
「まず一つ渡しておきます、残りは鉄蠍の針と合わせて、報酬と交換ということで」
「承知いたしました、こちらの素材はお預かりしておきます」
「次は2日後にアルドラ砂漠で鉄蠍の針の入手に挑みます」
「左様ですか、クエストの成功を祈っております」
「ところでよ…」
ガイルが出されていたオ社をぐいっと飲み干して言う。
「砂漠でのクエストには色々と準備がいる」
「左様で」
「準備のための支度金を少し用立てしてくれねぇか」
「おおっ、状況は分かりましたが申し訳ございません、私には支度金をご用意する権限がございません」
執事は再び大げさに驚いた様子で続ける。
「主人のエリーン伯爵も遠出をしておりまして戻るのは5日後となります、申し訳ございませんがすぐに支度金の準備はいたしかねます」
「いや、言ってみただけだ、すまねぇ、リーダー、勝手なことをした」
ガイルが俺に謝罪をする。
「…いや、いいよ」
支度金の件はガイルは自分が勝手にやったことにしてくれたんだろう。
リーダーの俺に対する気遣いが有難かった。
「では、俺たちはこれで、クエスト完了の報告でまた来るよ」
「お待ちしております」
執事に見送られながら俺たちはエリーン家を後にした。
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2人の冒険者を見送ったエリーン家の執事はすぐに自分の主人の部屋へ向かう。
「失礼します」
「…首尾はどうだ」
「はっ、風狼の牙は入手した模様です、尾行させていた者たちからも同じ報告が上がっておりますので間違いないかと」
「…本当に風狼を倒すとは」
「私も少々驚きました、まだ駆け出しの冒険者パーティ…特に期待もしれおりませんでしたが」
「まぁ、素材を入手できたのならそれでよい…引き続き監視を続けよ」
「承知いたしました」
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「サイカだー!」
「ハンフリーさんも!」
ミコトとアイリスも声を上げる。
二人に声をかけてきたのはダールベン村の村長の娘サイカと元冒険者のハンフリーだった。
「久しぶりだな…」
「王都までどうしたんですか?」
「ギルドにはハンフリーさんの冒険者登録抹消に来たんですよ!」
「…あと薬やら何やらの仕入れにな」
ハンフリーはダールベン村の守護者になるため、冒険者登録を抹消するようだ。
「抹消?」
「ああ、正式に冒険者を引退しておこうと思ってね」
「ふーん」
別に守護者は役職でもなんでもない。
自称であったり、守護する場所から任命されることなので、冒険者のままでも支障はない。
それでも冒険者登録を抹消し引退するのはハンフリーなりのけじめなのだろう。
「そうですか」
「アイリスさんとミコトさんはどうしてここに?」
「ちょっとクエストの情報収集でね~」
「そうだ、ハンフリーさんってアルドラ砂漠でクエストしたことありますか?」
「アルドラ砂漠…あるにはあるな」
「ほんと!、じゃぁ、これ見てよ」
ミコトが先ほどの紙を広げる。
「これは…?」
「アルドラ砂漠の魔獣生息図を作ってるんだ、これが街道で、こことここの魔獣はギルドメンバーに聞いて書き込んだんだ」
「なるほど、ここの辺りにオアシスがあって立ち寄ったな」
「ナイスな情報!」
ミコトが早速、紙に書き込む。
「あと、ここら辺りに魔獣:鉄蠍がいると聞いた」
「えっ!」
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「リュウよ」
「分かっている」
俺たちはセントラルタウンの商店通りに来ていた。
これからガイルの知り合いに会いに行くところなのだが、どうも尾行されているようだ。
「…3人か」
「だな」
俺とガイルは目で合図をすると、一気に駆け出す。
そのまま細い路地を進み、その後、人ごみに紛れることで尾行者をうまく撒いた。
「エリーン家のやつかな」
「そうだろうぜ、どういった思惑があるかは分からねぇが、報酬貰いにいくときも油断はできねぇな」
尾行を振り払い、俺たちはセントラルタウンの1軒の屋敷に到着する。
エリーン家ほどではないが、それなりに大きな屋敷であることには変わりない。
ただし、エリーン家ほど手入れがされている感じはなく、どこか寂れた印象がある。
「ここか?、ガイル」
「ああ、行こうぜ」
ガイルはずんずんと中に入っていく。
門番もおらず、執事に止められることもない。
俺たちはそのまま屋敷の中に入り、そして屋敷の主人の私室までやってきた。
「入るぞ、ラウル」
ガイルが扉を開け部屋に入る。
そこにはエルフの男が立っていた。




