0046話 風狼戦-決着
読み仮名です。
・風狼 → ふうろう
・オーガ流剣術奥義:両刃 → りょうじん
・オーガ流剣術奥義:双刃 → そうじん
・龍星剣術奥義:一閃 → りゅうせいけんじゅつおうぎ:いっせん
・虎華剣術奥義:茨棘 → ふうかりゅうけんじゅつおうぎ:けいきょく
ガイルが一体目を倒したころ、俺も自分の前にいる風狼に止めを刺した。
片足を失い、動きを止めた風狼。
「雷属性魔法:雷撃≪ライトニングストライク≫」
左前脚を失った風狼は魔法を避けることができず、最期の咆哮をあげると黒焦げになり倒れた。
右目の光を失った風狼は怒り狂ったように爪の攻撃を繰り出していた。
それを死角になる右側へ旋回しながらよけるアイリスとミコト。
大振りになる風狼の攻撃。
隙をついたミコトの攻撃が風狼にダメージを与えていく。
しかし、致命傷は与えられないでいた。
「アイリス、もう一回さっきの頼むよ!」
「分かった!」
ミコトが風狼の気を引くように立ち回る。
「レム!」
「オマカセクダサイ!」
レムはアイリスの懐から飛び出す。
「重力属性魔法:反重力≪アンチグラビティ≫」
アイリスに向けて透明な球体を押し出すレム。
アイリスは猛スピードで前方に弾かれる。
「喰らいなさい、私とレムの合わせ技!、虎華剣術奥義:茨棘・改」
加速したアイリスはそのままの勢いで剣技を放つ。
先ほど比べ物にならない威力を持つその技によって、アイリスのレイピアが風狼の喉元に大きな穴を穿つ。
断末魔を上げる間もなく風狼は倒れた。
「マズイですね…」
ラルガンスの魔法のパターンを読み始めたのか、風狼が徐々に距離を詰めてくる。
「闇属性魔法:闇の矢≪ダークアロー≫ からの 闇属性魔法:闇の刃≪ダークブレード≫」
ラルガンスも魔法を連発して応戦する。
その素早い動きで魔法を避けてしまう風狼に対して、魔導士のラルガンスは元々、分が悪い。
スケルトンを召喚したところで瞬殺されるだけだろう。
「闇属性魔法:闇の矢≪ダークアロー≫」
その魔法が転機になる。
このタイミングを狙っていたのか2体の風狼がラルガンスに飛び掛かってくる。
次の魔法の発動が間に合わない。
殺られる。
そう感じたラルガンス。
「…しかし、いまは…」
ラルガンスに飛び掛かった2体の風狼に、横から影が迫る。
「オーガ流剣術奥義:両刃」
「龍星剣術奥義:一閃」
左右それぞれの風狼にガイル、そして俺が剣技を放つ。
前方にだけ集中していた風狼は俺たちの攻撃によって、その首を撥ね飛ばされていた。
「へっ、仕返しだ!」
これで5体の風狼すべてを倒した。
「やったぁっ!」
ミコトの歓声が聞こえる。
そしてすぐに素材集めに向かったようだ。
「ラルガンス、よく足止めしてくれた!」
ラルガンスは片膝をついた。
「もったいないお言葉です、主よ」
「膝をつく必要はないぞ、ラルガンス、俺たちは仲間だろ」
思ったことをラルガンスに伝える。
「おお、私を仲間と呼んでいただけますか…」
ラルガンスは歓喜の涙を流している。
「へっ、まぁ、好きにさせてやれよ」
ガイルの言うことも最もだ。
「君たちすごいじゃないか!」
アスカが駆け寄ってきた。
「5体の風狼を倒すとは!、いや、なに最初は苦戦していたようだったからね、心配したよ」
アスカはラルガンスを見る。
「突然、一人増えてるし」
「へっ、苦戦したのは確かだな」
「ラルガンスが姿を見せなければ危なかった」
アイリスが駆け寄ってくる。
「それにあの淡い光ね、あの後、急に力が湧いてきたもの」
アイリスは自分の胸元を抑えながら言う。
「だな、俺やミコトも同じだ」
「ああ、俺も同じだ、ラルガンス、あの時言ってたことは?」
俺はラルガンスが、俺の声や思いに反応したという件を聞いてみた。
「申し訳ありません、私もはっきりしたことは分かりません」
ラルガンスが頭を下げる。
「しかしながら、あの時、主が皆に号令をかけたときに周囲のエーテルが動いたとでもいいましょうか、反応したのは感じました」
「…」
正直、よく分からない。
俺はパーティのリーダーとして皆を鼓舞するつもりで声を出しただけだ。
「リュウ…」
「アイリス、分かってる、考えたところでいまは答えが出るわけじゃない、いまはうまくいったことを喜ぼう」
「うん」
「それにしてもお前ら、あんな技を隠し持っていたとは」
ガイルが言っているのは俺とアイリスの奥義のことだろう。
だが、それも…。
「違うのよ、ガイル、あの淡い光に包まれた時に、不意に閃いたの…ううん、思い出したような感じだったの」
「ああ、俺もそうだ…」
「ふーん、そうかい…まぁ、俺としちゃ同じパーティメンバーに頼もしい技があるってのだけだがな」
ガイルらしい答えだ。
「おーい、風狼の牙5つゲットしたよ!、ほかにも…ふふふ」
ミコトが目当ての素材を集めてきてくれた。
それに風狼の爪や皮も集めている。
「おっし、これで一つ目の素材:風狼の牙は完了だな」
「そうだな、次にいくか、アスカ」
「ああ、風狼の遺体1体分はもらった、ミコトくんも牙以外はそのまま置いてくれてるみたいだね、私への報酬はこれで十分だ」
「ここまで案内してくれてありがとう、助かったよ」
「いや、こちらこそ重要な研究素材を手に入れられたんだ」
俺とアスカは握手を交わす。
アスカはこのままここに留まって研究を続けるようだ。
そして、俺たちはアスカと別れた。
驟雨も上がり、再び日が差してきた。
「おおっ…!」
ラルガンスの身体から黒い影が立ち上る。
「なっ、大丈夫なのか?」
「主よ、私の復活はまだ完全ではないようです、どこかで受肉するまで日が出ていないタイミングのみ、お仕えすることになりそう…」
そこまで言ってラルガンスは消える。
「死んだわけではなさそうだな…」
ガイルが確認してくる。
「ああ、確かに闇の魔力を感じる…ラルガンスはここにいるんだ」
「…また会えるわよね」
アイリスがしんみりと呟く。
「ああ、会えるさ、きっと」
突然現れ、突然消えたラルガンス。
「へっ、しかし、ここまでラルガンスがいることに誰も気づかないとはな、専門職がいないとはいえ、これは今後注意する必要があるな」
そうだな、と言いかけて俺は考え込む。
「いや、一人気付いていた…」
「えっ!」
「だ、誰?」
ミコトとアイリスが声をあげる。
そう俺は思い出した。
…ジーナの店を出る時だ。
ジーナが言った「あなた、ツいてるわね」。
あれはラルガンスのことだったんだ。
それから俺たちはいったん王都へ帰還することにした。
あんなにしんみりした別れをしたはずのラルガンスは夜のたびに復活した。
おかげで俺たちは夜の見張りをラルガンスに任せることで、ゆっくりと休むことができたのだった。




