0043話 風狼戦-戦闘開始
「明日には巣に着く、いよいよ君たちの出番だ」
アスカの案内で風狼の巣に向かったが、広い平原の端にあるらしく既に丸二日が経っていた。
「遠いんだね~」
ミコトが疲れた声を出す。
「そうだな、思ったり遠いな」
俺も同調する。
「ははっ、そうだな、ムデノ平原はとても広大なんだ、私もまだ調査できていないところも多いしな」
「でも、もうすぐだね」
「へっ、明日には戦闘だろう、腕が鳴るぜ」
ガイルは武器の手入れに余念がない。
「それにしても君たち、ドラゴニュートにウェアタイガーらしいけど、見た目は完全にヒューマンと変わらないな」
「ええ、俺たちもヒューマンと思い込んでましたら」
「…まぁ、種族がなんであれ、生まれていつかは死ぬことには変わりない」
「そうですね」
アスカなりの励ましだろうか。
素直に受け取っておく。
「さぁ、明日が本番だからね、もう休もう」
アスカの声掛けをきっかけに俺たちはそれぞれ床についた。
このキャンプはすべてアスカが普段使っているキャンプ用品らしい。
食料と水の調達を条件にアスカのテストにお邪魔させてもらっている。
生物学者として平原に泊まることも多いらしく、このテントには魔法で結界が張られているらしく、夜も安心して眠れた。
「ねぇ、リュウ」
「どうした?」
横で寝ころんだアイリスは、じっと俺の顔を見ている。
「…どうしたんだ?」
「ううん、なんでもない、オヤスミなさい、リュウ」
「ああ、オヤスミ」
翌朝、俺たちは風狼の巣の付近で身を潜めていた。
「…この先は風狼の縄張りになっているから、気を付けるんだ」
「風狼は素早いし、牙や爪の攻撃も強力だ、体当たりもしてくる、魔獣のウルフとは比べもんにならない、気をつけろ」
「ガイルは闘ったことあるの?」
アイリスが疑問をぶつける。
「ああ、まだ駆け出しのころに商人護衛のクエストをしたときに一度だけな」
「へー、あたしも初耳だな」
どうやらミコトも聞いたことのない話らしい。
「ああ、自慢できる話でもないしな」
「ということは?」
「へっ、手も足もでなかった…俺はパーティの足を引っ張ってただけだった」
俺たちは言葉が出ない。
オーガは生まれついての戦闘種族。
若いころとはいえ、並の冒険者よりも強かったとしてもおかしくはない。
「まぁ、今回も全力でやるさ…」
「君たち、そこまでだ」
アスカの声が聞こえる。
「来るぞ!」
ガイルが叫ぶ。
魔獣【風狼】
「行くぜっ!、最初から全力だ!」
ガイルが先頭の風狼に突っ込んでいく。
「補助魔法:魔法障壁-物理≪フィジカルバリア≫」
ミコトの魔法がガイルを強化する。
「オーガ流剣術奥義:両刃」
交差したガイルの大剣が風狼の首を捉える。
「やった!…あっ」
ミコトが一瞬歓声を上げたが、すぐに驚愕の表情に変わる。
「くっ!」
ガイルの攻撃は風狼が大剣を噛んで受け止めていた。
「ガイル!」
俺が追撃を行うが、風狼がさっと後ろに飛び退き、距離を取る。
「こりゃ、思ったより苦労しそうだな…」
俺たちの前には5体の風狼が戦闘態勢を取っていた。




