0004話 襲撃
いつも通りの修練を行うために集まった俺たち3人の前にソイツは現れた。
大気の震えを感じるほどの圧倒的な威圧感を放っていた。
「久しいな」
「よくここが分かりましたね」
「分かっていたさ、ただ見ないフリをしていただけだ」
「やはりそうでしたか」
俺とアイリスは、ソイツと老師の会話に入っていけないでいた。
それどころかソイツから少しも目が離せない。
圧倒的な威圧感にのまれ、一瞬でも目を離すことに恐怖すら感じていた。
「リュウ、アイリス」
声が出ずに頷きで返す。
「お前たちにも紹介しておこう、こちらはベルゼバブ様、魔王だ」
魔王という言葉を聞いて、一筋の汗が落ちる。
「ま、魔王!」
俺が何とか出した言葉に老師が答えてくれる。
「そう、魔王だ、そして」
老師が魔王ベルゼバブに向かって拳を繰り出す。
「私のかつての上司にあたる方だ」
老師の言葉に驚きを隠せない。だがそれよりも驚いたのは魔王ベルゼバブが老師の剛拳をわずか指一本で難なく受け止めていることだった。
「久しぶりに会った上司に向かって随分なご挨拶だな」
「ここに来た理由が想像できますからな」
言いつつ老師は上段蹴りを繰り出す。
俺たちの目には見えないスピードで繰り出された蹴りだった。しかしその蹴りもベルゼバブは簡単に躱してみせた。
「拳も蹴りも以前より強力になっている、修練は怠らなかったようだな」
「無論です、ですがやはりあなたには到底敵わないようですが!」
その後も間髪入れず繰り出される老師の攻撃だったが、魔王に少しのダメージも与えることはできなかった。
「もうよいであろう、人間の真似事などやめて我のもとに戻ってこい」
「それはできない相談ですな、すでに私には守るべき大事なものがある、いまさらあなたの元には戻れません」
「そうか、ならばその大事なものを壊してみるか」
言うが早いか、気が付いた時には既にベルゼバブがアイリスの眼前に移動していた。
そしてアイリスに向かって手を翳した。
「まずは一つ目」
「お止めください、ベルゼバブ様!」
老師の声が響く中、ベルゼバブが放った炎は一瞬で周辺を焼き尽くした。
そして俺は、炎に包まれて倒れるアイリスを見た。