0032話 ガイルとミコトの話し
ハンフリーは記憶を辿るようにして話しだした。
「オレは定期的に手紙の老師の依頼を受けていた」
俺は声を出さずに頷く。
「依頼はいつも同じ内容だった、占い師ジーナの元に手紙を届け、帰りに荷物を受け取り届ける、という簡単な内容だ」
ハンフリーはチラッと俺を見る。
「今回も老師の依頼でダールベン村に?」
「いや、今回は違う、今回は依頼ではなく個人的な用事でこの村に来ているだけだ」
「そうなのか…」
「ああ、ただ、この村に来たのは無駄足ではない」
「というと?」
「オレもジーナの元に向かうときはいつもこの村を通っていた、ジーナはこの先の王都にいる」
「王都に?」
「ああ、王都のウエストタウンで占い屋を開いている…」
「そうか…以外と近くにいたんだな」
あっと声をあげるサイカ。
「思い出しました、占い師ジーナといえば今、王都で一番信頼されている占い師さんですよね」
ミコトも何か思い出したようにしている。
どうやら有名人らしい。
「なるほど、王都か…分かりやすくていいな」
「ああ、占い屋の場所もウエストタウンにいけばすぐに分かるはずだ」
「分かった、助かったよ、ありがとう、ハンフリー、でもよかったのか?」
俺が言いたいことをなんとなく察したのかハンフリーは一回目を閉じてから言った。
「こんなことなんでもない、そもそもオレは死んでいたかもしれないんだ…礼を言うのはこちらの方だ…それに」
ガタッと音を立て、ミコトが話しに割り込んでくる。
「ねぇねぇ、じゃぁ、リュウたちの次の目的地って王都なんだよね?」
「ああ、そうなるな」
俺はグラスを空ける。
よく見るとレムも既にオヤミスモードなのかアイリスの膝の上で横になっている。
レムはエネルギーの節約とかで夜は俺たちと同じように眠るのだ。
「早速、明日にでも王都に向かいたいと思っている、まぁ、アイリスが起きてからになるが」
「そっか、王都か…」
何かを言いたそうなミコト。
そのままチラッとガイルの方を見た。
「あー、リュウよ…俺たちとパーティを組む気はないか?」
「パーティ?」
「そうだ、砦の戦いで分かったが、俺たちは互いの相性もいいし、実力もある」
「なるほど…それは俺も感じていた」
「だよね、だよね!」
ミコトは俺が同じ気持ちだったのが嬉しいのだろう。
「いいと思う、ただ、まずはジーナの元へ行かせてもらう、その後のことはそれからでいいか?」
「モチロンいいよ、ねっ、ガイル!」
「ああ、俺とミコトに異論はない」
「ああ、じゃ、よろしく、アイリスには起きた後に俺から話しておく」
「アイリスに先に聞かなくていいの?」
「あー、大丈夫だ、アイリスもガイルとミコトを気に入っていたし、戦闘のときの息もあっていたからな」
「分かった、んじゃ、よろしくね!」
ガイルも右手を差し出してくる。
「へっ、よろしく」
がっしりと握手をしながら、俺をふと思いついた疑問を口にする。
「でもなんで急にパーティの話しを?、俺たちはまだ冒険者登録もしていない駆け出しにもなってないのに」
「あー、それは俺とミコトがお前たちを気に入ったからだ」
分かりやすい理由だ。だが本心なのだろう。
それにその理由なら、俺も同じ気持ちだ。
そしてミコトとも握手を交わす。
その時、別も疑問が浮かんでくる。
「そういやハンフリーはなんでダールベン村に?」
俺たちのパーティ誕生を見ていたハンフリーは不意に声かけられて驚いているようだ。
「いや…オレは…」
そういえばさっき何か言いかけてたはずだ。
ジーナに関することかも知れない。
「さっきに何か言いかけてなかったか?」
「ああ…村長にも聞いて欲しいんだが、オレは冒険者を引退しようと思っている」
「えっ?」
一際大きい声を出したのはミコトだった。
「冒険者やめちゃうんだ」
「なんでまた?お前は十分に強かったぞ」
続けてガイル。
実際にハンフリーと戦った感想だが、きっと事実だろう。
「オレは…世話になったこの村の守護者を引き受けようと思っている」
「ハンフリー君…ついに引き受けてくれるのかね」
村長が声を漏らす。
「はい、よくよく考えましたが砦に行って操られるなど冒険者失格です、潮時だったんでしょう」
「そうか、いや、我々ダールベン村の者からしたら、こんなに嬉しいことはないよ」
「守護者って?」
疑問を口にしたのはミコトだ。
「騎士団なんかがいない村や町なんかを守るために永住している戦士ってとこだな、なり手の多くが元騎士や元冒険者のようだな」
答えるのはガイルだ。
こうしてダールベン村での宴が終わる。
ジーナは王都のウエストタウンにいること。
ガイル、ミコトとパーティを組むことになったこと。
ハンフリーは冒険者を引退してダールベン村に守護者として永住することになったこと。
これらを翌朝目を覚ましたアイリスに伝えようとしたが、二日酔いによる頭痛でそれどころではなかった。




