0031話 ハンフリーの話し
「ハンフリーさんを助けてくれてありがとうございました!」
俺がラルガンスを倒した後、ガイルによると戦っていた男は動きを止め、意識を失ったらしい。
それにミコトが対峙していた2階広間にいたスケルトンも動きを止め、崩れ落ちいていた。
やはり全てはラルガンスの魔力が元になっていたようだ。
あの後、暫くして意識を取り戻した男は自分がハンフリーだと名乗った。
一人で砦の様子を調べていたところ、ラルガンスと対峙し、敗れて意識を乗っ取られたとのことだった。
面目ない、と頭を下げるハンフリー。
ともかく、俺たちはダールベン村に帰還したのだった。
サイカに報告し、いまは村長の家でささやかな宴が開かれていた。
「ハンフリーさん、無事でよかったです」
サイカは本当にハンフリーを心配していたようだ。
「いや、あれはオレが勝手に行ったことだ」
砦のことが気になるとサイカが漏らした言葉を聞き留めたハンフリーが自分から砦の調査に乗り出したらしい。
この村はよく利用していたようで、ハンフリーなりに思い入れがあったことも理由のうちだろう。
「君たちには本当に助けられた、死んではいなかったとはいえ、操られたままいつかは本当にアンデットになっていただろう」
「砦にいたアンデットは皆そうなのかな?」
アイリスが疑問を口にする。
「んー、どうだろ、確かに魂石が取れたアンデットも多かったけど、生きたまま操ってって言うほど簡単な話しじゃないと思うよ」
「そうだよね…」
確かにミコトの言う通りだ。
生きたまま操ってアンデット化を待つなんて時間のかかる方法を取らずとも良い方法がある。
そう、対象を先に殺してしまえばいいのだ。
そうするとハンフリーを生きたまま操っていたのには何か理由がある?
「…考えても分からないか…」
「ねぇ、リュウ…」
「どうした?、アイリス」
なんだか言いにくそうにしている、アイリスらしくない。
「あ、あのね…砦で地下に落ちちゃった後、助けてくれてじゃない…」
「ああ、レムの魔法のおかげで間に合ったよ」
「う、うん…それでね…」
やはり言いにくそうにしている。
「その…ありがとう…カ、カッコよかったぞ」
顔を真っ赤にしてアイリスは言った。
「あ、ああ」
俺も耳が熱くなるのを感じていた。
アイリスは目の前においてあったグラスを一気に空ける。
「んっ?、アイリス…それって?」
アイリスが持っているのは最初の乾杯の時に置かれていたエールの入ったグラスだった。
それを一気にあけたアイリスは…
「ふにゃぁぁ…」
疲れた身体に一気に酒が回ったのだろう。
俺にも垂れかかるようにして寝息を立て始めたのだった。
「アイリス…」
本当に無事でよかった。俺はアイリスの髪を撫でる。
「見せつけてくれるじゃん」
「ああ、ミコトか…そうだ、あの時は止めてくれて助かったよ、ありがとうな」
「いいよ…ホント、アイリスのことになると冷静さを失うんだね」
「反省している」
「まぁ、いいんじゃない…そのイキオイのおかげでこうしてミンナ無事だったんだし」
「結果論だな」
一際大きいグラスを持ったガイルだ。
「今回はうまくいったが、次もそうなるとは限らねぇ」
「えー、なんでそういうコト言うのさ」
「事実だ」
「ガイルの言う通りだな、今回は行動したことがうまくいったが次もそうなるとは限らない」
「エー、リュウまで」
「だけど…」
俺は再びアイリスの髪を撫でながら言う。
「次もし同じことがあったら同じように突っ込むんだろうな…」
「へっ」
「ふふっ」
「「アハハハハハッ!!」」
同時に笑い出すガイルとミコト。
「なんだよ」
俺は少しムッとした言葉を返す。
「いや、ワリィ…バカにしたわけじゃないんだ」
「そうそう、ゴメンゴメン」
ミコトは涙を拭きながら言う。
「へっ、俺はお前を気に入ったぜ、リュウ」
「あたしもだよ」
「それはどうもありがとよ」
「まぁまぁ、機嫌直してよ」
ミコトがエールを注いでくれる。
「リュウとアイリスの旅の目的はなんだ?」
「それは…まぁ、あんたらならいいか、俺たちは占い師ジーナを探している」
「占い師ジーナ?」
「ああ…俺たちを育ててくれた人と手紙のやり取りをしていた人で事情があってその人に会わないといけないんだ」
「そうか…」
「だけど、俺たちはジーナの居場所を知らなくて、いろいろあってハンフリーが事情を知ってるってことでハンフリーを追って、この村まで来たんだ」
と、ここまで話してようやく周囲の雰囲気に気付く。
村長やサイカ、ハンフリーもこちらの話しを聞いていた。
「その育ての人というのは手紙の老師のことか?」
ハンフリーだ。
「そうだ、その手紙と引き換えにもらって来てくれていた薬が必要なんだ」
「そういう事情だったんですね」
サイカはウンウンと頷いている。
「それなのに砦の調査なんてお願いしてごめんなさい」
「いや、それは大丈夫、そんなに緊急性があるわけでもないし」
ハンフリーは何かを考えている様子だ。グイッとグラスを空けると意を決した表情で俺を見た。
「手紙の老師の依頼でジーナの所に行っていたのは確かにオレだ」
ハンフリーの雰囲気からバルガスの話しを思い出す。
「あー、まぁ、冒険者としては詳しいことは言えないだろ、なんとなく次の目的地のヒントくらい燃えると助かるんだけどな」
「いや…オレは君たちに救われた身だ…何かお礼もしたい…オレが知っていることは全て話そう」




