0003話 修練、いつもの通りの日常
「それっ!」
アイリスの勇ましい声が響く。
一突き目と二突き目はなんとか刀で払ったものの、三突き目は間に合わなかった。
練習用の仮剣の切っ先が俺の胸を突く。
「くっ!」
「それまでっ!」
老師の声で今回の模擬戦は終了となる。
「勝者アイリス!」
「ふふっ、わたしの勝ちね」
「くそっ」
自慢気なアイリス。
左手を腰にあて、剣を右下に流した得意のポーズでご満悦の様子だ。
「調子に乗るなアイリス、全戦では3勝6敗で負け越しておる」
「ちぇー」
アイリスは、ぷくぅと頬を膨らませる。
「ははっ、最後は負けちゃったがトータルでは俺の勝ちってことで」
「はいはい、分かりました。夕食後の片づけは私がやるわ」
「よろしく!、俺はその間に溜まっている魔導書を読むよ」
「次は負けないんだから!」
こうして今日の厳しい修練が終わる。
座学、格闘技、剣技に最後は模擬戦。
模擬戦の結果で、夕食後の片づけをどちらがするか決めることにしたが今回は見事、その賭けに勝った。
こうして俺は空いた時間に読み進められていなかった魔導書を読み込んだ。
アイリスはレイピアを主武器として使い、突きのスピードで勝負するタイプ、体術はあまり得意ではなく、風魔法を得意にしている魔法剣士だ。
俺は刀を主武器として使い、技の切れで勝負するタイプ、無刀での戦いも得意で、魔法は攻撃魔法を得意にしている。万能型の戦士といった感じだ。
俺とアイリスと老師。
3人の生活は、老師が俺たちを拾ってからすでに15年も続いていた。
そして、それはこれからも続くと思っていた。
そう、その運命の朝を迎えるまでは。