0026話 砦内部の戦い その1
「やるじゃねーか」
ガイルが声をかけてくる。
「そっちもな」
俺は答える。
「あー、アンデットって素材が殆どとれないんだよね」
ミコトの嘆きが聞こえる。
補助士として、倒した相手から素材の収集を行っていたらしい。
「アンデットからも素材が取れるの?」
素朴な疑問を発するアイリス。
「取れることは取れるよ、でもゾンビはほとんど素材ないし、スケルトンもね、たまに綺麗な骨が取れるくらい」
「そうなんだ」
「まぁ、今回のアンデットからは魂石が取れたからマシだけどね」
「…魂石、か」
意味深につぶやくガイル。
「どうした?」
「俺たちは冒険者としてアンデットと戦ったこともあるが、魂石が取れるアンデットなんて殆どいないはずだ」
「魂石が取れない?」
「ああ、アンデットのもとは死んだ生物のはずだ、魂なんかもほとんど拡散して欠片くらいしか残らねぇ」
「ああ、その欠片がアンデットの本能として生物を襲う、という話しだな」
「詳しいな、だから魂の結晶とも呼ばれる魂石が取れることは殆どない」
「ということは…?」
「ああ、ここのアンデットは死んだ生物が元になってないのかもな」
「…なるほど、とにかく油断はしないようにしよう」
「ああ、そろそろ中に進むぞ」
ガイルの呼びかけにミコトとアイリスも続く。
「そうだ、レム」
俺はフヨフヨと浮いているレムに声をかける。
「イカガシマシタカ、リュウサマ」
「レムに頼みがあるんだ…」
俺は小声でレムに話をする。
「ショウチシマシタ、リュウサマ」
「頼んだぞ」
ガイルは砦正面の扉を打ち破り、中に入っていく。
ミコトとアイリス、俺にレムもそれに続く。
途中、数体のスケルトンが襲ってくるが、ガイルが大剣をで打ち払っていく。
砦はそれほど複雑な作りをしていない。
扉から入った廊下を進むと、少し広い広間にでる。
その先にある階段を上がると2階で、そこにも同じく広間があるはずだ。
これはサイカから預けらた砦の見取り図から分かった情報だ。
まずは1階の広間にたどり着いた俺たち。
日が差さず、一段と暗くなった箇所に佇む黒い影。
「なんかいるぞ!」
ガイルの声が響く。
少し目の慣れた俺たちの前に姿を現したのは右手に剣を持った【堕天使】だった。
「天使、いや堕天使か!」
言いながらガイルが堕天使の初撃を大剣で受け止める。
狭い場所だが、背中の羽で器用に飛び回る堕天使は、次にアイリスに狙いを定める。
「風属性魔法:風斬≪ウインドカッター≫」
待ち構えていたアイリスが得意の風魔法を放つが、堕天使はするりと躱す。
「えっ!」
予想外の躱され方をしたアイリスに堕天使の剣が迫る。
「補助魔法:魔法障壁-物理≪フィジカルバリア≫」
ミコトの補助魔法がアイリスを包む。
ガキンという音が響くがアイリスは無傷のようだ。
「あ、ありがと!、ミコトちゃん」
「ミコトでいいよ」
言いながら短刀で追撃するミコト。
しかし、その攻撃は堕天使に躱されてしまった。
「くそっ、素早くて攻撃が当たらねぇ!」
ガイルも大剣を振るうが堕天使を捉えられないでいた。
堕天使はアイリスやミコトよりも早い。
二人は俺たち4人の中では速さに自信がある二人だ。
だが、その二人の攻撃でも堕天使の動きを捉えられていない。
無理な攻撃は体力を消耗するだけだろう。
「…みんな下がっていてくれ…」
俺は刀を鞘にしまったまま、皆に声をかける。
「どうしたの?、リュウ」
「俺に考えがある…」
堕天使はその素早い動きで皆を翻弄している。
そう。
追うからダメなのだ。
俺は一歩前に出る。
堕天使は無防備な俺を標的に決めたのか、その圧倒的な素早さで襲い掛かってくる。
俺は意識を集中させる。
堕天使の剣が俺の首を撥ねようと迫る。
そして…
吹き飛んだのは堕天使の首だった。
間合いに入った瞬間に、居合斬りで堕天使の首を撥ねたのだった。
「やったぁ!」
アイリスが駆け寄ってくる。
「やるじゃねーか、向こうが寄ってくるのを待ってたってわけか」
ミコトはすでに素材狩りに夢中になっている。
「ああ、自分より素早い敵は後を追うんじゃなくて近づかせるってのが老師の教えだったからな」
アイリスはそんな話もありましたね、という顔をしているが、それには触れないでおく。
「そうか…ともかくこれで上に進めるな」
ガイルが油断がおきないように緊張感を取り戻すための発言をする。
「うへへ、見てよ、みんな!、堕天使の羽に輪っか…どっちもレアアイテムだよ!」
ミコトのホクホク顔がその緊張感を台無しにしたのだった。
〇魂石
魂が石化したものと言われている。
討伐された魔獣や魔人から採取され、
魔法の触媒や武器の素材、単純なエネルギー源としてなど
用途は様々で、高値で取引されることが多い。
冒険者の金策の一つでもある。




