0022話 エルフの集落
エルフの男性は黙ったまま立っている。
「助かった、ありがとう。そちらは?」
俺は取りあえず礼をし、声をかけてみる。
「…我々はこの森にすむエルフだ、君たちの戦闘音を聞いてやってきた」
「そうか、森を荒らすつもりはなかったんだが、結果的にはウルフたちの死骸が大量にでてしまった、すまない」
「いや…状況をみれば大体の事情は分かる…それに」
エルフは周りを見渡しながら言った。
「あの商人は我々の集落に来る予定だった…こっちとしても君たちに助けられた」
森が荒れる結果になったことは怒っていない様子だ。
「それならよかった…」
「ああ、そうだ、私は集落の代表をしているエジルだ」
「俺はリュウ、こっちはアイリス、この浮いているのはレム、俺たちはダールベン村に向かう途中だ」
「ふむ、先を急がれているのかもしれないが、アイリス殿は怪我をされているようだ、我々の集落で手当てをされてはどうか?」
俺はアイリスの怪我を見る。
ウルフの爪にやられたであろう、ざっくりと切り傷が入っている。
「お言葉に甘えてそうさせてもらうよ」
「ふむ、では案内しよう、エリン!」
呼ばれたエルフの女性が傍にやってくる。
「こちらの皆様を集落へ案内してくれ、あと倒れている商人たちの様子は?」
「商人たちは問題ありません、皆意識を取り戻しています」
「よかった」
アイリスが声を漏らす。
自分たちの行動が無駄ではなかったことに安堵しているようだ。
「ああ、次はアイリスの怪我を直さないとな」
「では、こちらへ、ご案内します」
俺はアイリスを抱えたまま、エリンに続いて森の奥へ向かう。
レムもフヨフヨと浮いたままついてくる。
集落でエルフの治療薬を提供してもらい、アイリスの怪我の治療をしてもらった。
今日はエジルの家で食事と宿を提供してもらえることになった。
「ダールベン村に向かわれるとのことだったが、特に何もない村だが何か用事でも?」
エジルは単純にあの村に何の用事があるのか興味があるといった様子だった。
「村に用事というよりは人探しだな、探している人がダールベン村に向かったという情報があったのでそこに行こうとしている感じだな」
「そうか…」
エジルは、それは誰だまでは踏み込んでは来なかった。
「ウルフの被害は大きくなっているのか?」
今度は俺から質問した。
「そうだな…このところ数が多くなってはいる…森の瘴気が濃くなっている様子もあり、我々としても警戒をしていたところだ」
「そういえば商人の皆さんはどうなったの?」
アイリスも続けて質問をした。
「ふむ…彼らも治療を終えて大体の事情を理解した様子だ、君たちにお礼をしたいそうなので、明日にでも顔を見せてやってくれ」
お礼など別に不要だが、顔を見せないと彼らの気持ちも収まらないだろう。
「分かった」
「我々も彼らに護衛をと考えていたのだが、不要だと言われていてね」
「あの数は異常だった…俺たちもエジルたちに助けてもらわなければ危なかった」
「それについてはお互い様だな、君たちが足止めとある程度数を減らしてくれたおかげでほぼ倒すことができたのだから」
何か異変が起きていることは間違いなさそうだった。
瘴気の濃度が上がり、それが魔獣の大量発生につながっている。
なぜ瘴気の濃度が上がっているのか、については瘴気自体に謎が多いので誰にも分っていない。
ともかく今後も魔獣には警戒が必要だろう。
「さて、そろそろお開きにするか、君たちもゆっくり休むといい」
「ああ、助かるよ、エジル」
「ありがとうございます」
俺とアイリスは揃ってエジルにお礼を述べると、その晩はゆっくりと休んだ。
翌日、ジェームスと名乗った商人とその家族と少し話しをして、俺たちは再びダールベン村に向かって歩き出した。




