0014話 取り立て屋
夜中に怒号が響き渡る。
「うー、うるさいなぁ、なに?」
「玄関の方からだな、クレハが誰かとしゃっべてるのかな」
「もー、何時よ、いま」
アイリスが寝ぼけ眼で時計を見ようとしたその時にクレハの悲鳴が響く。
「えっ!」
「行くぞ、アイリス!」
俺はベッドの傍らに置いていた刀を取ると、玄関へ急いだ。
玄関には明らかにガラの悪そうな二人組の男がいた。
片方がモヒカン、もう片方がスキンヘッド。手には剣を持っている。
こいつらがグリンが俺たちと間違えていた二人組だろう。
「おっ、なんだ?誰だお前は?」
モヒカンが声をかけてくる。
「クレハの新しい男か~?」
続けてスキンヘッド、威圧的な態度だ。
「クレハ、何があった?」
「あっ、主人の借金の取り立てに来られたのですがいま持ち合わせがなくて…」
「そうだぜ、俺たちは貸した金を返してもらいにきただけだぜ」
ふと思いつた疑問を口にする。
「こんな時間にか?」
「あー、何時でもいいだろうが!」
「てめぇには関係ないだろうが!」
二人で騒ぐので喧しい。
アイリスも来ているが、今は玄関横の廊下で待機している。
相手が相手だけに懸命な判断だった。
「はー、こんな夜中に突然来て金があるわけないだろ」
「うるせぇ!」
「金さえ返せばいいんだよ!」
「あっ、あの、いますぐは、もう少し、もう少しだけ待っていただけませんか?」
クレハが懸命に頭を下げている。
しかし男たちは聞く耳を持たない。
「だから、金がないならお前が俺たちの店で働けばいいんだよ!」
「そ、それは…」
読めた。
男たちは無理難題を吹っかけて、クレハを自分たちの店で働かせるつもりだ。
つい、男たちも睨んでしまう。
「あー、てめぇ、さっきから生意気なんだよ!」
モヒカンがいきなり斬りつけてくる。
キーンという音が響く。
俺はとっさに刀を抜き、モヒカンの剣を押し返していた。
「くそっ!、なんだてめぇは!」
スキンヘッドが大振りで剣を振り下ろしてくる。
俺はそのガラ空きの腹めがけて蹴りを入れる。
衝撃で後ろに吹っ飛んだスキンヘッドはモヒカンとぶつかると二人そろって表に転がりだした。
「大したことないな」
「なめるなぁ!」
「喰らえ!」
二人同時の攻撃だが、動きは大きく緩慢だ。
簡単に二人の剣を弾く。
「く、くそっ!」
「ダメだ、俺たちじゃどうしようもねぇ、今日は退くぞ!」
「「覚えてやがれ!」」
おなじみのセリフを吐き捨てて二人組はクレハの家から去っていった。
「余計なことしちゃったかな?」
クレハの方を向きながら言った。
「いえ、ありがとうございます。あのまま連れていかれていたら、もう子供たちに会えなかったかもしれませんし…」
奥から出てきたアイリスが、そっとクレハの肩に手をのせる。
アイリスは二人組以外の者がいた倍に備えて控えていた。
このあたりは目の前の敵だけを見るなという老師の教えが効いている。
「ともかく今日はもう遅いしやすみましょう」
クレハのその言葉で俺たちはベッドに戻ると、朝まで眠ったのだった。




