0013話 宿
「何って、ねぇ…リュウ」
子供たちを庇うように立つ女性に困惑の表情を浮かべるアイリス。
「えーと、なにか誤解があるようですけど、私たちはむしろ被害者というか…」
「えっ!、まさかその泥だらけの髪は、うちの子たちが…」
「ははっ…、ま、まぁ、そうですねぇ」
「母ちゃん!、この人たちには何もされてない、というか俺が間違って泥団子をぶつけたんだ」
男の子が説明してくれたおかげで母親の誤解は解けたようだった。
「私ったらなんて失礼なことを!、申し訳ありませんっ!」
「いえいえ、まぁ、分かっていただければいいんですけど」
アイリスは母親の勢いに押され気味だ。
「あー、じゃぁ、まぁ、誤解も解けたことだし、そろそろ行こうか、アイリス」
「そ、そうね」
「どちらかに行かれるところだったんですね、本当にうちの子たちが申し訳ありません」
再び申し訳なさそうに頭を上げる母親。
「いえ、ギルドに向かうだけですし、大丈夫ですよ」
「あら、ギルドは今日はもう閉まっていますわよ」
「えーっ!」
母親が言うには今日はギルドの半日営業日らしく、午前中だけで閉まっているとのこと。
明日になれば通常営業に戻るようだ。
「まいったな、今から小屋まで戻るのは面倒だし、宿でも探そうか、アイリス」
「そうねぇ」
そんな思案をしている俺たちに母親からの提案があった。
「そうだわ、お詫びもかねて今日はうちに泊まっていってください」
「いえ、そんな、悪いですよ」
「髪や服まで汚してしまっていますし、ぜひうちに!」
こうして母親に押し切られ、俺たちは一晩の宿を借りることになった。
母親は名はクレハ。
男の子がグリン、下の姉妹はクリンとクロス。
病に臥せっていという父親には会えなかった。
風呂と食事をいただき、俺たちはベッドで横になるとすぐに眠りに落ちたのだった。




