0128話 イヴの救出へ向かう
門番と思しきゴロツキもその役目を果たすことなく倒れている。
ここまでのゴロツキ同様、斬られたり、魔法で攻撃されているのではなく当身などにより気を失わせているようだ。
広場と同じ光景というわけだ。
「リュウ、これって…」
「…ガイルだな」
俺たちは酒場、そしてバルガスから情報を得て、ここまでたどり着いたがガイル達は冒険者歴も長い。
町の有力者のアジトと聞いて、まず酒場に向かい、そこでゴロツキを叩きのめして情報を得た、という感じだろう。
「中…だよね」
「ああ、どうする、アイリスは戻るか?」
「ううん、一緒に行くよ」
倒れている門番の横を通り、大きな扉をノックする。
しかし返事はない。そして鍵もかかっていなかった。
「開いてるな」
「お、おじゃましますー」
アイリスは俺の背中に手を添えて隠れてるような様子で後ろを付いてくる。
ロビーのような場所にも数人のゴロツキが倒れている。
どうやらガイルは前に立ちはだかった者すべてを倒して進んだようだ。
「ガイル達が進んだ方向は分かるな」
「どういうこと?」
俺はある廊下の方向を指さす。
「あの廊下の方にだけ人が倒れている、だからあっちに進んだんだろう」
「なるほど、そうだね」
俺とアイリスはガイル達の後を追う。
だが、ジルバーノのアジトに潜入している形なのであまり急ぐのは得策ではない。
周囲への警戒は怠らず、慎重に歩みを進める。
途中、人を閉じ込めておけそうな鉄格子がはめられた部屋を見つける。しかし中には誰もいなかった。
「よかった、誰も捕まってはないみたいだね」
アイリスの言葉に俺は無言で頷く。
安心した表情をしているアイリスには言えなかったが、床には何かを引きずったような後があり、最近この部屋が使われた形跡があった。
イヴかも知れないし、先に来ていたガイルやミコトかも知れない。
また、俺たちが全然知らない人かも知れない。
ともかく俺たちは先へ進むことにした。
少し先にある部屋から物音が聞こえてきている。
俺とアイリスは目を合わし、より慎重にその部屋に近づいていく。
部屋に近づくにつれて、その音が剣戟の音であることが分かる。
そして聞き覚えのある声が聞こえてきた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
リュウとアイリスがジルバーノのアジトに到着するよりも前。
ジルバーノの話しを聞いたガイルとミコトはすぐさまスラム街へと来ていた。
アジトの場所は知らないが、目立つところにあるとは考えにくい。
そして他人のことを気にする奴がいないスラムは身を隠すには絶好の場所だ。
冒険者としての勘を頼りにスラム街に来たが、どうやらそれは正解だった。
酒場で情報収集をと考えたガイルだったが、ゴロツキに絡まれたことで結局そいつらからアジトの場所を聞き出すことができた。
アジトに向かう途中に絡んできた連中は全員ブチのめしていた。
「やりすぎだよー、ガイル」
「へっ、最近フラストレーションの溜まる戦いが多かったからな、ちょっとスカッとしたぜ」
リュウをリーダーにしてチーム:龍翔<ドラゴニア>を結成してからガイルは自分を抑えるようにしていた。
リーダーを差し置いて出しゃばらない。またパーティの名に傷がつくような行為は避けていた。
だが、いまはリュウ不在のなかで起きたパーティメンバーの行方を捜しているときだ。
そのため少々、強引な手を使ってでも情報を集める必要があると考えたのだ。
「昨日、侵入者がいたという話しもあったし、それがイヴで間違いないだろ」
「そうだねー」
ともかくイヴの救出が目的なので目立たない方がいいのは分かっているが、広場で絡んだゴロツキが一人逃げていた。
そいつもジルバーノ一家なのだとしたらすでにこちらの動きは知られているだろう。
そう考えたガイルは細かいことは飛ばして強引に正面突破を図ることにしたのだ。
「でも久々に無茶するガイルを見たよ」
「へっ、そうだな」
アジトの入り口には門番を思しき、大柄の男が立っていた。
「てめぇらがジルバーノ様に喧嘩を売っているやつか?」
「へっ、だったらどうするよ」
ガイルのその回答にいら立ったのか門番はそれ以上の会話を選択せず、すぐさま右手の拳を放ってきた。
オーガのガイルを超える体格をしているその門番。その強力な拳の攻撃をガイルは片手で受け止める。
「へっ、いいパンチだ…だがオレに当たるほどじゃねぇ」
お返しとばかりにガイルが放った右ストレートが門番の顎に直撃し、そのまま後ろに倒れる門番。
ズゥンという音を立て埃が舞い上がる。
その音を聞きつけた数人のゴロツキが姿を見せるが、倒れている門番の姿を見て、異常な状況であることを察したのかガイルが足を進めに合わせてジリジリとアジトの中に交代していく。
「へっ、昨日の侵入者ってやつに会いに来た、どこにいる?」




