0127話 アジトの場所
「ひどい有様だな、これは」
酒場のウエスタン扉を開けて入ったでて言葉がこれだった。
複数のテーブルが倒れ、椅子も散乱している。
酒瓶がそこらじゅうで割れ、酒がいたるところに零れている。
奥のカウンターに建てられている酒瓶も割れ放題だった。
「すまないね…今日は店じまいだよ」
「ああ、客じゃないんだ…ちょっと聞きたいことがあって」
「なんだい…今朝のオーガと言い、客じゃないやつが多いね」
「オーガ?」
「ああ、豹人と一緒に来て、ジルバーノさんのアジトを教えろ、とこうだ」
「そうか、で教えたのか?」
「ああ?、そんなことすれば俺たちがジルバーノさんに殺されちまう、言えるわけねぇって相手にしなかったよ」
「ねぇ、リュウ、なんか嫌な予感がするんだけど」
「言うな、アイリス」
酒場のマスターは小さいため息を一つ吐いて続けた。
「…そしたらその様子を見ていた客のゴロツキどもが、そのオーガに喧嘩を吹っかけて、結果双方大暴れ…今に至るってことだ」
情報をもらえなかったガイルが暴れたわけじゃないようだ。
その点だけは安心したが、結局店で暴れたことには違いない。
「で、あんたの用事ってのはなんだ?」
「いや、もうそれは片付いたからいいんだ…それより、この店で暴れてた連中はどこに行ったんだ?」
「店をなんとか追い出してからは知らねぇ…だがスラムの真ん中にある広場だと思うぜ」
「そうか、ありがとう、大変なときに邪魔した」
「ありがとうございます」
マスター軽く片手をあげるとそのまま黙々と片づけを再開した。
ガイルを見つけたら手伝いに来させます、と俺は心で誓った。
俺とアイリスは続いてスラムの広場に移動した。
そこには数人のゴロツキが、ボコボコにやられた様子で倒れていた。
剣を振るった様子はない。
素手での喧嘩で全員を打ちのめしたんだろう。
「これ、ガイルさんだよね」
「だろうな…ガイルの姿はないな」
「ミコトもいないね」
倒れているゴロツキからジルバーノのアジトを聞き出し、そこに向かったと考えることもできる。
そんなことを考えていた俺に懐かしい男が声をかけてきた。
「よぉ、リュウじゃねぇか」
先輩冒険者であるバルガスだ。
「「バルガス!」」
「王都の用事は済んだのか?」
バルガスには腕試しの後、老師の依頼とそれを受けたハンフリーの情報をもらった。
その後、いろいろあってまたルイムの町に戻ってきているが、バルガスから得た情報は有益なものだった。
「なんでここに?」
「なんでってクエストだよ、どっかの大バカがスラムで暴れてるから止めに来てくれってことクエストが入ったので来たってわけだ…が…」
バルガスは倒れている男たちを見る。
「もう終わってるみたいだな」
俺とアイリスは自分たちがここに来た時には、既にこの状態だったと説明しておく。
「そこに倒れているのはジルバーノの部下たちだ、これをやったやつはこれでジルバーノ一家との対立は避けられねぇ」
やれやれといった様子のバルガス。
「バルガスはジルバーノのアジトを知っているのか?」
「…ああ、まぁ、ここいらじゃ有名なんで死んでしまってるやつ除き、スラムの住民は全員知っているだろうぜ」
「アジトはどこなんだ?」
「聞いてどうするつもりだ?」
俺はニヤリと笑いながらバルガスを見る。
「聞かない方が身のためだ」
「へっ、そうかい…冒険者からの情報は高くつくが…お前には前にも負けてるんでね、さっさと話しちまうよ」
こうしてバルガスからアジトの情報を得た俺とアイリスは早速そこへ向かった。
アジトに近づくにつれ、ゴロツキと思しき連中が増えてくるが、皆一様に倒れている。
そして、アジトの入り口までたどり着いたのだった。




