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龍翔記  作者: GIN
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0122話 竜の因子

「こいつはすごい、思っていた以上だねぇ」


理由は分からないのだろうが、俺の様子が変わったこと、それによって瀕死だったアイリスとミコトが復活したこと。


そして、ガイルがグレーターデーモンを倒したことは理解したようだ。


しかし「思っていた以上」ということは何らかの情報を得ていると考えて間違いない。


ベルはまだ余裕の態度を崩していない。


それもそのはずで、ガイルはグレーターデーモンを倒したものの、片膝をついた状態から立ち上がれないでいた


アイリスとミコトも最悪の状況を抜けだしたとはいえ、立ち上がることはできない状態。


すなわち、チーム:龍翔<ドラゴニア>で戦えるのは俺だけだ。


「どれ、これはどうだい!」


ベルは左手を突き出し、掌に魔力を集中させる。


それは俺の魔法よりはるかに強い火球≪ファイアボール≫の上位魔法のようだ。


「どうする、避けないと焼け死ぬが、避ければ後ろの二人が黒焦げだよ」


「…」


俺が何も答えないことにいら立った様子のベル。


「ふん、喰らいな!」


ベルはその大火球を左人差し指のところで、くるくると回転させると、その指先をこちらに向けて弾くような動作をする。


「火属性魔法:大火球≪メガファイアボール≫」


直径数メートルはあろうかという大きな火球が俺に向かって飛んでくる。


だが俺はこの火球を避ける気はなかった。


避けることができない。避けるとアイリスとミコトに当たってしまう。


それに俺にはまだあの力がある。


俺は大火球が飛んでくるまでの刹那の時間、自分の内なる存在への問いかけに集中する。


答えろ…龍の因子


答えろ…『炎龍』



《応》



龍闘気の力が強まったことを感じる。


それと同時に『炎龍』のオーラが俺の全身を包んでいく。


俺はその『炎龍』のオーラが全身を覆うと同時に、刀に向かって流し込むイメージをする。


膨大な力。


思い通りに動かないその力。反抗の力。


だが、俺は意志の力で、その反抗の力を抑えこむ。



《我の力を制御しようとしておるのか》



当然だ。


前のように俺の知らないところで勝手に戦われては困る。


仲間がピンチの状態で、制御できない力など必要ない。


いまここで俺がこの力を制御できないのであれば大切な人、大切な仲間が傷つけられる。



《…!、想像以上の意志の力よ》



反抗していた力が弱くなり、『炎龍』のオーラが刀に流れ込んでいく。


それを感じた瞬間に、ベルの大火球が目の前に迫っていることに気付く。


「逃げないで壁になることを選択したかっ!」


ベルの声が聞こえる。


だが。


「外れだ!」


俺が刀を横薙ぎに一閃すると、ベルの大火球が上下真っ二つに斬れる。


そのまま上段から刀を振り下ろすと、大火球は更に上下二つに割れ、霧散して消える。


「なっ!」


ベルが驚愕の顔を見せる。


「あの魔法を斬った…?、そんなバカなっ!」


言いながらベルは再び魔法陣を描く。


「もう一回だよ、出てきな、悪魔ども!」


ベルの呼びかけに応じて現れる悪魔。


今度は上位悪魔<グレーターデーモン>のみが3体も召喚されていた。


「ふん、ここは退かせてもらうよ、お前ら時間を稼ぎな」


俺の様子が変わったこと、魔法が斬ったことで自分の不利を悟ったのか、それとも満足したのか分からないが、召喚した悪魔に戦わせている間にベルは逃げるつもりのようだ。


だが、そうはいかない。


ベルには老師の遺体のことを聞く必要がある。


「なるべく距離を取って戦ってなるべく時間を稼ぐんだよ」


ベルがグレーターデーモンに命令を出したその時。


すでに3体のグレーターデーモンは黒い霧となって霧散していた。


「まだ帰すわけにはいかないんでね」


俺は刀をベルに向ける。


「まさか、グレーターデーモンをあっという間に…しかも3体だよ」


そう言いながら、ベルは慎重に俺の様子を確認しているようだ。


「それは…オーラ…刀に流れ込んでいるのか…」


「老師の遺体はどうした?」


「…ふん、知らないね」


その言葉に俺は再びベルとの距離を一気に詰め斬りかかる。


「なんてスピードだい!」


ベルが剣で受け止めようとするが、その剣の刃は、俺の刀を受け止めた部分からすぱっと二つに斬れる。


「なっ!」


ベルの驚きの声が響くと同時に俺の蹴りがベルを吹っ飛ばす。


刀を鞘に仕舞い、居合の体勢のまま再びベルとの距離を詰める。


ベルとのこれまでの戦いで、多少斬ったところですぐに死ぬような存在でないことが分かっていた。


少し痛めつけた方が老師のことを話すかもしれないと考えた俺は、間違いなく斬るつもりで距離を詰めていた。


「待て待て待て待て待て、待ってくれ!」


そんな俺の耳にそんなベルの声が聞こえ、尻もちをつき両手で俺の突進を制止する姿が目に入った。


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