0121話 龍闘気
再び激しい剣戟を繰り出してくるベル。
先程と同じくなんとか受け流しているが、じわじわとダメージが蓄積されていく。
ただベルの攻撃自体は、剣を振りまわす、単調な動きを繰り返しているだけだ。
そのため受け流すことは難しくないか、攻撃の頻度は多く早い。
反撃はとてもできそうにはなかった。
恐らくベルの攻撃の目的は俺を倒そうというより別にあると思われる。
だが目的は分からない。
ともかくいまは受け止め続けるしかなかった。
「ほらほら、どうした!」
ベルは一気呵成な攻撃を繰り返す。
俺がベルの剣を受け止めたことで、ベルの剣と俺の刀で力比べのような状態になる。
「なかなか本気出さないねぇ」
「くっ!」
受け合った剣を払うように刀を横薙ぎするが、ベルはそれを軽くかわし一旦距離を取る。
「どうやったら本気を…」
ベルは何か考え込むしぐさをする。
俺はその間に周囲の気配を探る。
意識はあくまでベルに集中したままだ。
アイリスたちは全員回避に専念しているようだ。
「本気を出させる方法…ふむ」
ベルは周囲を見回してニヤリと笑う。
「そうか!」
それだけ言うとベルは俺の前の前から消える。
次に気配を感じ取れた時にはベルはアイリスたちの眼前に移動していた。
「アイリス!、ミコト!」
俺の声にようやく目の前のベルの存在に気付く二人。
その時、レッサーデーモンの魔法がベルに直撃する。
自我がないためか召喚したものにまで攻撃を加えているようだ。
「下等悪魔が…邪魔だ」
ベルが怒りの声とともに2体のレッサーデーモンを瞬く間に斬り伏せる。
2体の悪魔は黒い霧となって消えていく。
同時に再びアイリスの眼前に移動するベル。
そしてアイリスが構えるより早く、その身体を斬るベルの剣。
というのを見る。
これで三度目の現象だ。
既に俺は知っている。この現象は防げる。
俺はベルを追うようにアイリスの前に移動する。
そして、ベルの剣がアイリスに当たる前に受け止めた。
「なんだと!」
「仲間に手を出すのは許さない!」
受け止めた剣を押し返しながら俺は刀を横薙ぎに振るう。
手応えはないが、俺の刀はかすかにベルの髪の毛に掠っていた。
「くくく、思った通りだね、お前は仲間を傷つけられると力が増すみたいだね!」
言いながらベルが魔法を放つ。
それは凄まじいスピードで俺の横をすり抜け、アイリスとミコトに直撃する。
「きゃぁっ!」
「わぁっ!」
「アイリス!、ミコト!」
倒れる二人。返事はない。
「レム!」
「ショウチシマシタ!」
レムは俺の言葉に従い、小屋に避難する。
吸収魔法で何とかできるレベルの魔法ではない。そのためレムには避難をしてもらったのだ。
「それ、まだまだ行くよ!」
ベルの魔法が再び襲い来る。
俺は刀でそれを斬り、不埒への再度の攻撃を防ぐ。
「ぐぁぁっ!」
だが、ガイルも狙われていたようだ。
グレーターデーモンとの戦いに集中していたガイルを後方からベルの魔法が襲ったようだ。
がくっと膝をつくガイル。
「ガイル!」
ガイルはなんとか意識を保っているようだが、返事をする元気はないようだ。
グレーターデーモンはベルの攻撃に何かの意思を感じたのか、ガイルへの攻撃をやめていた。
「どうだい、もっと魔法を喰らってみるかい」
ベルが自分の掌の上に大きめの火球を出現させる。
あんなものが直撃すれば3人は無事では済まないはずだ。
俺はふぅぅと呼吸に意識を集中する。
これまでベルから目が離せなかったために試せなかったことだ。
だが、あの魔法が放たれればどの道同じ。
俺はベルから意識を外すことを選択した。
周囲のエーテルが俺の身体に入ってくる。
それはオーラとなって俺を包む。
「違う、これじゃない!」
そう言って俺は再び意識を集中させる。
倒れている仲間を姿を思い浮かべ、それとオーラを重ね合わせるイメージをする。
「これだ!」
俺は自分のオーラをアイリスたちに向かって放つ。
それに包まれたアイリスとミコトは意識を取り戻す。
「あれ?あたしどうして…」
「リュウ…」
二人の言葉に俺は頷いて返す。
ガイルは立ち上がり、再び大剣を構えた。
「へっ、この感じは風狼戦以来だな」
俺たちの状況を黙って見ていたベルがグレーターデーモンに目で合図を出す。
再びガイルに向かって魔法を繰り出すグレーターデーモン。
だが、その魔法は放たれることはなかった。
「オーガ流剣術奥義:双刃!」
ガイルの剣技によって、斬り刻まれ黒い霧になって消えていくグレーターデーモン。
グレーターデーモンが倒されたことに驚きの表情を見せるベル。
俺は刀を構えて再びベルと対峙した。




