0119話 老師の小屋での戦い
「どういうことだ」
俺は女性から目を離さずにアイリスに問う。
「老師の遺体がないの…たしかにここに埋めたはずなのに…」
それは間違いない。
俺たちを庇って死んだ老師を俺とアイリスが弔ったのだ。
「へっ、お前が何か知ってるってことか?」
ガイルも大剣を女性に向けたまま問いかける。
「さてね」
だが女性は臆することもなく飄々とした態度を崩さない。
俺は少し苛立ちながら女性に問う。
「もう一度聞く、お前がやったのか?」
「だったらどうする?」
その回答に俺は居合の体勢のまま女性との距離を一気に詰める。
剣技の間合いまで入った俺は迷いなく刀を抜く。
しかし。
ガキンという鈍い金属音が響き、女性がどこからか取り出した剣によって俺の刀は受け止められる。
「…!」
女性はニヤリと笑う。
「怖いねぇ」
俺は後方に跳び、距離を取ると刀を構える。
ガイルも油断なく大剣を構えている。
俺が動いたことでアイリスもミコトも戦闘態勢を取っていた。
女性は俺たちを見やる。
「お前たちの相手はこいつらだよっ」
そう一言呟くと、左手だけで複雑な魔法陣を描く。
女性は早口で詠唱を終えると魔法陣に手をかざす。
「出てきな、悪魔ども!」
女性の呼びかけに応じて、下位悪魔<レッサーデーモン>が2体、そして上位悪魔<グレーターデーモン>が1体召喚されたのだった。
召喚された上位悪魔<グレーターデーモン>が女性に向かって跪く。
下位悪魔<レッサーデーモン>は召喚者の命令を待たずに早くも暴れだしそうになっていた。
「あんたはあのオーガをやりな、他のはどうせ自我もないし適当に暴れるだろう」
女性の命令に上位悪魔<グレーターデーモン>は頷くとガイルの方を見る。
獲物を捕らえた目をしている。
「ガイル!」
「へっ、任せろ!」
一瞬でガイルの目の前に移動したグレーターデーモンは息をするように魔法を放つ。
無詠唱で放たれるその魔法。
ガイルは大剣を交差させ、盾代わりにしてなんとか直撃を防ぐ。
自我を持たないレッサーデーモンは召喚されると周囲の生物へ無作為に攻撃を開始する習性がある。
攻撃衝動だけが残っているような状態だ。
標的にされたのはアイリスとミコトだった。
「わわっ!」
「きゃぁっ」
レッサーデーモンとはいえ、その魔力量は人間の比ではない。
両手から魔法を連発しながら近づいて、魔力を込めた攻撃を直接叩き込む。
そんな戦い方をするレッサーデーモン。
一瞬で状況が変わる。
「アイリス!、ミコト!」
俺は思わず、アイリスとミコトの方を見てしまう。
「よそ見するなんて余裕じゃない!」
女性の剣が俺の頭部に迫る。
が、間一髪、屈んでそれを躱す。
だが、続いて放たれた蹴りは避けきれなかった。
腕でガードしたため直撃は避けられたが、俺はその蹴りで吹っ飛ばされる。
「ふふふ…」
剣を優雅に構える女性。
俺も立って刀を構えなおす。
皆には申し訳ないが、片手間で戦える相手ではなさそうだ。
「立てるのかい、さすがだねぇ」
女性は片手持った剣を俺に向ける。
「ベルだよ…」
そういいながら放たれた剣戟を俺な何とか受け止めた。




