0118話 イヴと瑠璃
イヴが視界に捉えていた二人組は、イヴが歩き出すに合わせてスッと身を隠した。
「…やれやれ」
完全に身を隠した二人組に対して大したことがない相手だと思うイヴ。
二人組が身を隠した場所まで一気に距離を詰める。
少しして、一人がそっと顔を出す。
「バァ!」
「うわわわぁっ!!」
その男にしてみればそっと顔を上げたら目の前にイヴの姿があったのだ。
驚きようはすごいものだった。
「て、ててて、めぇ!」
「はん、言えてないよ」
後ずさりしながら、剣を構える二人組。
イヴはその前で両手を腰につけて立つ。
「なんだい、あんたらは?」
「う、うるせぇ、てめぇこそ誰だ!」
片方がモヒカン、もう片方がスキンヘッド。手には剣を持っていた。
「あたいたちのことをずっと見てたよな…ということはあの家族との因縁あり、か?」
「うるせぇ!」
「黙りやがれ!」
イヴが突然現れたことへの驚きはようやく落ち着いたのか二人組が叫びながら斬りつけてくる。
しかし、落ち着いたからといって攻撃が当たるとは限らない。
二人組の剣はさきほどまでイヴがいたところに刃を下ろしたが、それは空振りに終わった。
「何の関係か聞いても言うわけないよな」
「ああん、当たり前だろうが!」
「てめぇを斬ればいいだけなんだよ、デカオンナ」
その言葉にイヴは静かに怒りを募らせる。
「なるほど…んじゃぁ、痛めつけて聞き出すとするか」
イヴが拳をボキボキと鳴らしながら二人組を睨みつける。
その眼を見た二人組は、自分たちが恐怖を覚え、竦んでいるのを感じた。
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「ふーん」
瑠璃はあばら家で粗末な布団に寝かされているクリンを診る。
「ど、どうでしょうか」
隣ではクレハが心配そうな顔をしている。
「そうだね、診たところ大病って感じじゃないね、栄養が足りていないのと環境の変化についていけてない感じかな」
「そうですか…」
クリンは兄妹のなかで一番繊細な性格をしているそうで、目まぐるしく動いた状況の変化に疲れが出た様子だった。
「栄養のあるもの食べさせてほしいけど…」
「あっ、リュウさんから頂いたお金があるので、昨日から少しいいものを食べさせてあげられています」
「そう…、んじゃ、これも食事に合わせて飲ませてあげて、栄養剤だから」
「ありがとうございます」
クレハは礼を言って受け取る。
「お代は出世払いってことで、ともかくクリンちゃんが良くなることが優先だからね」
「重ね重ね…ありがとうございます」
クレハの目に軽く涙が溜まっている。
「さぁ、しっかりしてお母さん」
「はい」
「よし、んじゃ、僕は畑に戻るよ」
「わたしも行くー」
クリンの状態が分かったことで、グリンとクロスは畑に戻っていった。
「正直なところ、今後の見通しはどうなの?」
「…厳しいです、グリンは頑張ってくれていますが家族4人暮らしていくとなると…」
「そう」
「グリンは反対するでしょうけど、そろそろ私が働きに出ないといけないと思っています」
「…実は仕事の提案があるんだけど」
「仕事ですか?」
「うん、リュウからの提案なんだけどね…」
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モヒカンが振り下ろしてきた剣を半身になって躱すイヴ。
スキンヘッドは剣を大きく振りかぶっている。
モヒカンの剣を躱すと同時にスキンヘッドの隙だらけの顔面の右ストレートを叩きこむ。
メシャッという鈍い音が響く。
おそらくスキンヘッドの鼻の骨が折れたのだろう。
後方に吹っ飛ぶと鼻から血をボタボタとこぼしている。
続けて剣を躱されて前のめりになったモヒカンの顔面に左ひじを直撃させるイヴ。
それはモヒカンの鼻にヒットし、こちらもメシャッという鈍い音が響かせる。
この間、わずか1秒足らず。
「「ぎやぁぁっ!!」」
二人して汚い声で悲鳴をあげ痛みで膝をつく。
「ふん…」
パンパンを手を叩き、戦いが終わったことを見せつけるイヴ。
「さて、あんたらの素性を聞かせてもらおうか」
「ぐぅ…う、うるせ!」
モヒカンが反抗しようと声を上げかけたが、それは最後までは言えなかった。
イヴの左足の前蹴りが跪いているモヒカンの額にヒットする。
そのまま後方に倒れ、後頭部を打ったのか意識を失うモヒカン。
「うるさいねぇ…答えないならもっと痛めつけるだけだよ」
そういってうスキンヘッドを冷たい目で見るイヴ。
「あ、ああ、、い、言うよ」
「なんだい、もう口を割るのかい…つまらないねぇ」
イヴは心底残念そうにため息を吐く。
「で、あんたらはどこの誰に雇われてここにいるんだ?」
「お、おれたちはこの辺りの顔役であるジルバーノさんの部下なんだ」
「ジルバーノだって?」
「へへっ、知ってるのか…どううだい、とんでもない大物だろ」
「…余計なことは言わなくていいよ、で、そのジルバーノがなんであの家族を狙う?、借金は家を明け渡して返し終えたと聞いているよ」
「へへっ、理由まではしらねぇ、ただ、おれたちはジルバーノさんに言われて、あの家族が遠くに逃げないように見張ってただけなんだ」
「…ふむ」
イヴは腕を組み考える。
ジルバーノといえば裏社会でも、かなり名の通った大物だ。
ジルバーノ一家という一大組織を持ち、イヴが所属していた組織とも時に共闘したり、時に諍いを起こしたりしたことがある。
ルイムの町を含む、南東部周辺で強い影響力をもつ男だ。
「へへっ、おれたちの後ろにはジルバーノさんがいるんだぜ、どうだ、ビビっただろ、今すぐ土下座しておれの靴でも舐めれば少し痛めつけるくらいで許して」
スキンヘッドがうるさいので顔面を蹴りつけて気を失わせるイヴ。
「キナ臭いね…」




