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龍翔記  作者: GIN
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0115話 クレハたちとの再会

「グリン!」


俺の声に気付いたグリンが振り返る。


「リュウ!」


グリンは木で作ったそまつな鍬を投げ捨て、俺に向かって走ってきた。


「クレハや妹たちは?」


「ああ、あっちにいるよ、ちょっとクリンの調子が悪くて2人で看病しているんだ」


とりあえず全員、無事ではあるようだ。


「家を見たよ」


「ああ、そうなんだ、父ちゃんが死んじゃって、その後あの二人組が来て家を追い出されたんだ」


「そうだったのか…」


「まぁ、家は仕方ないよ、とりあえずみんな無事だしね」


逞しい子供だ。


「すごいな、グリンは」


「リュウに言われたからね、母ちゃんや家族を守ってやれってね」


「ああ、そうだな」


「あー、リュウだ!」


小さい女の子の声が聞こえる。


末娘のクロスだ。


「久しぶりだな」


その後ろからクレハも姿を見せる。


「リュウさん…」


「クレハ…」


グリンが畑の作業に戻り、クロスもそれを手伝っている。


イヴもグリンを手伝っている。


俺はクレハと一緒にクリンの様子を見に来ていた。


クリンは熱があり、眠っていた。


少し息も荒いが、症状は恐らく風邪だろうとのことだった。


「調子を崩していますが、大事には至らないと思います…」


恐らく医者に見せることもできてはいないだろう。


「俺たちのパーティに薬師がいるから後で診てもらうといい」


クレハは嬉しそうに頷く。


「あれから何があったんだ?」


「あのしばらく後に夫が亡くなりました」


「そうらしいな」


「借金があったのはご存じかと思いますが主人が亡くなったら、家を引き渡す契約になっていたとかで追い出されました」


「そうだったのか」


「ええ、借金自体はそれで返し終えられたんですが…私は実入りのいい店で働くようなことも言われて…」


「それを蹴って、ここにいるってことか」


「そうですね、グリンが強く反対してくれて、皆を守るんだって言って畑を…」


「そうか」


「でもこんな川沿いでは作物なんて育ちません…もうそろそろ限界かな、と」


クレハは紹介されるがままの店で働く覚悟をしているようだ。


「そうだ、あの時の礼がまだだったな」


俺はそういってクレハにいくらかの金を渡した。


俺が渡した金額に驚くクレハ。


「あっ、あれはそもそも子供たちが失礼をしたからでお礼をいただくようなことではありません」


それを付き返してくるクレハ。


「いいんだ、とりあえず受け取ってくれ、しばらくはそれで暮らせるだろう」


それが解決にならないことは俺も分かっている。


「クリンに栄養のあるものを食べさせてやってくれ」


その言葉に観念したのかクレハは静かに頷き、俺の渡した金を受け取った。


「この御恩は必ず…」


「いいって…」


そういって俺はクレハたちの今の住居を見る。


細い木を組んで、そこに汚れた布を張っただけのあばら家だ。


少し強い風が吹くだけで壊されるであろうそのあばら家。


こんなところに親子4人が暮らしているのだ。


そこにグリンとクロス、イヴが帰ってくる。


「どうだった?、グリン」


「土が硬かったり、ちょっと掘ると水が出てきたりで難しいね、でも畑を作るくらいしかできないし、またいい場所を探してみるよ」


「そうか」


「日も暮れてきたよ、リュウ」


イヴが夕暮れを指さしながら言う。


「前みたいにお泊めできませんが、また気が向いたら様子を見に来てください、グリンも喜びます」


「エー、もう帰るのか、リュウ」


「ああ、また来るよ」


そういって俺とイヴはクレハたちのあばら家を出る。


しばらく歩みを進めたところでイヴが言う。


「あそこに畑は難しいね」


「そうか」


「あたいも農業に詳しいわけじゃないけど、作物が育つような場所じゃことくらいは分かるよ」


イヴの言葉を聞いて俺は思考する。


クレハの夫が結んでいた家を引き渡すという契約はおそらく相手の嘘だろう。


だが、もう調べるすべがない。


「小難しいこと考えてるだろ」


「…ああ」


「あたいも裏家業が長かったから分かるけど、いまからあの家族を元の家に戻すのは無理だね」


「やっぱりそうか」


「ああ、もう契約書も何も残っちゃいないだろうし、母親が見せられた契約書があれば向こうの正当性が証明されるだけだ」


「…」


とりあえず借金はなくなったが、浮上のきっかけもないという状態だ。


いずれ値を上げたクレハが自分たちに折れるのを待っているのかもしれない。


「借金がないなら、どっかで仕事がと家が見つかればいいんだろうけどな…どっかにないか…空き家の管理者を探しているようなやつは」


イヴのその言葉に俺はあることを思いだす。


「イヴ、それだ!」


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