0114話 再びルイムの町
翌朝、出発前に俺はメンバーに昨晩の話しをする。
テレーザと話をすることになった経緯を含めてだ。
「なんだ、てっきり逢引してるのかと思ったぜ」
イヴが無責任なことを言う。
俺が軽くにらむと、イヴは舌を出して軽く笑う。
「…ふーん、まぁ、いいわ」
「そうだね…」
アイリスとミコトもやや怒った様子のままだ。
何を誤解しているのやら。
「へっ、ともかく出発するぞ、ルイムの町まではもうすぐだ」
野営地を出発した俺たちはルイムの町を目指す。
再び襲い来る魔獣を倒しながら進む。
途中の戦いでアイリスとミコトを聞きから救うことで怒りを解消してくれたのもよかった。
そうしているうちに見えてくるルイムの町。俺たちは町に入る。
「ようこそ、ルイムの町へ!」
「ああ」
お決まりの挨拶をされながら、俺たちは町の中に進む。
「へっ、この後テレーザはどうするんだ?」
ガイルがテレーザの方を見ながら言う。
「そうですね…こちらのギルドで護衛を雇って領地に戻りたいと思います」
「じゃぁ、ギルドまで案内するわ、ミコトも行こう!」
アイリスがテレーザの手を引き、ミコトと一緒にギルドへ向かって走り出す。
「あっ、討伐依頼もついでにやってくるねー」
「アマチクダサイ、アイリスサマー」
レムもフヨフヨ浮いて一緒について行ったようだ。
「待ってくれ、私もギルドに行く」
アスカもギルド組のようだ、近くの魔獣の話しでも聞きにいくのだろう。
「…さて、俺たちはどうしようか?」
「瑠璃は薬の調合に使う素材を見に行くよ」
「へっ、俺は物資の調達をしてくる、宿は頼んだぜ」
そういって瑠璃とガイルが商店の方に向かい、俺とイヴが残される。
「とりあえず宿を探すか」
「そだね」
宿屋はあっさりと見つかった。
それほど宿泊客もいないようで、部屋も空いていたのだ。
「さて、どうする?リュウ」
「まだ誰も戻りそうにないな…ちょっと行きたいところがあるんだ、イヴも来るか?」
「ここにいても暇だし付き合うよ」
俺は宿の主人に言付を頼むと町の通りを進む。
通りを進みながらイヴが言う。
「んで、行きたいところって?」
「ああ、前にこの町に来た時に世話になった家族がいてね、ちょっと事情もあったみたいなんで顔を見とこうかと」
「ふーん…」
イヴは聞いておきながら興味なさげに周囲を見回している。
道の路地裏には前に来た時と同じく、倒れこんでいる人が見える。
「あんまり状況はよくないみたいだな」
「ああ、俺がラウルの話しに乗ったのもこれを見ていたこともあるかもな」
「ふーん」
背の高いイヴが俺を見下ろしている。
「なんだよ?」
「いーや、別に」
ニヤニヤしながら前を見直すイヴ。
「…目的の場所はこっちだ、いくぞ」
「はいはい」
俺とイヴは通りを進み、クレハの家がある通りに入る。
暫く進んで見覚えのある家が…なかった。
「あれ?この辺だったはずだけどな」
「なんだよ、リュウは方向音痴なのかい」
「いや、そんなはずは…」
俺は更地になっている場所まで行く。
最近まで家が建っていたと思われ、廃材の中に見覚えのある色付きの板を見つける。
クレハの家の扉に使われていたものだろう。
「やっぱりここで合っているみたいだ」
「ということは家が潰されてるってことだね」
「そうだな」
俺は周囲を見回す。
近くを歩いていた老人にクレハの家のことについて聞いている。
「あー、クレハさん家かい…」
老人は言いにくそうにしている。
「俺たちは前にクレハさんに世話になったものです、その時のお礼もしたいし、何か知っていれば教えてください」
「…ご主人がなくなったんじゃよ」
病に臥せっていたグリンたちの父親のことだろう。
「そうだったんですか…それでクレハさんたちはどこへ?」
「…ご主人がお金を借りられていたそうで、その返済のために家を取り上げられてのう」
あの時の取り立て屋の関係者だろうか。
「かわいそうに、小さい子供もおるのにムゴイことじゃ…クレハさんたちはいつの間にかおらんようになってのう」
「そうか、ありがとう、助かったよ」
俺は老人に礼を言う。
俺が老人と話している間にイヴもどこかに行っていたようだ。
「俺はクレハたちを探す」
「ああ、そうだろうと思って、そこの路地裏にいたやつに聞いたよ、この家に住んでいた家族は川沿いにいるらしいぜ」
イヴは俺の行動を読み、先に情報を仕入れてくれていたようだ。
「ありがとう、助かったよ、イヴ」
「い、いいって…それにまだその家族を見つけたわけじゃないしな…」
心なしかイヴの顔が赤い。
「よし、行こう」
俺はイヴを伴い、情報にあった川沿いへ向かう。
通りを外れると道端に倒れている人の数が増えてくる。
川沿いではその数がさらに多くなる。
その中ほどに小さな男の子の姿があった。
瘦せた土で懸命に畑を耕しているその子は、クレハの息子であるグリンだった。




