0112話 意外な人物
誤字を修正しました。
「あっ、起きたみたいだよー」
気を失った女性を見ていてくれた瑠璃が声を上げて俺たちを呼んでくれる。
女性は意識を取り戻したものの、状況は把握できていない様子だ。
周囲に集まった俺たちをぼうっとした目で見まわしている。
「あ、あなた…」
女性が俺が俺を指さす。意識を失う前に少しだけ見たことを覚えているのかもしれない。
「どうも、俺は冒険者のリュウ、ここにいる皆は俺の仲間です。。。何があったか分かりますか?」
俺にそう問いかけられ、女性は記憶を辿るように考え込む。
そして、何があったかを思い出したようだ。
「ひっ、そ、そうですわ…わたくしたちは魔獣に襲われて…それで」
女性は両手で頭を押え、小刻みに震えだす。
「魔獣はすべて倒しました、もう大丈夫です」
「魔獣を…倒した…?」
「ええ、もう魔獣はいません、もう大丈夫です」
俺の言葉に女性は周囲を見回す。
当然だが、そこにウルフの姿はない。
「あ、あなた方がわたくしたちを助けてくれたのですか?」
「…」
女性の言葉に俺は思わず口をつぐんでしまう。
「な、何とか言ってくださいまし」
「…助けられたのはあなただけです」
「…!」
俺の言葉にショックを受けた様子の女性。
「辛いでしょうが聞いてください、俺たちが通りかかたときには護衛も馬もすでにウルフに襲われたあとでした」
女性は俯き加減に俺の話しを聞いていている。
「ウルフが馬車に体当たりをしているのを見たので、生き残りがいるかと思い、ウルフを倒した後にあなたを馬車から連れ出しました」
そこまで聞くと女性は顔を上げて俺を見る。
「あ、あなたが助けてくれた方ですね…微かに覚えています、あ、ありがとうございました」
俺は黙って頷く。
「どこに行かれる予定だったのかは知りませんが残念ながらあなたは今一人です、このまま先に進むのは難しいと思います」
女性は頷く。
「王都に行く予定だったのですが、それが急遽キャンセルとなりまして…」
「そうですか…この近くにルイムの町という、小さい町があります、そこなら安全でしょうし、ルイムまで俺たちと一緒に行きませんか?」
「願ってもないお話です、お、お願いいたします」
女性は立ち上がろうとしたが、まだ力が入らないのかふらついて倒れそうになる。
俺はそれを支える。
「あ、ありがとうございます」
女性は俺から身体を離すと、ドレスのパタパタと叩いて身なりを整える。
心なしか顔が少し赤いようだ。
熱でもあるのだろうか。
その時、頬と太腿に鋭い痛みが走る。見るとアイリスとミコトが痛みの発生源をぎゅと抓っていた。
「いてて、なにするんだよ!」
俺は二人を振り払う。
「…綺麗な人だからって見つめちゃって」
「むー」
いやいやいや。
「何言ってんだよ、意識を取り戻したばかりで足元がおぼつかないから見てただけだろ」
「知らない!」
アイリスとミコトがプイッとそっぽを向く。
「あー、こりゃ…天然なのかい」
「リュウサマ…」
「へっ、オレの手には負えねぇ話だな」
イブとレムとガイルが何か好き勝手言っている。
「ふむ、ある意味、魔獣観察より面白い状況だな」
「死なない程度の怪我なら瑠璃が治してあげるよ」
なんだか物騒なことを言っている。
「おい、好き勝手言ってんじゃないぞ!」
俺の言葉にアスカと瑠璃がぴゅーと逃げていく。
「へっ、ともかくリュウよ、話しを進めてみようぜ」
「ああ、そうだな」
俺は女性の方を向く。自然と目が合う。女性はまだ顔が赤いようだ。
「ここからルイムの町までは1日ほどで付きますが、距離的に1回野営する必要があります」
「はい」
「あの馬車もさすがに持っていけませんが、カバンなどの荷物程度なら大丈夫です」
「わたくしの荷物はそれほどありませんわ、そのちょうどカバンひとつくらいです」
女性はモジモジしながら答える。
「そうですか、許可をもらってからと思っていたのですが、馬車は破壊させてもらいます…このまま置いとくとゴブリンとかが悪さするかもしれないので」
「ええ、そうですわね、馬もおりませんし壊してください」
「さいごに、護衛の皆さんや馬は弔ってあります…ご覧になりますか?」
「ええ、お願いします」
俺は傍らの小さい墓標代わりの木片を掌で指し示す。
「あれです…あまり大げさにするわけにもいきませんので、深く掘って纏めてという形ですが…」
俺はミコトをちらっと見る。
「これ、護衛の人たちの遺髪と武具の一部です…あたしたちじゃ誰が誰のかは分からないけど、渡しておくね」
俺にはまだ何か怒っているようだが、決められたことはこなしてくれる。
「何からなにまでご丁寧な対応ありがとうございます…皆様もありがとうございました」
女性は俺たちに向かって頭を下げる。
「へっ、んじゃ、オレは馬車を壊しとくぜ」
「あっ、あたいもやりたい!」
ガイルとレムがなぜか嬉しそうに馬車を破壊していく。
女性の荷物はすでに回収した後だ。
「馬車の始末が終わったら出発します…」
俺はまだ自分たちの自己紹介が済んでいないことを思い出す。
順番にパーティメンバーを紹介していく。
アイリスもミコトも不機嫌な様子はなく、にこやかに挨拶を交わした。
機嫌が直ったのかと思ったが、俺にはまだ冷たい。
俺は女性の目を見る。
「お名前をお聞きしても?」
「あっ、申し遅れました…わたくしはテレーザ…テレーザ・バウトマン…バウトマン辺境伯の娘です」




