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龍翔記  作者: GIN
110/692

0110話 青い石

翌日、俺たちが村を出ようとしたところでジェームスの一行と会う。


「お久しぶりです、リュウ様、アイリス様」


「おお、ジェームス」


ジェームスは最初にダールベン村に来ようとした際に魔獣に襲われていたのを助けた縁で知り合った商人だ。


俺はジェームスを知らないガイル、ミコト、イヴにも紹介をする。


「王都での用事は終わられたのですね?」


「ああ、冒険者になったし、今はスーシアンに向かうところだ」


「なんと!スーシアンですか、それはまたご苦労様です」


「ジェームスは行商か?」


「ええ、商店でも持てればいいのですが私共はこれで稼ぐしかありませんから」


そういってジェームスはいくつかの品をカバンから取り出す。


「スーシアンまで行かれるのであれば、これなんてどうです?」


ジェームスが手に持っていたのは携帯食料などの旅グッズだ。


だが、残念ながらいまこれらの物資は十分に持っている。


「すまん、ジェームス、これらは俺たちもいまは十分に持っているんだ」


「そうですよね…あっ、これなんてどうです?」


ジェームスが続いて取り出したのは薄く青色に光る石だった。


「これは?」


「こちらは港町ポートタウンで仕入れた珍しい石でして、かの賢者の石…によく似た色をしている石です」


「よく似たって」


「へっ、ニセモノじゃねぇか」


俺とガイルが思わず突っ込む。


「正直まだ鑑定ができておりませんで効果などはよく分かっておりません、お見せしたのはただの冗談ございます」


ジェームスが頭を下げ、その石を片付けようとしているときにアイリスがその石をじっと見ていることに気付く。


「…アイリス?」


「え、ああっ、な、なんでもないわ」


絶対になんでもあるリアクションだ。


「どーしたの?あの石が気になるの?」


「気になるっていうか…なんとなく気にかかるというか…」


はっきりしない答えだ。だがアイリス自身もなぜ気になるのかは説明できないのだろう。


「ふーん、じゃぁ、もらっちゃえばいいじゃん」


ミコトがあっさりと言う。


「なんと、そんなご無体な、こんなものでも仕入れ値はかかっておりますれば…」


「ぷぷっ、冗談だよー」


ミコトがぺろっと舌を出す。


「へっ、そんなに気になるなら買っておけばいいんじゃないか」


冒険者として旅に無駄な荷物は持たないという鉄則がある。


特に効果が分からないものを持っているとどんなリスクがあるか分からない。


持っているだけで体力奪われたり、呪われたり、魔獣を呼び寄せたりするなど、負の効果がある魔道具の可能性もあるからだ。


最悪、死に至るようなものである可能性ある。


だが、それよりも優先したいのが『勘』だ。


冒険者の勘。


何となく気になるもの、気がかりに思うもの。


そういう、ふと気に止まるものに意外な効果があったりすることもある。


当然、何もないことが一番多いのだが。


ただ、こういった勘、感覚はバカにできない。


冒険者の経験が長いガイルが反応したのは当然だし、俺も老師から聞かされていた話から感覚を大事にするように心がけている。


「そうだな、気になるなら買おう、アイリス」


「おおっ、お買い上げありがとうございます!」


現金は残しておきたいということもあり、ジェームスとの話し合い、物々交換ということになった。


交換レートは風狼の牙1本と青い石を2個を交換した。Cランクの魔獣素材との交換だから、それなりに値の張る石ということになる。


「へっ、どっかで鑑定してもらえれば意外なオタカラかも知れねぇな」


「どうかな、期待薄だとあたいは思うけど」


「まぁ、いいじゃない、伯爵に渡さないでよかった風狼の牙と交換できたんだから実質タダだし」


「コウショウジョウズデゴザイマス、リュウサマ」


「まぁ、この石がただの青い石なら大損だけどねー」


アイリスはその石を手に持ち、なんだかうれしそうに笑っている。


そんな顔を見ていた俺は思った。


「石の価値なんかあろうがなかろうが、どっちでもいいな」


「その石はグレイスフル諸島から流れてきたものと思われます、売ってもそれなりに価値はあると思いますよ」


「だとしたら安くないか?」


「仕入れ値から考えて儲けを考慮すると、本来であればもう1本くらいは風狼の牙をいただくところですが、リュウ様、アイリス様には命を救われた御恩がありますので」


「気にする必要ないんだが」


「いいえ、それでは私の気がすみません、もっともこれで借りが全て返せたとも思っておりませんが」


これ以上は言っても聞かないだろう。


「助かるよ、ありがとう」


「とんでもない、今後ともごひいきに」


「そろそろ出発するぞ」


ガイルの声に俺たちは全員で返事をする。


「ねぇ、リュウ」


「どうしたミコト?」


「あたしもその石、1個もらっていい?」


「ああ、いいよ」


こうして2個の石はそれぞれアイリスとミコトの手に渡る。


手のひらに乗るほどの小さいサイズだが、淡い青色が気に入ったのか2人して嬉しそうだ。


「さて、改めて…行こうか、みんな」


村に行商に来たジェームス、見送りに来てくれたサイカ、ハンフリーに別れを告げ、俺たちはダールベン村を出る。


次の目的地、ルイムの町を目指して俺たちは出発した。


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