0105話 鍛冶屋のガルツ
俺とアイリスはギルド近くの鍛冶屋を訪ねていた。
ギルドで腕のいい鍛冶屋を紹介してもらい、ガルツというドワーフの工房を訪ねているのだ。
ガルツはギルドの紹介状を見せると作業中だった手を止めて、こちらの応対をしてくれた。
互いに自己紹介を済ませていまはガルツの工房にあるソファーに腰掛けていた。
「忙しいのに手を止めてしまって申し訳ありません」
「いいってことよ、忙しいのは確かだが、あんたらの相手をしている時間で作業したところでどっちにち終わらねしな」
とてつもなく忙しいのにどこか嬉しそうだ。生粋の職人なのだろう。
「で、どんな用だ?」
アイリスはレイピアを手に持ち言う。
「私の剣、レイピアなんですが戦いの最中にヒビが入っちゃって…直せないですか?」
「どれ、ちょっと見せてもらうぜ」
ガルツはアイリスのレイピアを手に取り、鞘から抜いて状態を確認する。
「ふーむ…」
ガルツは片目だけにはめる拡大鏡も使い入念にアイリスのレイピアの状態を確認する。
俺とアイリスは黙って結果を待つ。
しばらく状態を確認していたガルツは拡大鏡を外してなにやら考え込む。
「…」
俺たちはガルツの考えが纏まるのを待った。
「あんた、アイリスと言ったか…これをどこで手に入れた?」
「どこって…」
アイリスがちらっと俺を見る。
「俺たちを育ててくれた人からもらったものだ、どこから入手したかは知らない」
「んじゃ、お前さんのその刀も同じか?」
「そうだな、アイリスのレイピアと一緒にもらったものだ」
「その人は?」
「いまはもう…」
俺が全てを言わなくてもガルツは察したようだ。
「そうか、すまねぇ」
「構わない、でアイリスのレイピアの状態と何か関係があるのか?」
「ああ、その前にお前さんの刀を見せてもらうことはできるか?」
「構わない」
俺は刀をガルツに手渡す。
ガルツは刀を抜くと、再び状態を確認する。
「よく手入れされている」
「ああ、日課だからな、そう教えてもらった」
「そうか、アイリスのレイピアもそうだったが大事に使っているのが分かる」
「私も剣は分身だと教えてもらったから」
「そうか…」
ガルツは俺の刀を鞘に戻すと俺に返してくる。
「レイピアの修理だが…」
ガルツは小さいため息を吐く。
「残念だが受けることはできねぇ」
「そんな!」
アイリスが思わず立ち上がる。
「…何か理由が?」
「あ、ああ、すまねぇ、受けられないのではなく手に負えないというのが正しい」
「手に負えない?」
王都でもかなり腕のいい鍛冶屋と聞いてきたガルツが手に負えないとはどういうことだろう。
「お前さんたち、自分の武器についてどれくらい知ってる?、由来、名前…なんでもいい」
俺とアイリスはお互いの顔を見合わせる。
「そういえば何も知らないな」
「私も…ある日、老師からもらっただけで何も言われてないわ」
そう、毎日の鍛錬の中である日、武器を使った修練が追加になり、その時に老師からそれぞれ渡されたのだ。
由来も何も聞いていない。ましてや名前があるような武器だとも思っていなかった。
「そうか…単刀直入にいうが、お前さんたちの武器は一介の職人がどうこうできる代物じゃねぇ」
「…どっちの意味だ」
「俺たちが扱えるような熱量では手も足も出ねぇ…って意味だ」
「そうか…」
ドワーフの、それも生粋の職人の手に負えない。
それほどまでの武器ということか。
「だけど私のレイピアもリュウの刀をそんなにすごい力を持っているようには感じないけど…」
アイリスが長年使っている者としての感想を口にする。
そしてそれは俺も同意見だ。
「そうだな」
「封印だがなんだかで秘匿されているんだろうぜ…まぁ、理由は分からないがな」
「…封印」
俺とアイリスは同時に同じ言葉を口にした。
「そんなわけで申し訳ないが、オレじゃぁ、そのレイピアを修理することはできねぇ」
「いや、有益な情報をありがとう、俺たちも知らないことだったので助かったよ」
「ありがとうございます」
俺とアイリスは礼を言い、ガルツの工房を後にする。
修理できなかったお詫びとしてガルツが新品のレイピアをプレゼントしてくれると言い出したが、それは辞退して料金を支払って購入した。
しばらくはそれがアイリスの武器になる。
「具合はどうだ?アイリス」
「うん、いつものと違うから少し違和感があるけど…慣れれば問題ないと思う」
「よし、じゃぁ、次は瑠璃の店に行こう」
ガルツの言った武器に施された封印。
誰がそれをしたのか、何の理由か。
老師は封印のことを知っていたのか。
現状では何も分からない。
またどこかで武器や封印に詳しい人物に会ったら聞いてみるか。
いや、封印の内容が分からないのにそれは危険かもしれない。
ともかくいま悩んでも解決しない問題。
まずは今できることを優先し、俺とアイリスが瑠璃の店へと向かった。




