0104話 呪術師の情報
俺たちは情報屋の前に金貨3枚を並べた。
「持ってきたぞ、これで前に言ってた呪術師の情報を買いたい」
「あ、ああ…しかしこんな短期間でよくこんな大金集めてこれたな、あんたらGランク冒険者だろ」
「へへん、あたしたちは指名クエストをクリアしたからね、その報酬だよ」
「えっ、ってことはあんたらがエリーン伯爵の指名クエストをクリアしたというチーム:龍翔<ドラゴニア>なのか!」
「ええ、そうですね」
驚きの声を上げる情報屋に応えるアイリス。
「あれ、あたしたちって有名人?」
「へっ、もうクエスト成功の連絡は入れたみたいだな」
「ああ」
エリーン伯にとってもこれで俺たちとの関りを断てるのだから連絡くらいはさっさと入れておくことにしたのだろう。
「ともかくこの金は正規の報酬で得た金だ、やましいことはないから安心して受け取ってくれ」
「あ、ああ…いやしかしこんな有名になるならあの時情報を渡しておくんだったよ」
「いや、そうすると俺たちは指名クエストをクリアしていないので有名になっていない」
「ああ、そうか…まぁ、こちらとしては対価がもらえるんならそれで良しと…で、呪術師の情報だったな?」
「そうだ、とびきり腕のいい呪術師の情報がほしい」
「そもそも呪術師自体の情報は少ないんだ、だが一人いるよ、凄腕の呪術師がね」
「どこどこ?」
「へっ、落ち着けよミコト」
「その呪術師は遥か北…エルフの国にいる呪術師です」
「…!」
エルフの国。
俺たちがいまいるブラウカ王国の北に位置する国でラウルの母国でもある。
エルフは長命で知識欲も高い。
魔法使いになるものや魔法剣士が多いと聞くが呪術師を選んだものもいるということだろう。
「へっ、エルフの国に居ると言われても広すぎて探しきれないぜ」
「まさかそれだけってことはないよねー?」
「当然です、対価には相応の情報を、が我々のモットーですからね、知ってる情報はすべてお渡ししますよ」
そういうと情報屋は一枚の羊皮紙を取り出す。
そこには呪術師のことが詳しく書かれていた。
「そこに纏めておいた、これ以上の情報は我々も持っていない」
俺はその内容にざっと目を通す。
「なるほど、助かったよ、ありがとう」
「いえいえ、またどうぞ、ああ、そうだ、渡した情報はパーティ内での共有以外はしないでくださいね、転売もダメですよ」
「ああ、分かってる」
情報を買ったパーティがその情報を他のパーティに漏らしたり、また他人に売るという行為は情報屋としては許せない行為だ。
当然のことだ。俺はそれに答えて情報屋を出る。
そして俺たちはギルドで会議室を借りると情報屋から受け取った羊皮紙の内容を確認する。
「えーと、呪術師がいるのはエルフの国だよね」
「ああ、そしてパーシルの森に住んでいるようだ」
「どんな森なんだろ?」
「それはエルフの国で情報を集めた方がいいかもしれないね」
ミコトの疑問にアイリスが答える。
「呪術師の名前は…ティネリス、女性の呪術師みたいだ」
「呪術師としての功績の大きなものは…森の精霊との交信による農産物の増産に、エルフ貴族の令嬢の解呪だそうだ」
「すごい情報だね」
アイリスが関心している。
「へっ、ラウルが何も言わなかったってことはおそらく秘匿の情報であいつですら知らない情報ってことだな…だとすると金貨3枚は安かったな」
「…ああ」
おそらく最初の金貨3枚は「エルフの国に呪術師がいる」というところまでだったのではないか。
せいぜいパーシルの森にいるというところが含まれるかどうか。
名前は功績については、俺たちが貴族の指名クエストをクリアしたパーティだから繋がりを持つためにあえて教えたのだろう。
これで俺たちは呪術師の名前を呼ぶたびに情報屋のことを思い出さざるを得ない。
「へっ、借りを押し付けられたな」
「ああ、だがいまは詳しい情報を知れたことを感謝しよう」
「よし、んじゃ、エルフの国に向けて出発だね!」
「おいおい、元気だね」
ミコトが元気よく右手を上げて行動開始を宣言する。
「ああ、だがまずは準備を整えないとな」
「へっ、エルフの国まで行くとなると相当長い旅になるぜ、いろいろ準備してからだな」
「そっかー」
「ねぇ、ミコト、また私たちで買い出しに行きましょうか、レムも連れて」
「いいね!そうしよう」
「ああ、いや待ってくれ、今回は俺とアイリスで買い出しというか行くところがあるんだ」
「そうだな、ミコトはオレと一緒にヒューイの所に行くぞ」
「イヴとレムにも買い出しをお願いしたい」
「あたいは構わないよ」
「ショウチシマシタ」
「ねぇ、リュウ、行くところってどこ?」
「まずはアイリスの武器の調達、それと瑠璃の店だな」
「そっか、薬も必要になるもんね」
「それならレムも一緒の方がいいんじゃんないのかい?あたいは荷物を自分で持つよ」
「いや、薬もそうだが、もっと別の頼みをしてみようと思う」
俺は皆に考えを聞かせる。
瑠璃がその頼みを聞いてくれるかは分からない。
だが、旅を進めるには必要なことだろう。
こうして俺たちはそれぞれの役割に向かってギルドを出たのだった。




