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龍翔記  作者: GIN
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0102話 ラウルの報告

「戻りました」


「お帰りなさいませ、ラウル様」


エリーン伯との交渉を終え、自分の屋敷に戻ってきたラウル。


出迎えたのはジョセフ。


マルタン、トリスタン、ハイルも一緒だ。


「皆は?」


「リュウ様、ガイル様、ミコト様はお休みになられています、アイリス様もたったいまお疲れのためお休みされました」


「そうか、分かった」


ラウルはそれだけ言うとジョセフやマルタン達にも休むように伝えると自分も部屋に戻った。


部屋のベッドにはさんじゅーろーが陣取っていた。


ベッドの中央で丸まって眠っていたさんじゅーろーだが、ラウルの気配に気づいて顔を上げる。


「起こしてしまいましたか」


「にゃー(いや大丈夫、お疲れさんだな、ラウル)」


「必要な仕事でしたからね、でも疲れた分の成果はありましたよ」


「にゃー(さすがラウルだ、ベッドは譲るよ、ゆっくり寝てくれ)」


言うとさんじゅーろーはひょいとベッドを降りて部屋を出ていく。


おそらくミコトのベッドに潜り込むんだろう。


ラウルは着替えをすますと疲れた身体をいやすためにベッドで休息をとった。


翌朝、まだ動けないものの意識を取り戻したリュウを中心にラウルの交渉結果の報告がなされた。



「へっ、さっそく成果を聞かせてもらうぜ」


ガイルが期待値をあげている。


「できる限りのことはしてきたつもりです」


そういってラウルは何枚かの羊皮紙を取り出す。


いま俺は意識を取り戻し、少し経ったところだ。


状況は付きっ切りで世話をしてくれていたアイリスやミコトから聞いている。


ともかくいまはラウルの報告を聞こう。


「結論から言いますとエリーン伯との交渉はほぼこちらの希望通りになっています」


「ほぼ?」


聞いたのはミコトだ。


「ええ、ほぼです、順番に説明します」


ラウルは羊皮紙を見ながら話し始める。


「まず、今回のクエストで得た素材…風狼の牙と鉄蠍の針ですが、いずれもエリーン伯には渡さないことにしました」


「へっ、当然だな」


「えっ、でもそうするとクエスト報酬はどうなるの?」


「ええ、素材に関しては奪い取ろうとしたことで信頼を欠如したと理由で渡しません、ですが発端は伯爵側にあるので報酬はいただきます」


「わぉっ!」


素材も渡さない、しかし報酬はもらうということで2重取りだ。


「報酬に加え襲撃などによる補填として迷惑料として報酬と同額を支払ってもらいます」


「へっ、迷惑料にしちゃ意外と安いじゃねぇか」


「ええ、ここはもっと吹っ掛けたんですが頑として受け付けませんでしたので減額しました、ただ…」


「ただ?」


相槌をうったアイリスを見て頷いてラウルは続ける。


「今回のクエストは伯爵の指名クエストで、条件なしのクエスト成功でギルドへ報告することで減額を飲みました」


「それはすごい」


ハイルが感嘆の声をあげる。


「ええ、エリーン家はあんなのでも伯爵家です、その伯爵家のクエストをクリアしたパーティというのは大きな意味を持ちます」


「へっ、確かにな、もともと貴族の指名クエストなんざ中々成功で報告されることはないしな」


「そうなの?」


アイリスが素朴な疑問を口にする。


「ああ、貴族のクエストってのは大体、条件付きの成功ってのが多いというか殆どそれだ」


「僕も聞いたことがある、素材に傷がついているなどど難癖つけて報酬を減額したりする手口とかね」


「なにそれ、ひっどー」


トリスタンの言葉に反応するミコト。


「それが条件なしに成功報告ってことはパーティの名声も一気にあがるんじゃない」


エイルが興奮した口調で言う。


「ええ、その通りです、成功報告がもたらす恩恵は迷惑料との引き換えには十分すぎる結果です」


たしかに、新参のパーティであるチーム:龍翔<ドラゴニア>が貴族の指名クエストを成功させた。


このインパクトは大きい。


「エリーン伯としては現金を多く払うよりは報告することの方がメリットがあったのでしょう」


カゲロウの報告にあった財政が厳しいという話しだろう。


現金が減ることより、ギルドへ一言、クエスト成功した、というだけで済むならそちらを選ぶということか。


「屋敷での戦闘や人的を含めた被害についてもこちらに責がないことは確約済みです」


ラウルは羊皮紙の一番下の署名欄を指さす。


「これらは契約魔法によって確約されました、エリーン伯の署名もあります」


契約魔法。


契約時の約束事ごとなどをしっかりと結ぶための魔法で、これがあれば立場や身分の違いも関係なく履行を迫れる。


また、第三者機関に委託し、履行をさせるように促すことも可能になるので反故にされる可能性が低くなるのだ。


この点でラウルの仕事は完ぺきだった。


「迷惑料を減額したのはあまり追い込んでもメリットが少ないと判断したこともあります」


確かに。貴族を追いつめてヘタに恨みでも持たれたら厄介だ。


こちらに怪我人や屋敷の被害はあるものの幸いなことに死者はいない、であればある程度で見切りをつけるのは正解だろう。


「エリーン伯はバウトマン辺境伯の娘との婚姻を取りやめるそうです」


「へっ、そりゃそうだろう、あの死んだ執事から聞いた話しでは、あのまま結婚すれば最終的に家を乗っ取られるんだからな」


「ええ、それに婚姻条件も達成できませんしね」


「にゃー(素材だな)」


「ええ、実際に素材はエリーン伯の手元にありませんからね、これでは婚姻を受けたくても受けようがありません」


「でも、それって私たちのクエストが失敗した、みたいな話しにならないの?」


「それは大丈夫です、エリーン伯のクエストは素材収集とは別のこととしておきましたので」


「んっ?どういうこった」


「つまり、我々は素材収集のクエストを受け取ったのではなくエリーン伯家の内情調査と裏切り者の粛清を依頼された、ということにしています」


「なるほど、あの執事をターゲットにしたってわけか」


「ええ、なので屋敷での戦闘も当然のこと、執事が死んだのも仕方がないということですね」


「…あの騎士は?」


俺はようやく声を出した。


「騎士には執事との戦いの最中に戦死したことにしました」


「へっ、悪事に手を染めた伯爵に従って死んだよりは、裏切り者との戦いの最中に戦死したってほうが、あの騎士の残された家族にとってはいいのかもな」


「エリーン伯は貴族同士の婚姻条件を満たせなかったという恥を受けることになります、今後はその尻拭いで忙しいでしょう」


「私たちに構っている暇はないってこと?」


「その通りです」


アイリスの言葉にラウルが頷く。


「あと、マルタン達に襲撃を依頼したのはエリーン伯で間違いなかったです」


その言葉にマルタン達は一様に黙る。


「ただ、グゼフの身に起きた悪魔憑依、直接悪魔憑依と言ったわけではありませんが、それについては何も知らない様子でした」


「ということは僕たちの依頼に便乗して悪魔憑依をさせた奴がいるってことか」


「そうなる、ただまぁ、理由はいまは分からない」


ともかくこれでエリーン伯のクエストについてはいったん完了ということになる。


俺たちはいったん休憩を取った後に、今後の行動について話し合いを行うことにした。


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