13 閑話 レイモンド・オルストロの待ち時間の画期的解決法(レイモンド視点)
今日は家族一同が会する定期的な食事会だ。
皆忙しいため毎日会えるわけではない。なので定期的にこういった機会を設けている。
今日は王宮のダイニングで昼食会だ。
参加者は父ギルバート王(41)、義母マーガレット(31)、兄フィリップ(21)、義弟オスカー(5)、そして僕レイモンド(18)の五名だ。ちなみに義母マーガレットは現在妊娠中で、もうすぐ弟か妹が生まれる予定だ。
昼食を取りながらそれぞれの近況を話していく。
「ところで、レイモンドはまだシンシア嬢と婚約しないのか?」
父に聞かれた。
……いつも痛いところをつく。
僕は笑顔を絶やさずに答える。
「ええ、まだ彼女の心の準備ができていませんので」
「お前が積極的にいかんからではないのか?」
「あはは、まさか」
むしろ彼女は僕の行動に引いていますよ。これ以上押したら逃げられてしまいます。
心の中だけでつっこむ。
「でも出会ってから八年もたつのでしょう? もう私が陛下と結婚する前からですのよね?」
心配そうに義母が言う。
「そうですね、かれこれ八年になりますか」
「毎週通っているのでしょう? ……それってもしかして脈がないということなのでは……」
「あはは、お義母さま、めったなことを言わないでください。もちろん僕らの心は通じ合っていますよ」
縁起でもないことは言わないでほしい。
「まあ……そうですの、ごめんなさいね」
「それに、彼女は今王立の学校に行くために勉強中なんです。婚約は少なくとも卒業後になりますよ」
「なんと、女だてらに学校にも行くのか。ウィステリア伯のところは色々変わったことをしているとは聞くが……時代は進んでいるのだな」
うーむと父はうなる。
「……では五年後ですの? ……八年待ってさらに五年後……十三年間待つって……色々心配になりませんの?」
信じられないといった様子の義母。
「いいえ、僕たちは愛し合っておりますから時間なんて関係ありませんよ」
皆あきれたように僕を見る。
「シンシアにはシンシアの事情がありますので僕は一向にかまわないんですよ。それに……」
「それに?」
「僕はすでに待ち続ける良い方法を見つけましたので大丈夫なんです」
「どういうことだ?」
父が興味深そうに身を乗り出して聞いてきた。
「ふふ……、つまりもう結婚したつもりになればいいんですよ」
「は?」
ポカンとする一同。
「婚約できない結婚できないと待ち続けるのはつらいでしょう? なら、自分の中ではもう結婚したつもりになればよいということに僕は気づいたのです」
「……」
誰も何も言わない。
「もちろん不埒な行動はしませんよ。でも結婚してからだって毎日会えない日だってあるでしょう? これはそういう通い婚だと思えばよいのですよ。つまり、すでに僕は気持ちの上では新婚なのです」
名案を皆に伝授してしまいました。みんな真似したっていいんですよ?
僕は最高の笑顔でみんなを見る。
「……お前は本当に……馬鹿だな……」
兄があきれた声でそう言った。