ークオリアー
第1章
―通学路にて―
ミーンミンミンミン…
樋口瑛「あー暑っちぃなぁ…なんでこんなに暑いんだよ」
自転車で坂を駆け上がりながら、そんなことを考えていた。
瑛「45度ってもう別世界すぎるだろ…」
「あーもう駄目だ喉乾いた。」
坂を登り終え、売店が並ぶ道に設置されている○oca-Colaの自動販売機の前に自転車を置き、ジュースを選んだ。
瑛「ん?なんだこれ」
見覚えのある飲料の他に、今まで見たことの無い柄のジュースが入っていた。缶ジュースの色は濁った紫色で、とてもじゃないが飲みたいとは思わない。
だが、瑛は好奇心に駆られ、
瑛「買ってみるか…」ガコッ
買ってみる事にした。
プシュッ
缶を開けてみると、中のジュースの色まで同じ濁った紫色だった。だが、今までのジュースと違って花の香りのような優しい香りがする。
CMでも流れていない、見たことも聞いたこともないジュース。それだけで不気味だった。しかし、
瑛「喉乾いてるんだよな」ゴクリ
喉が渇いていた瑛には、そこまで気になる事ではなかった。
喉を鳴らし、そのジュースを飲むと意を決した瑛は勢いよく飲み込んだ。
ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ…
味は見た目とは裏腹な、爽やかなラムネに近い味だった。しかし、蘭の花のような甘い匂いも味となって、変な感覚だった。
瑛「美味しいけど、変なジュースだな」
飲んでみて、改めて瑛はそう思った。そしてふと、腕時計に目が止まった。
瑛「ヤベッ!もうこんな時間だ、急がなきゃ!!」
ジュースを飲み終え缶をゴミ箱に捨てた後、
自転車に跨り、急いで走り去ろうとした。
すると、前方に不可解なものが見える。
瑛「あれ、なんだ?モザイク…?」
モザイクのようなものが、空間に出来ていた。明らかに周りの風景とは違って、ドットの画像の様だった。
それが歩道と自動車道にかけて、大きく「貼ってある」。
瑛は恐怖を感じる。これは、ジュースを飲んで見ている幻覚なのではないか。だから知らないジュースなんて飲むべきじゃなかった、と。
瑛は恐ろしくなり、自転車で元来た道を戻ろうとした。その時、
ペキャッ。と言う音と共に足を滑らせた。それは缶が足で潰れる感覚と音にそっくりだった。
瑛「うわあぁッ!」
確かに缶は捨てたはず。そう思って回る視界の中、足元を見た。
足元には見覚えのない緑の缶が凹んで落ちていた。
頭を打ち付ける直前に瑛が見たのは、眼前にあったモザイクだった。
モザイクは前だけでなく、すぐ後ろにあったのだ。
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