表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/29

12

 西口に到着した。いつものように湖面を見渡したススムは、すぐに異常に気づいた。魚が白い腹を見せて浮いている。それも一匹二匹じゃない。数十匹という魚が、湖のあちこちで死んでいるのだ。

 驚いたススムは水の中に入って行って魚を調べようとして、慌てて思いとどまった。急に、不気味になったのだ。水中に、なにか得体の知れぬものの存在を感じとったのだ。勘だ。

 もちろん、湖は綺麗で透明で、変な物は見当たらない。付け加えてススムは現代っ子で科学を信じている。が、やっぱりオバケみたいなのは恐い。第一だ、ここはふもとから三十分以上も離れているのだ。助けはいない。

 周囲の木々が、風に吹かれてザアザアと葉を鳴らす。今やそれさえ、目に見えない、自分を取り殺そうと狙っている、魔物を無理やり連想させられる。

「もしかして、毒かもしれない」

 わざと声に出した。今のススムには、そっちの考えの方が、むしろ気が軽い。

 釣りはやめて、帰りたくなった。その一方で、ここで退散するのは弱虫だとも思った。ひょっとして、だれかがこっそりと自分を眺めているのかも。それであとで笑い物にされるのは、魔物に食われるよりも嫌だった。

 ススムは震える足で岸を歩き出した。最低でも、湖を一周する。それで妥協だ。

 周囲に生い茂っている背の高い草むらとか、不気味に感じる。真っ昼間なのに、と自分が情けなくなった。

「この、意気地(ジク)無しが!」

 声に出して自分を発憤させる。

 すぐそこに、フナが三匹ほど浮かんでいる。タモ網で全部すくう。

 魚体に刺し傷があった。かなり深い傷。一匹は、完全に身体を貫かれている。

 どういうことだろう?

 探究心が勝った。気が張る。ぐるっと回って、いずれも刺し傷のある魚を適当に拾って、クーラーに入れ。ススムは家に急ぐのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=86315781&si
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ