プロローグ
日常系初めてです
被検体No35
窓もなく、置物も壁も床も全てが白い部屋、そこにはベッドが一つだけ設置されている。
コンコンと誰かがドアを叩く音、何も無い壁が突然開き、白衣を着た男二人が部屋に入ってきた。
「やぁ、調子はどうだい?」
細身で顔のほおの骨が出ている男、身長は180はありそうだ。
首にかけているネームプレートから「奥井」という男であることはわかった。
「ふむ、前よりかは元気のように見える。何かいいことでもあったのかね?」
後ろに控えていた対照的な小太りの男、身長は低めで150くらいに見えた。
遠目であったが、恐らく「痣村」という男であろう。
「今日はね、君にとっていい知らせがあってそれを伝えに来たんだよ」
2人は笑顔で私に語りかけてくるが、当の私は、
いい知らせ?誰にとってのいい知らせだ?
心底どうでもいい、何も考えたくない、ほっといてくれと考えてしまうのだ。
布団を深く被り、寝ようと思う。
その後も2人は何か話しかけていたと思う。
私はひたすら無視をしていたが、飽きることなくずっと。
しかし10分ほど経つと話し声はしなくなり、ドアの閉まる音が空間を反響して聞こえた。
再び静寂が戻った。
私がここに入院してから約1ヶ月、その前のことをほとんど覚えていない、記憶が霞がかっているのだ。
謎の倦怠感が常に襲いかかり、何かをしようとも思わない。
私は一体なんのために生きているのかと問答する。
当然答えが出るはずもない。
いつの間にか声の出し方も忘れてしまったようだった。
私はいつまでここにいるのだろうか、もしかしたらあと10年20年、いや永遠にここで何もせず眠るだけなのか。
一瞬心が締め付けられるような痛みに襲われたが、直ぐに消えてしまった。
私はこのまま消えるのだろうかと思いふけっていたところ、
ドアが勢いよく開けられ、何も無かった空間に音が響き渡る。
さすがの私も急であったので、ビクッと体を跳ねらせた。
一体何事だろうか。
ドアの方向に視線を向けるとさっき来ていた奥井と痣村の姿があった。
表情は同じ笑顔ではあったが、なんだかさっきより怖く感じるのは気のせいではないだろう。
「雨津原天蓋、君を2週間後とある学校に編入させる、そして今日からその準備期間だ。なお拒否権はない強制だ。今すぐ身支度を済ませて、1時間後のカウンセリングに参加するように」
「は?」
奥村は突然口を開いたかと思ったら何やら訳の分からないことを言った。
私はとにかく困惑した、しかしその数秒後には心が落ち着いていた。
私はわけも分からず奥井と痣村に知らない場所へと連行されて行った。
抵抗する気力もないため、連れ去られるがままだ。
一体どこに連れていかれるのだろう、私は考えるのを直ぐにやめた。
だがこの出来事が今まで動くことのなかった私の運命の歯車とガチっとハマってしまったのだ。
これは私が人を知り、大切な何かを取り戻すための物語、
今の私がそれを知る術はない。
仕事中に書きました
だって暇なんだもの。