少女との出会い
一週間に数話ずつでも投稿できればと思っています。
(0番隊隊長とは言ったものの、隊員は1人もいないんだけどね。)
僕は一人で苦笑しながら、ジャイアントボアを討伐した後も、しばらく調査を続けた。
森では普段出現しないようなCランクからBランクの魔物と複数回遭遇し、リュートは怪訝に思う。
普段なら1回遭遇すれば多い頻度であるのにも関わらず、明らかに遭遇する数が多いのだ。
「たしかに様子がおかしいね。とりあえず付近の魔物は一掃したし、一旦報告しに街に帰るかな。」
街に帰ろうとしたその時、ガサッと森の奥から物音が聞こえた。
茂みをかき分け、音のした方向に向かうと、傷を負い、ボロボロの服をまとった10代前半ほどの少女が木にもたれかかっていた。
見た目はボロボロだが、その顔立ちは人形のように可愛らしく整っている。
僕は慌ててかけより、少女に声をかけた。
「大丈夫?」
できるだけ優しく話しかけたつもりだったが、少女は僕を見つけるなり、射殺すような目で見つめながら声を荒げた。
「私に話しかけないで!」
少女はかなり警戒心が高いようだ。そして、弱りながらも油断しようものなら、首を刈り取られると錯覚するほどの殺気を感じる。
これはただ事じゃないね。
「僕の名前はリュート。僕に争う気はないよ。よければ傷の手当をしてあげたいんだけど。」
「うるさい!」
少女が僕の提案を断ると同時に、背中から禍々しい黒色の腕が二本生え、凄まじい速さで僕を襲ってきた。
能力持ちか。この力...Aランクの冒険者程度なら一瞬で負けてしまうね。
僕は少し驚いたが、右に少し体を移動させることで、こちらに伸びてくる腕を冷静に躱した。
少女は、僕が腕を躱したことに驚いた様子だったが、僕を排除するべく、連続して腕を伸ばしてくる。
しばらく攻撃をかわしていると、少女は乱れた息を整えるために動きを止めた。
力は強いけど、どうやらまだ能力を使いこなせてはいないみたいだ。
きっと能力を発現したばかりなのだろう。
まずは落ち着いて話をしないと。
「君、強いね。でも本当に争う気はないからさ。話を聞いてくれないかな。」
僕は根気強く提案するが、少女は相変わらず鋭い目つきで僕を睨みながら提案を拒む
「私の能力を見たでしょ。私はこの能力のせいで村のみんなから化け物と言われ、村から追い出されたのよ。だから人間は信用できない。争う気がないなら、私の前から消えて。」
なるほど、それでこの体の傷か。それに、傷ついているのは体だけだはないみたいだ。
これは話が通じるような状態じゃないね。
今日のところは一旦引いて、また様子を見に来よう。
「わかった。今日は帰ることにするよ。でも、そんな傷だらけの恰好のまま放っておくわけにはいかないからさ、回復ポーションだけ置いていくね。」
僕はカバンから回復ポーションを取り出すと地面に置いた。
そして、少女を気遣うようにゆっくり後退する。
「君は強いから大丈夫だと思うけど、森の魔物の動きが活発になってる。だから、気を付けて。夜は木の上とか洞窟の中とか、安全な場所に隠れるんだよ。」
とりあえずこのポーションをのんでおけば、体の傷は完璧に癒えるだろう。
そう言い残すと、僕は木に飛び乗り、木から木へと飛び移りながら移動を開始した。
この世界の人間の大半は魔法を使う魔法使いである。しかし、1部のものが魔法とは別な能力に目覚めることがある。
その能力は、人によって様々であるが、強力なものが多い。そのため、あの少女のように化け物扱いされるケースも少なくない。
リュートもその一部の人間の1人であるため、少女の苦しみが理解できた。
人よりすこし強力な力が使えるからって、化け物扱いをしていいはずがない。
それも、あんなか弱い少女を。
僕をアイギスに入れて助けてくれたギルドマスターのように、今度は僕が助けてあげないと。
僕は一人意思を固めると、王都に帰り、森での魔物の異常発生の報告を行う。
少女のことがばれると、アイギスが強制的に保護しようと動き始めるだろうが、今の少女の状態を見るに、それが正しい事とは思えなかった。
なのでリュートは少女のことは報告せず、魔物の異常発生のみの報告にとどめた。
魔物の異常発生については引き続きリュートが調査することとなったため、リュートは少女を救う方法を一人考える。
あの子は強かったけど、まだ能力を使いこなせていないようだったから、まずは能力の制御を教えるところからかな。
ひとまずの方針を決めたリュートは、翌日も少女に会うこと決意し眠りにつくのだった。