最強の男
どうも初めまして。すけと申します。読専だったのですが、この度思い切って見切り発車で作品を投稿してみることにしました!
豆腐メンタルですので、温かく見守ってくださるとうれしいです。完結できるように頑張りたいと思います。
魔物と戦う人材を育成、管理するために国が運営している組織『アイギス』
その王都支部に僕は突然呼び出された。
「あの、僕なにかやらかしました?」
アイギスに所属して2年になるが、ほとんど仕事してないから、そろそろ仕事しろって言われるのかな。
この世界では珍しい黒髪黒目を持つ柔和な顔立ちをしている20代前半ほどの青年リュートは、突然に呼び出しに戸惑っていた。
もしかして首になっちゃうとか?いや、さすがにそれはないか。
「いやいや、とんでもない。実はリュートくんにやってもらいたい依頼があるのですよ。」
目の前のいかにも優男な雰囲気を出す細身な30代ほどの男は、うっすら額に汗を浮かべながら低姿勢でお願いをしてきた。
「依頼ですか?僕に直接依頼なんて珍しいですね。」
「ええ、本来は1番隊隊長のリオンくんにお願いするはずだったのですが、彼もなかなか忙しい身なのでね。」
アイギスという組織は1番隊から5番隊までの隊に別れており、その数字が若い順に優秀な人材が割り振られていく。つまり、1番隊隊長がアイギス最強の存在というわけだ。
その1番隊隊長のリオンにお願いするほどの依頼となると、並大抵な依頼ではないだろう。
「リオンの代わりですか。それはなかなか荷が重いですね。まぁ、最近あまり働いてなかったですし引き受けますよ。」
僕が引き受けると、男はほっと息を抜き、安心したような表情をうかべた。
「ありがとうございます。助かります。しかし、依頼内容もまだ説明していないのに、引き受けていただいてよろしいのですか?」
「まぁ、リオンにお願いするような依頼だったら、僕くらいしか受けれないでしょうしね。」
僕は苦笑して、男の説明をうけるのであった。
◇
「どんな大層な依頼がくるのかと思いきや、森の調査とはね。」
話を聞いてみると、どうやら森に住まう魔物の動きが活発になっているらしく、その調査を依頼したいということだった。
この王都には10万人ほどの国民が暮らしており、森の魔物は、冒険者ギルドや王国の兵士によって、定期的に討伐されている。
そのため、国から離れすぎない限りは、比較的安全な森のはずである。
原因がわからない以上は下手に若手隊員とか冒険者ギルドの人に任せずに、僕みたいな何があっても問題ない暇な人間にやらせたほうが無難ってことかな。
冒険者ギルドの人って気性も荒いしね。
魔物を討伐する組織はアイギスの他に、冒険者ギルドが存在する。
アイギスは一般教養を含む厳しい入隊審査があるが、冒険者ギルドでは、ある程度の力があれば誰でも入会することができるため、アイギスより多くの人間が所属している。また、育成するような仕組みが存在しないため、自分の力だけでのし上がったものは調子に乗りやすく、威張るものが多い傾向にある。
「ひとまずさっさと終わらせて早く帰ろう。」
森の中を30分ほど進むと、異様な気配を感じた。
僕は、一瞬で戦闘態勢に入ると、気配を感じた方を注意を向ける。
すると、木々の奥から10メートルほどの巨体をもつイノシシ型の魔物、ジャイアントボアが現れた。
ジャイアントボアは興奮しているようで、雄たけびを上げている。
そして、僕を発見すると、一心不乱に雄叫びをあげて突っ込んできた。
「Aランクの魔物か。こりゃ、やっぱり若手に任せなくて良かったな。」
Aランクの魔物とは、Aランクの冒険者が10人で倒せるレベルの魔物を意味する。
普通なら一人で戦うのは自殺行為に等しいのだが。
僕は冷静に目の前の魔物を見据える。
何も考えず、突っ込んでくるだけじゃ僕には勝てないよ。
僕はジャイアントボアに向けて手のひらを伸ばす。
そして力を込める。
「潰れろ。」
その1言とともに、ジャイアントボアの巨体が何かに押し潰されるように地面に倒れる。
そして、轟音が鳴り響くと、半径20メートルほど半円型に地面が抉れる。
ジャイアントボアは、そのまま骨がへし折れ一瞬にして息絶えた。
死体はそのまま魔素となり、空気にとけこんでいく。
「僕も伊達に0番隊隊長を名乗ってないからね。」
この男が対魔物ギルドの真の最強ということは、組織の1部の人間を除いて誰も知らない。