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水晶の迷い道 7

「ルース、それ欲しかったらあげますよ」

「いいの!」

「良いんですかい?丹精込めて作られたのに簡単にあげちまって」

「自分で持ってってもいいんですけど、喜んでくれる人が居るならその人が持ってた方が気分が良いんです!あと、一応見本としても使ってください」

「ありがとう!」

「ありがとうございます、しかし良く思いつきましたな、水晶の表面に彫刻したりするのは普通ですがまさか中を彫り込むとは、御見逸れしました」


「ピキッ」


 音の方を見ると早速ミュフィーさんが早速チャレンジしていたがクラックが入ってしまったようだ、やはり、自分のは運よく上手く行ったんだろう。にゃ~と弱く鳴きながら肩を落としているので、頭を撫でて慰めたい感情にかられる。

 見るとちょっと太く彫ってしまい失敗したようだ。


「にゃ~、難しいにゃね」

「もっと細く彫らないと割れちゃうみたいですね、もっといろいろ試せば面白い物も作れるかもしれませんから頑張ってください、お父様、そろそろ今日来た本来の目的をお話ししませんか?」

「おっと、そうだったな」

「何かあったんで?」


 お父様が教会での話をした、ただし女神さま絡みの話は私の夢の話しかしなかった、たぶんあんまり話すと良からぬものを近づける原因になりかねないからだろう。


「と言うわけでな、今度試験を受けて合格すればそのまま入学となる」

「僕も行く!」


 一番早く反応したのはルースだった。


「ルースにはちょっとはやんじゃないかな?」

「お嬢、そんなことは無いですぜ、そろそろ何所かで修行でもさせようかと思ってたんでさぁ、ルースが行きたいってんなら俺は喜んで送りだしますぜ」


 記憶にある限りルースは一歳年下で小学生だと3、4年生になるが、入学に年齢制限は無いのだろうか?そういえば入学の試験はどんな形式なのだろうか?


「お父様、ルースは入学の条件を満たしていますか?あと、入学の試験はどの様な物なのでしょうか?」

「基本的に犯罪者や重い病気等でなければ試験は受けられて、それに合格すれば入学できる、試験の内容は、魔力量、体力をはかるのが基本試験でまず落ちないだろう、入学した後で学科ごとの試験が必要な場合も有る。入りたい学部によって変わるが、学ぶ為だから殆どが適性試験みたいなものだから大丈夫だろう、高度な事を教えている学科には相応の試験があると聞いている」

「なるほど、そうだったのですね。あとは、お兄様と同じ寮暮らしとなるはずですが、ルースは大丈夫でしょうか?」

「僕は大丈夫だよ、お母さんの代わりに家のこと殆どやってたから、むしろ僕が居なくなったらお父さんたちが生活できるか心配なくらい」


 念のため言っておくがルースのお母さんはまだ生きていて、宝石の仲買人をしているので良い宝石が出たら直ぐにそこに向かう、その為ずっと宝石が出た場所へ移動しているから月に数回しか帰ってこない。


「あら、それなら大丈夫だね、あとは学費とかは」

「それなら私が出そう」

「旦那、さすがに悪いですし、しっかり給料は貰ってるんでと学費やその他に掛かる費用位は出せます」

「いや、これは投資だ、今後、私の息子が店を継いだ後も優秀な人材を残さないといけないからな」


 流石に半分は方便だろう、しかし優秀な人材を育成しようと言うのは本当のはずだ。


「では、私とルース二人で受けるのですね、うっかり落ちないように体力を付けないと」

「僕は、魔力量を鍛えたほうがいいかな?」

「それならルースも一緒にクリューデさんに教えて貰いましょうか?」

「大司教様に?」

「そうだよ、慈善事業で便利な魔法を教えるついでに成るけど、私にはもっと教えて貰えるから一緒に教えてもらえるよきっと」


 クリューデさんなら教えてくれるだろう。

 宝石のことを学ぶ為に時々お邪魔すること等を話し終わった頃に、午後の2回目の鐘が鳴り、外で馬の世話をしていたヘレンさんが呼びに来たので工房を後にした。

 屋敷に帰り、そのまま夕食を食べながらお母さまに今日のことを報告した、旅には反対するかと思ったが、賛成のようだった。


 「話したこと有ったかしら?私たちとグスタフは元々冒険者だったのよ、元貴族の三男のお父さんに、宝石細工師に成りたかったけどお金が無かったグスタフ、そして、口減らしに売られそうだった私、良いパーティーだったわよ、途中でルイビア、ルースのお母さんも加わったわ、ダンジョンや依頼で入った坑道で集めた宝石や貴金属をルイビアが鑑定して、グスタフが彫金や宝石を加工して、私たちが売ってたのよ、それが上手く行って今が有るんだけど昔は・・・」


 お母さまの長い長い昔話が始まろうとしたとき玄関から勢いよく走ってくる音が聞こえてきて食堂の扉がバンッ!と開け放たれた。


「リタぁあああああああああああああああああああああ!」


 お兄様のご帰還であった。

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