水晶の迷い道 6
「いいアイデアですか?そんな直ぐには・・・」
そう言いかけてルースから借りて手に持っていた水晶を見る、透明な水晶の中には少しクラックが入っている、何か閃きそうになるが、出てこない。クラックじゃなくて、何かあったはずなんだけど。
「練習用の水晶ってまだありますか?」
「それならたくさん有りますぜ、何か思いついたんですかい?」
「もうちょっとで何か思いつきそうなので水晶を実際加工してみようかと思ったんです、なるべくクラックの入っていない透明な物をお願いします」
ミュフィーさんがさっと動いて部屋の外からこぶし大くらいの頭が折れた水晶をもってきてくれた。お願い通り折れている部分の近く以外にはクラックは入っていないものだった。お礼を言いつつ割れている部分で指を切らないように受け取って、早速スキルを使って加工してみる。
「スキルで加工する場合の注意点など有りますか?」
「[カット]は込める魔力量で切るときの凹凸や切れる範囲が変わるのと、クラックが有るとそこから割れる場合もありますにゃ、[研磨]は魔力で削り方や平面や曲線を変えれますにゃ、だだ削って行くだけですが削りすぎに注意してくださいですにゃ、[バフ]は研磨と同じですが細やかに磨けますにゃ。魔法で自分の指を切ったり削ったりはしないにゃいから安心してくださいにゃ」
丁寧に答えてくれる、優しい人だ、本当に気難しいのだろうか?ピコピコ動く耳と尻尾を触ってみたいという感情を抑えながらしっかりと聞き、魔力の扱い方も教わった。勝手に触ったらすごく怒るみたいけど頼みこめば触らせてくれるかな?
「それでは始めます」
大人の拳サイズなので少し手に余るがしっかり持ちまずは両端を[カット]で切っていく、入っているクラックは小さいので気にする必要はないだろう、魔法を使うと切断する範囲や魔力量を何となく決めれるのがわかる、切断のやり方は刃を作って切り進むのではなく、魔力の薄い膜のようなものを形成してそこに切りたい場所を通して切る。パキッという音を立てて切断された、多少凹凸が有る位でクラックも入っていない。反対側も同じようにしていく。これで綺麗な六角柱ができた、次に[研磨]で切断した表面と六角柱の面に対する上下の辺を削っていく、こっちは魔力で出来た板の様なものに水晶が触れると削られていく、また辺を削るのは、そのままの90度では指を切る可能性が高いからと多角形にすることで光の反射で美しく見せることができる、最後に[バフ]だが聞いた通り[研磨]と同じだった。・・・よしできた!
初作にしてはなかなかいい出来だろう、前の世界よりも格段に楽だった、それでも体感で一時間以上経っていると思う。それとこれらに消費したMPは体感で100ほどだった、確かに一部工程はスキルで行って残りは手作業というのもうなずける。他の人のMPの総量は知らないが日に幾つも作業する場合は一回でMPを多く消費するのは得策ではないのだろう。自分で納得せずにプロが居るからどの位の出来か聞いてみよう。
「取り敢えず練習で作りましたがどうでしょうか?」
作業台から振り返り、みんなを見ると目を丸くしていた、いやお父様だけは何と言うか得意げな顔をしている。取り敢えず磨き上げた水晶をロバーナさんに近づけると無意識なのか普通に受け取りじっくりと観察している、ほかの二人は水晶を目で追っている。そしてようやくロバーナさんが口を開いた
「お嬢、ほんとに初めてですかい?」
「ええ、初めですよ」
こっちの世界で魔法を使っては初めてなので嘘は言っていない
「それにしたったてスキルだけでここまでするとは、思いもよらなかったですぜ」
「リタ姐スゴーイ!」
「磨き上げも良くできているにゃよ」
評価は上々の様だ、そしてお父様は鼻が伸びるんじゃないかと言う程のドヤ顔だった、完全な親バカだなこれ。それはともかくこれで終わりではない、先の作業で何となく出来そうな事を閃いていた。前の世界では専用の機械が必要だったがこっちでは魔法が有る。
「では、これからさっき閃いた事を行いたいと思います」
ロバーナさんから水晶を返してもらって両手で包み込むように持って[カット]を発動させる、切断する膜は透過した後から任意でカット出来るので透過しただけでは切断されない。膜の位置を水晶の真ん中まで持ってきて一つのイメージを持って切断する。
水晶の真ん中に猫の形をした半透明の白っぽいシルエットができていた。
「成功した!」
そう、クリスタルの3D彫刻である。ただし、あくまで平面のシルエットで元の世界の物のように立体ではない。立体感を出すには幾層か作らないと駄目だろう。そう思って続けて立体感が出るように中央のシルエットから前後に[カット]を行っていく。
真横や上下から見たらただのスジだが、正面から見ればネコが前足をピンと伸ばして座っている姿が見える。
魔法に改良を加えて行けば元の3D彫刻の様に極小の点でもできるかもしれない。どの角度から見てもクラックは入って無い、いい出来だろう。
「できまし・・・ヒャッ!!」
振り向こうとすると四人の顔が目の前にあった、びっくりした、心臓に悪い。
「え~と、どうでしょうか?」
「これは売れるぞ!」
「お嬢どうやったんですかい!」
「リタ姐見せてみせてぇ~」
「こんにゃ方法が有るにゃんて思いもよらにゃかったにゃぁ~」
四者四様の反応を見せてくれる。とりあえずルースに水晶を手渡して、お父様とロバーナさんとミュフィーさんにやり方を説明しておく、これに使用する魔力はかなり少ないのである程度量産も出来るかもしれない、今回は割れなかったがやり方によっては割れるかもしれない事も伝える。
ルースは受け取った水晶をキラキラした目でじっくり見ていた、そこまで気に入ってくれたならプレゼントしよう。
雪も溶けたんでちょっと鉱物探してきましたが、まだめっちゃ雪残ってたorz
しかし、知らなかった鉱物の情報GET