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翡翠の守護書庫 23

 元の世界での大学の研究室で知り合った酒好きの友人Sからウイスキーやブランデーは錬金術から出来たのだと聞いたことが有る、錬金術師の一人がふと蒸留器に醸造酒を入れた事が始まりだとか、元の世界では蒸留技術は錬金術の偉大なる成果の一つとして数えられるらしい。


「ハイ、出来ましたのが単式蒸留器です、錬金術を学び実践でいく上で実験器具を自作しなければならない機会も少なくありません、こうやって自ら必要な物を作る技術も研究者には必要に成ってきます。今日はこんな難しい事じゃなくて、皆さんにやってもらうのはこれと同じタイプの蒸留器を加熱して精油を生成して貰います、出来た精油は持ち帰っていいので頑張ってくださいね」


 ああ、だから女性が多いのか、どこの世界でもいい香りは女の子を引き付けるらしい。あと実験器具の自作か、大学のカリキュラムでガラスの加工技術を付けるためにトンボ玉(ガスバーナーで鉛ガラスを溶かして離型剤を付けた棒に巻き付けて作るガラス玉)を良く作ったっけな。


「今の一連の錬金スキルを見て貰って既にスキルを獲得した人も多いと思いますけど、まだ獲得できなかったり保有魔力量的に発動できない人は呼んでください、追加の道具を持ってきますから」


 不思議なことにスキルは見ただけでも習得できる、とはいっても基本的には一度見ただけでは基礎の基礎、錬金スキルだと[加熱]位しか獲得できない、より多くのスキルを使えるようになるにはスキル別で多くを学び深い理解が必要になってくる。あくまで基本的にだから、たまに見ただけで多くを理解したり、ほかの分野で学んできた事で関連するスキルを得る場合もある。


 錬金をしていたお姉さんの後ろから数人が台車を使って作られた蒸留器と同じ形の物がテーブルに一人一台置かれていった、螺旋状の管の部分はそれがすっぽり入るように水が入った容器が置かれている、これで管を通った蒸気を冷却するんだろう。その管の出口にはガラス製の口の狭い三角フラスコの様な物が付けられている口の部分には切込みの入った栓が付けられていている。切込みが無いと蒸気が通らないから当然か。[加熱]が使えない人にはアルコールランプ見たいなものを使うらしい。

 私の前にも持ってきてくれて、幾つかの乾燥した草花を数種類を出されてどれを蒸留するか聞かれたので見てみるがアレが無いな。


「え~と、クスノキってありますか?無ければ他のにしますけど」

「楠?ちょっと待ってね」


 いそいそと歩いていき別の人に話しかけてこちらを指さしていている、話掛けられた人は何所かに小走りでかけて行き、もう一人はこっちに戻って来た。


「今採ってきてもらうからちょっと待ってってね」

「ありがとうございます」


(はて、採ってくる?持ってくるじゃなくて?)

 疑問に思いながらもルースたちと喋っていると楠を持ってきてくれた。


「お待たせ、だけどもうちょっと待ってってねいま細かくするから」


 持ってきてくれたよ青々とした葉が付いた枝ごと、聞き違いじゃなかったか、早く持ってきてくれたから近くに生えてるんだろうけど、枝ごと持ってこなくても・・・


「え~と、手伝います」


 魔法の箱から小さいナイフを取り出して大雑把に枝から小枝を切り、葉っぱをちぎり、それをある程度細かく刻んでから[アクアドレイン]で軽く乾燥させてた。蒸留器の下の容器に水を入れ、水には触れない様に細かい穴の開いた板の上に葉っぱを載せて蓋をして準備完了。


「皆は始めてるのね、それじゃあ私も、[加熱]」


 真鍮製のため中は見えないから底辺に加熱を集中してみる、何となく温まっている手ごたえあり、直ぐにコトコトと音がして沸騰したみたいだ、あとはしばらくキープするだけだ。


「ルースは何にしたの?」

「僕はラベンダーだよ、落ち着くいい匂いだったから、リタはなんでそれにしたの?確か防虫剤が出来るって聞いたことが有るけど」


 楠から採れる樟脳とは元の世界の現代でも天然の防虫剤として使われるほど効果の高い防虫剤だけど私はその為に樟脳が欲しい訳ではない。


「作りたい物が有ってね、それの素材の一つがこれなのよ」

「何をつくるの?」

「出来てからのお楽しみ」

「え~」

「材料もそろってないからそれに容器も・・・容器・・・ガラス容器・・・」

「どうしたの?」

「透明で気泡が入って無い薄いガラス容器ってあるのかしら?」


 思い起こせばこれまで見てきたガラスは分厚くてうっすらと濁って気泡が入ったものしか無かった、窓やガラス瓶、精油の受けに使われてる三角フラスコみたいなのまで全部そういったガラスでできている。


「ガラスってこういう物なんじゃないの?あ、貴族や大商人の人から大きな水晶から食器や何かの容器を作って欲しいって依頼が来たことは有ったよ」

「そう・・・、透明で綺麗なガラスの方が見栄えもいいんだけど・・・それにこの蒸留器だって総ガラス製なら中の様子も見える様になって良いと思うけど」

「ガラスだと火にかけたら割れちゃうんじゃない?」

「石英ガラスなら割れないと思うけど」

「その話詳しく!!」

「ワッ!びっくりした!」

「あ、ごめんなさい、すごく興味深い話が聞こえてきた物でつい、私はミレイ、錬金術研究所所属の4年よ」

「え~と、一年のリタです」

「土壁の魔女さんでしょ」

「よ、よくご存知で」


 もしかして知ってたからわざわざ楠を採ってきてくれたんだろうか?


「そりゃそうよ、今年の大物新入生筆頭だもの、そんな事より、そのセキエイガラスに付いて詳しく教えて欲しいわ」

「そんな事じゃないんですけどね・・・はぁ、考えないようにします。で、石英ガラスですけど単純にガラスの原料の一つの珪砂だけで出来たガラスの事です、それだけで作られた物は普通のガラスよりも熱や衝撃にに強くなるそうです」

「成るほど、けどうちとガラス工房が協力して前に色々試したときに珪砂だけで作ろうとしたけど一向に溶けなかったわ、最終的に魔力炉で試したら何とか溶けたけどコストが掛かりすぎて量産どころか少数生産も厳しかったのよ」


 魔力炉ってのが有るのか、電気炉の魔力版みたいなものかな?それよりも普通にやって溶けないってことは物理特性は地球と変わらないのかな、だったらあれを混ぜて作ればいいはず。


「そうですか、だったら普通のガラスを作る時にホウ砂を混ぜましょう」

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