翡翠の守護書庫 18
図書館に行きたいんだけどなぁ、けど女神様に最近挨拶してないな、お祈りがてらちょっと近況報告もしておこう。
礼拝堂に戻り、神父さんは奥に鎮座している女神像の脇に置いてある講壇に立ち聖書を開き朗読している、私は並べられている長椅子の最前列に腰かけお祈りをしながら[神託]を発動させる。
「ご無沙汰して居ます、女神様」
「お久しぶりです、よかったです2か月も音沙汰がなかったので嫌われたものと思っていましたよ」
「嫌ってなんかいませんよ、ただ色々していたので、すいません」
言い訳にしかならないが、王都に居る間は魔法や体力や筋力を付ける為のトレーニング、それ以外の時間は魔法を使った効率的な鉱物探しの方法について思考していたので暇がなかった。
「いえ、楽しくしているのならいいのです、生活しているうえで何か困ったことなどは無いですか?」
「困ったことは無いですけど、気に成ったことが」
「何でしょう?」
「幾つか私の元の世界にあったものと酷似した物が有るのですけど今はどれ位の人が居るのですか?」
「今はあなただけです、基本的に一人が生きている間に二人目のあなたの居た世界の人が来ることは有りません、色々制約が有るんです。あなたの前の人はあなたの今居る都市を興した人ですね、元々いた時代はあなたと殆ど同じで、こっちの世界だとざっと80年ほど前に成ります。確か制服の有無について等、妙な事を聞く人でしたよ」
制服・・・妙にスペックが高いと思ったけどなるほど溢れんばかりの情熱で出来ていたのか。それより、元の世界
の人は居ないのはちょっと残念。
「なるほど、変わった人も居るんですね」
「・・・ソウデスネ」
微妙な間が有ったけどなんでだろうか?
「後、聞きたいのがどれ位元の世界の知識を広めて良いですか?特に採掘や精製等なんですけど」
「大体の知識はもたらして貰って構いませんけど、原子爆弾等の広域に長期にわたって影響を残すものは絶対やめてください」
「流石にそんな知識は無いですよ、とりあえず問題が有りそうだったら相談します、それか注意勧告をして貰えれば即刻中止します」
「その様にお願いします、では、そろそろお話を終わらせた方がいいですね」
そこそこの時間話していたし別に[神託]中は時間が止まってる訳ではないのでお祈り姿勢のまま不動を貫いている訳だ、これ以上動かないのも怪しまれるかもしれない。
「そうですね、また何かあったら連絡させてもらいます」
「はい、また、あなたの人生に幸多からん事を祈っています」
通信じゃなくて[神託]終了、何となく繋がりを感じなくなった気がする。確認することは確認できたしちゃっちゃと図書館に行こう。
目を開けると同時に神父さんの朗読が切の良い所で終えたので、お布施を渡してから出るために話しかけた。
「神父さん、こちらをお納めください」
財布から金貨を1枚取り出し渡した。
「こんなにですか!」
やっぱり多かったみたいで驚かれてしまった。
「お気になさらないでください、この都市に来る道中で捕まえた盗賊の懸賞金ですので」
「やはり小さくてもあの大司教様の使者と言う事ですね」
「あの?私はあくまで手紙を届けて貰うように頼まれただけなので使者ではないですよ、魔法を教えてて貰ったりしましたから師匠と言った方が一番近いかもしれません」
「そうだったのですか、と言う事は知らないのですかあの伝説を」
「伝説?」
この後語られたのはクリューデ=カーフェルンの数々の武功だった、有るときは過激派の魔人教を一撃の上級魔法を持って瓦解させた、大規模な魔物の襲撃を何日も防ぎ切ったなど様々な逸話、大司教に成る前は敵対した者が灰燼に帰す事から灰燼使徒などと呼ばれてたそうな。で、そんな人からいきなり手紙が届いたから何か気付かない内にやらかして仕舞ったのかと思い、最悪のケースを考えながら手紙を読むと逆に強力な人材が来たことが分かったので百面顔していたとのこと。
これまでの印象とは真逆だ、虫も殺さないような信心深い?人と言う印象しかなかったが違う様だが、そういえばやたらと攻撃魔法のレパートリーが多かった気もするし、たまに高位の冒険者があいさつに来ていたりもしていたので心当たりは無いことは無い。
「今の役職に成ってから大きな事件や魔物の動きもないので若い人は知らないのも仕方ないのですから」
はて、そうなるとクリューデさんって何才だろうか?若く見えるけどもしかしたら3 ゾクッ!! 急に悪寒がした・・・考えないようにしよう。
「面白い話を聞かせていただきありがとうございます、そろそろお暇しますが手紙にも書いてある通りちょっとなら回復魔法も使えるので何かあればお手伝いします」
「ええ、その時はお願いします、アルフェンフリーデ様の祝福が有らんことを」
祈ってくれたのは有り難いけど本人に祈って貰ったとは言えないなぁ・・・




