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翡翠の守護書庫 16

「皆さんよろしいですね?」

 どのように壊れるか分からないので破片が飛んでも大丈夫なように他の人は全員物陰に避難している。私には加護があるから大丈夫だろう、それにスキル的にそんなに飛び散らないと考えている。

 採掘スキルを発動したら手に持ったウォーピッケルの先端に見え無い薄い膜が張った様に感じる、魔力の消費は感じられないから当てたときに消費されるのだろう。

 ミスリル鉄合金は最初にあった位置に戻してやや斜めにして立て掛けてあり、私はその目の前に立ち剣道の上段の様に構えそのまま真っ直ぐ中心に向かって振り下ろす、


コォーン!


 当たった瞬間に軽快な音を立てたが、ピッケルの先端は合金の表面に留まり少しも抉ったり欠けたりはしてない、後ろから「やったか!(防いだか)」と聞こえてきたので言っておこう「やってない」

 ピッケルの先端、当たっている場所からゆっくりとクモの巣状のヒビが入っていき端までヒビが届いた瞬間にガラガラと崩れ落ちた。


「どうでしょうか?」


 物陰から出てきたマーテル主任に問いかけるが、私の横を抜けて崩れ落ちているミスリル鉄合金の破片を拾い上げじっくりと見ている。


「この砕け方だと素材が均一でなかったのでは無く単純にスキルに負けたか?とすればミスリルをもう少し多くするかそれとも・・・」

「マーテル主任さん、聞こえていますか?」

「ハッ!おっとすいませんつい考え事に没頭してしまいました、ここまでしっかり破壊して貰えれば研究も進みますよ、ありがとうございます」

「喜んでもらえて何よりです、所で割と簡単に壊れちゃいましたけどいいんでしょうか?あの時のミスリルの的もですけど私じゃなくても多少時間がかかっても壊せそうですけど」

「ああ、確かにこのくらいなら壊せる人も居るだろうけど、これに防御系の魔法を掛けるとちょっとやそっとの上級魔法では壊せないよ、元々が硬く壊れにくく成るように我々は素材や形状の違いなどを比べより強固な物を研究してるんだ」

「なるほど」

「では次は魔法で」

「先生~すいませんがぁ~次は魔石研にぃ~行かなくてはなのでぇ~」

「む、そうか残念だけど仕方がない、基本的に放課後は誰かしらここに居るはずだからいつでも来て良いからね、報酬は今回の分からしっかり報告しておくよ」

「はい、ありがとうございます」


 素材研を後にして魔導研へ向かったのだがいささか遠い位置にあったので学内馬車を利用して移動した。建物は素材研のようなものではなくやや大きいレンガ積みの建物だった。

 素材研の時の様に伺うと、素材研とは違いパタパタと軽い足音がしてガチャリと扉が開いて、中から犬系獣人女性が出迎えてくれた。

「いらっしゃい、副会長ちゃん。あら?そちらは?」

「以前~お話していた~リタ ラインバースちゃんです~」

「あらあら、来てくれたって事は仕事を受けてくれるのね、嬉しいわ。私はシューヌ宜しくね、私は教員じゃ無くてここの諸々を管理しているの、宜しくね」

「はい、よろしくお願いします」

「それじゃ客間まで案内しますね」


 素材研と違い、しっかりと整理整頓されていて廊下には何も置かれてない、いや、観賞用の、花とそれを入れるための花瓶が窓際に置かれている。客間まで案内され、シューヌさんがここの主任を呼びに行ってくれて、待つことしばし。


「待たせた」


 低い声を響かせて入ってきたのは強面の男性だった、こう言うのを人を何人か殺したような顔と言うのか・・・怖い!


「あなた、もう少し長文を喋らないと怖がられるって言ってるでしょう、もう、ラインバースちゃん・・・リタちゃんで良いかしら?、この人こんな見た目で、必要最低限のことしか喋らないうえに、ドスの効いた声でだけど、虫も殺せないような性格だから安心して良いわよ、あと、研究内容について語るときは十分に話すわ」

「え~と・・・よろしくお願いします」


 何はともあれ、二人も腰掛けて、お仕事の内容確認だ。


「魔石について知ってることは?」

「聞きかじった事ですが、元々の鉱物が魔力溜まりに長く晒されているとその鉱物も魔石になると、魔獣から採れる物との2種類で、魔石から魔力を取り出すことが出来、魔道具やスクロールの材料として使われる、私が知っているのはこのくらいです」

「間違ってはない、付け足すが、魔石そのものにも魔力を集めて溜める性質があるが使う内に劣化していき最後には使えなくなる、それらの特性は魔石の品質により上下する、また、魔獣から採れる物は差が大きいため一概には言えない、しかし、金属系の魔石では魔力の放出量と蓄積速度が高いが溜めておける魔力は少ない、結晶系の魔石は金属系の真逆に成る」

「放出量と溜まる速度は遅いけど溜めておける量は多いと」

「そうだ」

「他には何か無いですか?」

「ふむ、どのタイプの魔石も魔力の収束を助けて練りやすく成るから魔法使いにとってはかなり助けになるはずだ、あとは、過去の文献で、魔石から魔力の回復をしようとした試みもあり、最大近くまで溜まっている魔石だと触っていると回復量が増える、このことから粉末にした水晶の魔石を飲んだが一日中トイレにこもるだけだったという記述もある」

「なるほどなるほど」

「あなたが冗談言うなんて珍しい事もあるものね」

「過去の研究レポートにあった物だ」

「そろそろ~お仕事の内容を~確認させて貰っても~?」

「仕事は簡単だ、魔石を作って欲しい、水晶等の魔石を作ることが出来る」

「本当ですか!!!」

「う、うむ、本当だ、エーテルと言う魔力だまりに産出する液体に水晶や石英を入れると溶け出して、魔力を込めると水晶が再結晶化する、再結晶化し始めたらしばらくは魔力が無くなるまで、結晶が育ち続ける、この作業をしてもらいたい、大体この大きさになるまで育ててもらればいい」


 懐から取り出した魔石は親指より大きいほどの水晶だ、魔石は初めて見たけどやや白く濁っていてミルキークオーツみたいだ、所々虹色に淡く光っている。


「これが大体平均の品質の物だ、これより多少小さくても良い」

「これは魔力の込める量で変わってくるのですか?」

「いや、魔力の量はある程度、最低でも50出来れば100は欲しいが、重要なのはイメージだ」

「イメージですか?」

「うむ、イメージせずに作ると群晶、細かい結晶が多く出来てしまう、大きく1つの物にしようと考えながら作ると良い」

「解りました」

「リタちゃん、これが小樽に入ったエーテルで、こっちが水晶の木っ端、そして魔力を集めやすいツボ、2つをツボに入れれば直ぐに溶けるから溶けきったら魔力を流してね、寮でやっても良いけどどうする?一日の終わりに魔力残った魔力を入れるのが良いと思うし、大きく成ったら持ってきて貰えば良いのだけど」

「そうですね、それでは持ち帰らせて貰って量で作って見ます」

「解ったわ、じゃあ、重いからこれを寮に届けさせないとね」


 一つ一つは持てなくは無いが全て持って行こうとしたら大変だろうが私にはこれがある。


「大丈夫です、マジックボックスを持っているので渡してもらえれば」

「あら、それならもう入れちゃっていいわよ、あと、その量で何回か作れるはずだからね」


 マジックボックスに三つともしまいこんだ、壺がそこそこ大きいく一番大きい仕切りに入ったがギリギリだった。


「質問は」

「どれくらいであれくらいの魔石ができるのでしょうか?あとエーテルは直接様っても大丈夫ですか?」

「人によるが大体三日位が目安だ、エーテルに毒は無く触ってもすぐに離れる、ほかにはないか?」

「今のところ特には有りません」

「そうか」

「本当ならこの研究所の見学もしてもらいたいんだけど時間も時間だからそろそろ寮に帰った方がいいかしらね、魔石が大きくなラなくても3日くらいで一回持ってきて貰えるかしら」

「分かりました」


 魔石研を後にし寮に帰って来た、夕食は露店で売っていたサンドイッチだ。部屋に戻りレイアに今日あったことを話つつ魔石三点セットを取り出して邪魔にならない様に部屋の隅に壺を置いて水晶片をシャラシャラと入れて、エーテルの入った小樽の上部の2つの蓋をキュポッと外し壺に入れていく。混ぜなくてもすぐに溶けだしあっという間に水晶は解けていった。

 さて、後はイメージしながら魔力を込めるだけだけど、イメージ化どうしようかな?形をイメージする?否、分子構造からイメージしてみよう、水晶はSiO2(二酸化ケイ素)と表現されるが実際に水晶を構築しているのはSiO4となっている。Siを中心として四つのOが三角錐の様に集まっていて、それぞれのOが別のSiと繋がっていてイオン的に安定に成っている、またこのような結晶を共有結合結晶と呼ばれる。ダイアモンドも同じく共有結合結晶だが、結合している原子の角度が水晶とダイヤモンドで違ってくるので結晶系も違う物に成る。

 分子構造を思い浮かべながら魔力を込める、一つ一つの分子がしっかり結合し不純物が入らない様なイメージを込める。


「よし、こんなものかな」


 蓋をして完成だ、魔力は150ほど込めておいたのでどんなものになるか楽しみだ。


「お疲れさま、けど魔石を作れるなんて知らなかったわ、どんなのができるか楽しみね」

「ええ、楽しみ、良いのができて、許可が出ればレイアに魔道具の材料として使ってもらうのも良いかもしれないね」

「本当!楽しみにしてるわ、所でクラブ活動はどうするの?たっぷりチラシを貰って来たようですけど」

「取り敢えずサンドイッチを食べながら見て行きますけど、レイアは何所に入るか決めたの?」

「私は魔道具クラブに入る事にしたわ、魔道具研の下部組織って感じで最新の魔道具も作ってるみたいで直ぐそこに決めたわ!」

「うーん、私もそういった良いクラブが有ればいいんだけど」


 サンドイッチを食べてる間に見たチラシには残忍ながら私の琴線に触れる物は無かったので、残りはまた明日見よう、明日はパーティーのためにお休みのはずだけど、やりたいこともあるので早めに寝る事にした。


 翌朝


「すごく・・・大きいです」

胸膜炎になりました☆

左肺が痛くて昨日病院行ったら肺気胸疑われたけどCT撮っても穴もバルーンも無く、その他諸々の検査も引っかからず結局、胸膜炎に成りかけで落ち着きました、取り敢えず2~3日療養予定

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