翡翠の守護書庫 14
私、チョロい、でも、だってあそこまで大きな原石見せられたらね、しかたないよね、ね!
「ではこちらの書面にサインをお願いします、一応、成功報酬は私の所持する鉱物との交換以外にもお金での受け取りも可能としています、大丈夫だとは思いますが在庫が無くなる可能性もありますので念のためにこのような形にしましたわ」
念のため書面の確認をして強制事項は魔獣がこの都市を襲いに来た時に迎撃すること以外は無かった、ほかの二つは手伝える時に手伝うと言った様な感じだ、もちろん報酬はそれらを手伝った時のみ発生する、成功報酬の条件はそれぞれの研究所で聞いてほしいとのこと、魔獣討伐はその魔獣ごとの報酬によると、確認を終えて書面と一緒に差し出されたペンで署名した、それらをフレーラに返して確認してもらう。
「確かに、ではこちらを差し上げます」
さっきまでずっと机の上に置かれていたので書面の確認中も気になって仕方なかったアイオライトが今、私の手の中に、おお、これだけ濃い青なのに透明度が高い、見る角度を変えると濃い青から急に透明度が高くなり殆ど透明で薄っすらと淡い枯草色になる、これはアイオライトの結晶方向によって吸光度が違うため角度によって違う色に見えるためだったはずだ。
母岩は泥質ホルンフェルスのようだ、これは接触変成岩で簡単に言えば地下深くからマグマが登って来た際にその周辺の岩石を熱していきできた岩石で泥岩や砂岩等の堆積岩がこの影響を受けるとホルンフェルスと呼ばれる、またた以前にも説明した大理石もこのように出来きる、違うのは変成を受けた元の岩石が石灰岩か堆積岩かの違いでしかない。比較的地表に近い場所で起こるため高温低圧環下であり、この環境下で形成される宝石も有る、その一つがこのアイオライトだ。
くるくると手に持ったでアイオライトの角度を変えながら思いにふける。
(やっぱりこうして実物を見ながら鉱物の特性を確認したり、鉱石と母岩から形成された環境に思いをはせるのは楽しいなぁ」
「心の声が漏れているよリタ君、話の続きだが、後でそれぞれの場所に行って面通しを済ませておこう、あと、今後来てほしい場合は生徒カードから音が鳴って集合場所もカードに記される様に成るからね、それじゃあ、なぜフレーラ君たちがここに居るかの説明をしようか」
ああ、そういえば何で居るんだろか、完全にアイオライトのせいで思考の外に飛んでいった疑問が戻って来た。
「単純に言えば彼女たちが他国の貴族だからだ、この都市の政治に末端ながら我々も関わってくるから非常に仲のいい隣国の貴族でも内政干渉に成っていしまう可能性が高いからね、その為肩書は視察官となっている、違うのは肩書だけで生徒議員と大差はないからしっかり仕事をしてもらうけどね、本当は君にも入って貰いたけど、ま、書類仕事させるよりもこうした依頼をして貰うほうが学園のためかもしれないな、ではそれぞれの研究所に案内しようか、案内は生徒副議長のノーラが一緒に行ってくれる、たのんだよ」
「はい~、でわぁ~行きましょうか~」
妙に間延びする独特な喋り方の人がノーラさんか、糸目で目を開けているようには見えないが前は見えているのだろうか?
「よろしくお願いします、それでは失礼しました」
二人が行ったあとの生徒議員室では
「しかし、フレーラ君の言った通りに成ったな」
「リタさんは、おじい様と同じ趣味人の気配がしたので金銭よりも好きな物を交渉の材料にした方が話が纏まりやすくなると思ったのですわ、それに、優秀な人材を遊ばせておくのは勿体ないですから」
「確かに、宝石の分の支払いは後で見積もりを出しておいてもらえるかな」
「それならこちらに」
わたされた紙を見ると各種宝石や貴金属の原石の名前とそれらの値段が記入してあったのだが
「これはどうなんだい?かなり高額な物が多いがこんなに必要かい?」
「私の見立てではこのくらいは必要ですわ、それだけの仕事をなさってくれると信じていますもの」
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生徒議員室から退出して最初に向かったのは素材研だ、場所は壁際にある大きめだが無個性な白く四角い豆腐のような建物だった、某サンドボックスゲーを彷彿とさせる。ノーラさんが扉をノックして「こんにちはぁ~リタちゃんをおつれしましたよ~」と言い終るやいなや仲が騒がしく何かが倒れたりする音が聞こえてきて、ドタドタと大きな足音が近付いてきて勢いよく扉が開かれた。
「やあやあやあ、お待ちしていましたよ土壁の魔女君、私はここの主任のマーテルです、どうぞよろしく」
中から飛び出してきたのは若い男性だった、耳がややとがっているのでおそらくエルフなのだろう。土壁の魔女に関しては、ある程度諦めよう・・・
「こちらこそよろしくお願いします、ですが、名前だけは普通に呼んでください」




