翡翠の守護書庫 12
「ひゃっ!何時の間に」
「ついさっきですわよ、打ち込みが終って戻ったらお二人の話が聞こえてきましたのでつい、鉱国に来られる際は色々都合を付けますわよ、領地に所有している鉱山も有りますからそこへの立ち入りとかお父様にお願いすれば入れるようになりますわよ」
鉱国は多くの鉱山を持ち銅や鉄等が多く、それらの場所は特に立ち入りに特に制限は無い、しかし、宝石・金・プラチナ・ミスリル・オリハルコンの鉱山は立ち入りは厳しく規制されているため中々入れないらしい。つまり好機!
「その時にはよろしくお願いします!」
「ふふふ、必ずお越しくださいませ、あら、次はリタさんの番みたいですわね」
教官に名前を呼ばれたので二人と解れて教官の元に向かう、代わりに打ち込みが終って戻って来たのはウルリーカなのだが、息を切らして杖をある意味正しい使い方をしている。
「よろしくお願いします」
「おう、こっちは守りだけだからとりあえず打ち込んでみな、その都度指導を入れるからよ」
ガーズ教官ではない砕けた感じの教官のようだ、とりあえず打ち込めと言われてもな、教官の装備は革の防具と直剣と盾なので一般的な騎士みたいだ、剣と盾は木製で表面に革が張って有り、打ち込んだ時に双方の衝撃を吸収しやすくなっているようだ。
「では、行きます!」
ウォーピッケルを右手で真ん中、左手で底側の端を持って走り出す、そのままハンマー側で左上から打ち込む、盾でいなされたたが、勢いを殺さず今度は右上から繰り出すもやはり盾で防がれてしまった。弾かれたのでその反動を利用し一回転してピッケル側で水平に打ち込むと盾ではなく剣で防がれたが「ボギッ」と変な音がした。
「ストップ!剣が折れやがった!おいおい、一応新品だったんだがな、う~ん木のもろい部分だったのか?」
教官の剣がぽっきり折れてる、折れた場所はウォーピッケルを受けた場所だがよく見ると当たった場所が抉れている・・・、対してピッケル側は全く傷もへこみも無い、何故だろう全く心当たりが、あ!そういえば採掘初心者ってスキルあったけどその補整が効いてるのかも、そりゃ岩石と木製の剣を比べれば岩石の方が断然硬いけどさ!初心者でこれならもっと上のクラスだとどうなるんだよ・・・
「あの~、ちょっと盾の方でピッケルを受けてもらって良いですか?壊れるかもしれ無いんですけど」
「ん?ああ、いいぞ、破損は織り込み済だからな」
「念のため盾を地面に突き立てるようにしてもらって良いですか、突き破って教官ごととかは嫌なので」
「ハハハッ、面白いことを言うな、剣が折れた理由が有るようだしやってみな!」
腕に固定していた盾を外して地面に突き立て上から押さえて貰った、横から教官に当てない様にゴルフでスイングするように当て所を確認して今度はスキルに意識を向けてみると単純に魔量を消費してその分の威力を出せるみたいなので程ほど、1%くらいのMPを注いで打ち込むと当たった感触は有るが紙を破いた程度だった。盾の方は中央部の打ち込んだ場所は突き抜け、その周りはボロボロ崩壊していった、もっとMPを注げば木も革も一気に崩れるかもしれない、スキル怖い。
「おい、リタって言ったか?すげぇなどんな手品だ?魔法かスキルか?」
「採掘スキルです、最初の剣の方は無意識で発動していたみたいですいません、今回のではっきり解ったので今度は意識しなければ発動しない筈です」
「そうか、盾をやったのはどのくらいの魔力を込めたんだ?」
「1%くらいです」
盾の未だポロポロ崩れている穴の開いた場所を指で突きながら教官がしみじみと言う。
「1%でこれかぁ~、訓練要らないんじゃ無いか?しっかし採掘スキルってなぁこんなに強力なもんなのか?」
「他の方のスキルを使っている所は見たことないので何とも言えません、知って居そうな人が居ますから聞いてみましょう、フレーラさーん」
「はぁい」
「この威力は普通と比べてどうでしょうか?」
「ん~そうですわね、玄人の職人クラスが強く撃つ時くらいでしょうか?つまり1%でこれなら相当な部類ですわ、やっぱりMPの総量が多い方は違いますわね」
「だ、そうですガーズ教官」
途中から騒ぎを気にしてかこちらに寄って来たガーズ教官がいたので説明になったはずだ、その前に起きたことも説明しておいた。
「そうか、まずはリタ、もうスキルは使わない様に、あとゴンド!新品の備品をこわすんじゃねぇ!剣はともかく盾は壊れかけの使えば良かっただろうが!安い盾と言えどあの総務にネチネチ小言言われるのは俺なんだぞ!」