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翡翠の守護書庫 4

「試験管さーん、起きてくださーい・・・だめか」


 目は開きっぱなしなので目の前で手をぶんぶん振りながら声をかけるが反応がない、ただの試験管のようだ。


「仕方ありませんね、[アクア]」


 無級の周辺の水を集める魔法で試験管の頭上にバケツ一杯分くらいの水を集めてそのまま落とす。


「プハッ!今何が!」

「おはようございます、何時までも動かないので水を掛けさせてもらいました、今乾かしますね」


 この世界にいい感じの乾燥させる魔法は無かった、有ったのは水分を火属性で加熱して飛ばす物と風属性で風乾させる物で、これらは全身乾かそうとすると少し時間がかかるので、発想を変えてみた。


「[アクアドレイン]、どうでしょうか?まだどこか濡れていますか?」


 簡単な話[アクア]で集める水に指向性を持たせただけで名称を変えただけだが、今の所これが一番早く乾く。

 試験管は軽く体を確認して手に持っている名簿と採点用紙も乾いていることを確認してから頷いた。


「リタ=ラインバース、これにて魔法試験を終了します、お疲れさまでした」

「あら?まだ使おうと思ってたその他の魔法を使ってませんよ」

「大丈夫、さっきの乾燥魔法で十分わかったから大丈夫ですよ、さあ、次の人も待っているので行ってください」


 むう、ボーリングみたいな魔法を見せようと思ってたのに残念。次の体力試験の場所はすぐそこか。

 体力試験は単に走るだけだった、服装はスカートではなく動きやすい少しゆったりしたズボンを履いているので問題ない。ヘレンとの特訓で多少に体力と筋力は上がっているはずだ。


::::::


 ん~、遅い次々追い抜いていくけど10歳の女の子に抜かれるとか大丈夫だろうか?この厳しい世界で生きていくには少々心もとない。

 体力試験は魔法なしでただ走るだけだが、魔砂時計という走っても片方に落ちつ続けるという物をもっていき、折り返し地点の人に確認をもらって戻ってくるだけだ、距離は2キロくらいで、これまで数人か抜かしながら戻って来た。


「戻りました、確認お願いします」

「ん?もう戻って来たのかずいぶん早いな・・・うん確かに、お疲れさま、この後はもう試験は無いから各自解散だ、発表は明日の朝に成るから今日はゆっくり休むといい」

「はい、ありがとうございました」


::::::


 試験は別々に成ると分かっていたので終わった後近くのカフェでルースと待ち合わせしようと約束していた。まだ来て居ないようなのでテラス席で甘そうな飲み物を頼んだ、この体に成ってから無性に甘い物を食べたくなった気がするまだ子供だからだろう。

 暇だったので来る前に作り続けた水晶の加工品(内彫り無し)を魔法箱(マジックボックス)から取り出す。これは出発する前にお父様から前祝として頂いた物だ、ほかにも短剣やポーション等を貰ったのでこの中に入れてあり、箱その物は専用のポーチ入れて腰に付けている。


「何を彫ろうかな、カフェの名前は「白梟の止り木」か、フクロウは流石に実物がいないと作れな・・・居た」

「・・・」


 真っ白い一匹のフクロウが居る、来た時は気が付かなかったがジッとこっちを見ている。何かした覚えはないんだけどな・・・どうしようかと思っているとお姉さんが飲み物を運んできてくれた。


「はーい、お待ちどうさま」

「ありがとうございます、あの、あそこにいるフクロウがずっと見てるんですけど、私何かしてしまいましたか?」

「ん~、あの子はよっぽどちょっかい掛けなきゃ何もしないから大丈夫だよ、あんな感じで見てるときは構ってほしい時だね、ちょっと手を貸してくれるかい?」


 言われるがまま、右手を出すと革製の手袋を嵌められた


「おいで」


 呼ばれた瞬間に羽を大きく広げてフクロウがスーッと飛んできて付けている革手袋に止まった、近くで見ると意外と大きい。


「ちょっと重たいです、けど、かっこよくて賢いんですね、お名前は何というんでしょうか?」

「スノーって名前だよ、子供の頃怪我してるのを拾ってね、それからずっと一緒に居るのさ、それに動物じゃなくて魔獣だからか妙に賢いんだよ」

「魔獣でも人に慣れるんですね、そうだ、スノー、かっこいいポーズはできる?」


 ダメもとで聞いてみると、急にキリッとした気がする。


「ちょっとそのままでいてねぇ~・・・はい・後ろ向いて、そのまま、そのまま」


 左手に水晶を持ってスノーをじっくりと見ながら内彫りのために[カット]を行う。ポーズがポーズなだけに躍動感は無いが生き生きとした感じに仕上がった。うん、いい感じだ、スノーも出来上がった物を首を曲げながら見ている。


「あらあら、これって雑貨屋で売り出してるけど直ぐに売り切れに成るって噂の水晶の置物じゃないか、実物は初めて見たよ!」

「こちらではお兄様のお店で売られている様ですけどそんなに売れていたんですね」


 そういえばこちらに来る前にお兄様から追加の注文が有りましたね、王都でも平民階級で流行してたけどこっちでも同じ位売れているようだ、作り方は特に秘密にしている訳ではなく、聞かれれば教えてもいいと言う事に成ったのだが誰も聞きに来ないし探りにも来なかった、むしろ現状ではこればかり求められて本来の仕事に支障が出て居るので作り方を伝えて行きたいんだが、ほかの職人は頑固な人が多いようでちっとも広がらないとお父様とグスタフさんが言っていた。

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