翡翠の守護書庫 3
「お兄様がこうなった場合はどれ位掛かりますか?」
「そうねぇ、ティータイム1.5回分くらいかしらね、紅茶入れなおしてくるわ」
「僕もお手伝いします」
出遅れてしまい二人がお茶を入れに行ったので私はお兄様の話をBGMにしながら部屋の中を観察する。分かる物の多くは大理石、結晶質石灰岩だろう、あとは翡翠や水晶、瑪瑙等が半分、そしてまったく分からないものがもう半分、さっきまで翡翠で頭が一杯に成っていたので気が付かなかったが、変な物がたくさんある。
「虹色の柱状の結晶、ゆっくりと開いていく石質の透明なバラ、中でチリチリと燃えているような輝きが見える八面体結晶・・・ふふふふふ、楽しくなってきました」
「何かしらね、あのカオスな空間」
「入りずらいです」
「けど、お茶がダメに成っちゃうから行こうか」
「はーい、お待たせ、何か面白い物はあった?」
「すいません、部屋の中をジロジロ見てしまって」
「いいのよ、この部屋は客間兼物置だからね、いろいろあって面白いでしょ?マイルームと作業部屋はそっちだからね、まあ特に見られて困る物は無いから見て貰ってもいいけどそろそろ暗くなるしこれを飲んだらご飯食べにいってて、寮に行った方がいいわね。
この部屋のあれやこれやを説明して貰い、時間が過ぎて行った。
「そろそろかしらね、リウス!リタちゃん達とご飯行くけど置いてくよ!」
「ハッ!一緒に行く!」
「それじゃあ行きましょうか」
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「おいしいですね、このお肉、豚とは違うようですが何でしょうか?」
「これはこの辺に生息しているフックボアって魔獣の肉ね、そのまんまだと臭いけど、ちゃんと処理すれば臭いも無くておいしいのよ」
今食べている謎の薄切り肉の盛り合わせはイノシシの魔獣のようだ、魔獣は毒さえなければ食べれるそうなので問題ない、むしろ前世では、じい様の山に入ってくるイノシシやシカ、その他害獣を駆除する目的で罠の狩猟免許も持っていたが、しし肉が癖に成ってしまい、そればかりはべていた時期が有る。これは食べた感じはメスのもも肉だな、うん、うまい。
「たまにお母さんが帰ると持ってきたお肉に似てる・・・「買って来た」って言ってて、なんの肉か考えてなかったけど、帰る途中に「狩って来た」って事だったのか」
「ルイビアさんて強かったんですね、ああ、そうじゃなきゃ色々飛び回れないのかしらね」
「リタにルース、聞いてなかったのかい?ルイビアさんは巷では戦う宝石鑑定師との呼び名が高いんだぞ、宝石目当てで襲ってくる盗賊を片っ端から鉱山送りにして新しい宝石を掘らせてるんだ」
「私が目指す先に近いかもしれません、出会えたらご指導をお願いしましょう」
「お母さんつよかったんだ、僕も強く成れるよう頑張る!」
ルースは強くなりたいのか、宝石細工師には必要ないかもだけどやっぱり強さには憧れるんだろう。
「そうね、ルース君は強く成らなきゃね!どっかのバカは鈍感と違って、そっちは大丈夫。たぶん」
「どっかのバカとは誰だ?」
その疑問は解消されないまま二日過ぎていき、入学試験日が来た。
「試験日だけど、どんどんお祭りって感じの雰囲気が強くなっていくわね」
「うん、けどこの雰囲気のおかげで緊張しなくて助かってる」
「ぱっぱっと終わらせましょうか」
試験はステータスの確認後、筆記の一般常識、魔法を使える場合は魔法試験、最後に体力を測るのだが。
王都の教会に合った物の簡易版(HP、MP、状態、使える魔法のみ解る)で確認されたのだが、あの時以降はステータスを確認してなかったので解らなかったが、MPが1000を越えていた、これでまず周りに驚かれた、トップランクの魔法師並みだそうな。
次の筆記は問題なく終わったが、魔法試験ではギャラリーが凄く居た。
「いつもこんなに居るんですか?」
試験管に尋ねると返事は否だった。
「いつもなら素質の有りそうな者を引き込む為に多少は見に来ますが、今日は何時もの3倍は居ますね、九分九厘、君目当でしょう」
「凄くMPが多い位なんですけど」
「それだけ多い方は滅多に居ないし、魔法の研究にはいくらMPが有っても足らないですからね、さ、喋ってないで始めますか、試験はどの属性でもいいので攻撃、防御、その他の魔法を使用して貰います、使えないものが有ったら申告してください。あ、攻撃魔法はあそこの的を狙ってください、防御魔法は私が触って確認します」
「攻撃と防御はいいのですが、その他は回復魔法などですか?」
「回復魔法でも、補助魔法でもいいです、まあ攻撃と防御系以外なら何でもいいですよ」
「分かりました、では防御と攻撃魔法から使います」
「防御と攻撃?」
的に向けて魔力を練って、今回は試験だしちょっと気合入れて魔力量を増やしてから~ほいっと
「[アースストーム]、どうぞ触ってください」
「[アースウォール]に似てるが魔力の波長が違うな、硬さは十分です、攻撃魔法の方お願いします」
「そこに居ると見えないと思うのでちょっと横に成るように移動していただけますか?」
試験管が土壁の裏から的と土壁の表が見える位置に移動して貰う、何時までも消さない土壁を疑問に思っているようだ。
「それでは行きます、発射!」
縦横1m、厚さ30cmの土壁から100発の硬質化させた細長い土の弾が飛んでいく、ほとんど硬い土壁を1×1×30cmにしただけだが、土壁から弾へ変換の手間が減った分魔力を硬質化に回せる。前に使った軟質の弾だと単体が大きい方がいいので使い所によるだろう。
弾が命中した的は穴だらけに成り力なく倒れた。教会での反省を込めて的に当たる前に魔力による硬化が解けるようにしたので、バックストップの土山は無事だったが飛んでた弾が急に土に惑ったので土煙がひどい、まだまだ改良の余地ありだな。
それはともかく、今は集まったギャラリーからざわざわとささやき合っている声が聞こえてくるが、試験管は機能停止中なのでどうしようか?
霰が降ってきました、北陸はまだ寒いです。




