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ガゼルの手品師  作者: ドアノブ
6/10

5 再、再、追いかけっこ

「本当のことなんですよ!」

「信じてください、隊長!この目で見たんですよ!」


2人の男が驚愕の表情で訴えかける。

それを聞いていた隊長と呼ばれる男はためいきをついた。


「ってことは何か?ソイツはあの”ダラス様”の関係者、もしくはその”ダラスの人”だと言うのか?」

「はい!おそらくは!」

「見たのです!指を鳴らし、一輪の花を手の中に召喚させたのを!」

「そんな訳あるか!」


隊長は一声上げると、そのまま椅子に座り込む。


「どうせただの見間違いだろう。それにダラス様がここに居るだと?馬鹿馬鹿しい。ダラス様は何百年も前に逝かれたのでは無いのか?」

「いやしかし、我々はダラス様を見たことがありません。故に我々がダラス様を量ることはできません。」

「それに、この町は何者でもないダラス様が居たからこその町。数百年経った今でも、ダラス様に近づけるようにと日々鍛錬をしている学生は大勢います。」

「ぬう・・・」


隊長1人+門番2人、合わせて3人がそいつの正体について考えていたその時。


「失礼します!」


一人の兵士が部屋に入ってくる。


「お伝えします。ただいま、町にとんでもない大魔法使いがいらっしゃるとの情報です。」


3人の顔色が変わる。


「・・・!まさか」

「そのお方は!!」

「そいつはどこにいる!」

「ガゼル中央の公園です。」

「よし、急げ!馬車の準備をしろ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ここで一回、指を鳴らします。」


パチンという音と共に、観客は思わず唾を飲む。


「手を開いてください」


手品に協力してもらった男の子は自分の手を開く。


「あ!!コインが2枚になってる!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


観客は拍手喝采。

この町のお金だろうか、紙やコインが観客が足元に置いていく。

やばい、気持ちいい。何年ぶりだっけ、路上で披露するのは。


何故こんなことになったんだっけ。

そうだそうだ、全力疾走して疲れた俺は公園のベンチで休んでいた。

そして疲れを取った後、暇つぶしに公園で遊んでいた子供達に手品を見せたんだ。

そしたら異常に盛り上がって、公園に居た他の大人まで寄ってきて・・・。


「錬金だ!錬金術だ!」

「ダラス様!ダラス様が来られたのだ!」


気づけばこんな感じだ。

ざっと数えて観客は80人はいるだろう。

それにしても、ダラス様ってなんだ?マジシャンの代名詞か?

その時だった。

公園の入り口の方から馬の鳴き声が聞こえた。

俺と観客はそっちに振り向く。

馬車だった。その馬車から男が3人降り、こちらに向かってくる。

その内の2人は見たことのある顔、さっきの門番だった。


「隊長!奴です!」

「そうか!」


合図と共に、こちらに向かってくる。

そして俺の目の前に止まる。


「貴方はダラス様ではありませんか?」


ダラス?ダラスってなんだ?

俺はその時、ダラスはマジシャンのことだと思った。

だって、観客が俺をダラスだって言うから。


「はい」

「おおおっ!!」


観客が一斉に唸りを上げる。


「では、ご同行願えますね?」


隊長と呼ばれる男がこちらに手を差し伸べる。

いや怪しすぎだろ!怖すぎだろ!

と、とりあえず丁重にお断りしよう!そうしよう!


「いえ、用事があるので、ではまた!!」


猛ダッシュで駆け抜ける。


「ま、待て!」

「隊長!追いますよ!」

「わ、わあっ!!」


また追いかけっことは、なんてツイてない一日なんだろう。

ちなみに最後のセリフは俺の声だ。我ながらなんと情けない声だ。


「ええい、何をする!」

「そこをどけ!業務妨害だぞ!」


何だ何だ?走りながら後ろに振り向く。

観客だ。さっきのショーの観客達が奴らの進行の邪魔をしてくれているのだ。


「ダラス様を守れ!」

「ダラス様になんと無礼な!恥を知れ!」


ありがとう、ありがとう皆!

思わず泣きそうになるがこのチャンスは無駄にしたくない。

再々、全力疾走だ。

  

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「居たか?」

「居ない。どこ行った!?」


観客達のお陰で、何とか路地裏に置かれていた樽の陰に隠れることには成功した。

が、このままではジリ貧だ。ここから抜け出そうにも、見張りがいてしばらくは出られそうにない。

どうやら俺を追っているのはあの3人だけではないようだ。

どうするか悩んでいたその時だった。


「・・・こっち来て!」

「え?」


そこに立っていたのは小~中学生ぐらいの女の子だった。   

しゃがんでいた俺に手を差し伸べ、こう言った。


「いいから早く」


強引に俺の手を掴み、引っ張り上げる。


「うおお!」

「しっ!静かに!」


そのまま手を掴んだまま彼女に引きずられるように走る。

どうやら彼女はこの辺りの裏道に詳しいようだった。

一瞬、奴らの仲間かもしれないと思ったが、さすがにこんな子供は使ってこないだろう。

俺は行く末を彼女に委ねることにした。

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