4 どうぐや、おれんち
門を抜けたそこは、商店街だった。
様々な人々が道の端に店を構え、食べ物や道具が行き来していた。
「ッこれが日本か・・・?」
目を疑う。いくら擦っても何も変わらない。つまり現実だ。
確かに、道の端に店を構え、商品が行き来している。これは俺の知っている町だ。
目が腐ったのだろうか。
車の代わりに馬車が走っている。
他の通行人は皆揃いも揃ってコスプレ・・・と思うには無理がある。
まあ待て、俺の本心。意味不明な状況にあるのはわかるが焦るな。
取り合えず一旦整理して考えることにしよう。
まず1つ、ここは日本じゃないのか?
アメリカとか、ヨーロッパとか、でなきゃこんな世界観はありえんだろう。
だが出店の看板に書いてある文字がその疑問をぶっとばした。
「どうぐや おれんち」
道具屋、おれんち。日本語だ、読める。
つまりここは日本ということになるが、よく考えればさっきの門番の言葉も日本語だった。
でも日本のどこだ?何県だ?こんなアニメそっくりな町なんて聞いたこともないぞ?
「よお、何かお探しかい?」
「え?」
この店の店主だろうか。見るからに中年のおっさんだ。
「いい品があるんだよぉ、坊ちゃん。これなんてどうでぇ?」
「いや、俺は」
「これもおすすめなんだよなぁ、あとこいつも、それからこれも、さてさてお会計は・・・」
そのおっさんはあっという間に自分の勧めた商品をレジに持っていき、置いてあったそろばんをはじき始める。商品の会計の計算をしているのだろう。
「ちょっと待ってくれ!」
「・・・え?なんだぃ坊ちゃん」
「ここは何処だ?」
「どうぐや、おれんちだよ」
「いやそうじゃなくて、ここだよここ!」
何とか伝わるように、真下を指差す。
「ん~?ひょっとして、この町のことか?見ねぇ顔だと思ったぜ」
良かった、通じたようだ。
日本語の会話なのに通じて良かったって何。
おっさんはそろばんの打つ手を止めず、そのまま話し始めた。
「ガゼルだよ」
「え?」
「この町の名前。マジシャンや貴族方しか入ることの許されない世界有数の学生街だ。」
「学生街?学校があるのか?」
「あるとも。今頃、授業の真っ最中だろうな。もう少し経てば終わると思うが」
話し終えたと同時に、そろばんを打つ手も止まる。
「はい、全部で1043Gだ。払いな」
おっさんは手の平で「早くよこせ」と催促する。
「ちょっと待ておっさん!俺は買うなんて言ってねーぞ!」
「はぁ?レジに商品があるじゃねぇかよ坊ちゃん。いいだろうが、たんまり有る癖によぉ」
あんたが勝手にレジに商品を持ってったんだろ!と言いたかったが、おっさんの顔面の怖さに引っ込んだ。
なんだよこれ、払わなきゃダメなのか!?日本円なら一応あるが・・・ってん?
「たんまり?たんまりって何が?」
「何がってお前、貴族の坊ちゃんなんだろ?」
「そんなわけないだろ!」
「じゃあ学生か?なんで学校に行ってねーんだ?」
「え?」
しまった、墓穴を掘ってしまった。
貴族と言うと金を払わなければいけなくなり、学生と言うと「何故学校に行ってないのか」と問われる。
「おい、どうした?金払えよ」
こうなったら賭けだ。
俺は財布をポッケから取り出し、1000円札を抜いた。
その通り。日本円が通じるかどうかを、試してみることにしたのだ。
そのまま1000円札をレジのテーブルに置く。
どうだ!?金置いたぞ!?
「なんだぃそりゃ」
しまったああああ!ハズレだああああ!!
「すみませんでしたあああ!」
俺は大きく一礼しながら叫んだ後、1000円札を置いたまま回れ右&ダッシュで店を飛び出した。
闇雲に、逃げるように走る。数分程経ち、疲れきったころに足は止まる。
そして目の前にあるもの。息を切らし、汗を垂らしながらたどり着いた場所は公園だった。
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「なんだったんだ?一体」
「・・・どうしたの?」
「やっと起きたのか。さっき変な客がきてさぁ、こんなの置いてったんだよなぁ。」
「・・・!これって・・・!?」
「欲しけりゃやるよ。確かに鮮やかな色をしてるよな・・・ってどこいくんだよ!?」