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ガゼルの手品師  作者: ドアノブ
4/10

3 初披露

~前回のあらすじ~


町を求め、歩き出した長谷川悠。

川を見つけ、一息着くことができたがその川の化け物に襲われる。

そして、逃げるために闇雲に走った先に、念願の町を見つける。

屈強な男2人が少年の前に立ちはだかる。

その男の一人が口を開く。

「見せろ」

「・・・は?」


何をだ?俺は早く町に入りたいのだが。

町の前に立っているところを見ると、この2人は門番か何かなのだろうか。

それにしても服装がスゴイ。中世のヨーロッパを題材にしたアニメ「テルロマ」に出てきたキャラクターが着ていた服と似てる。


「あの、何を・・・?」

「はやくしろ」


ひょっとして、通行許可証か何かが必要なのだろうか。

町に許可証が必要なんて聞いてないぞ!

だとしたら町に入れない上、ここで立ち去ると不審に思われるだろう。

ほら、門番さんの2人の顔色が変わり始めている。


まずい。なんとかしなきゃ・・・。

思っていたその時、


「あの~すみません」

後方から声。

そこにいるのは2人の男女。見るからにカップルだ。

さっきの声は女性のものだろう。

服装はやはり「テルロマ」に出てきてた奴そっくり。

新婚さんなのだろうか、手をつないでいる。


「入ってもいいですか?」

「見せろ」

「はい」


そう言うと彼女は自分の右手の平を上に向け、何かをつぶやいた。

一瞬、俺は目を疑った。


火だ。彼女の手から火が現れたのだ。

彼女の手の平が燃えている?

いや違う、彼女が自分の手の平の上に炎を作りだしているようだった。

ライターとか、マッチとかとは違う。その炎はまるで生きているようだった。

彼女の手の平の上にある炎は、穏やかで明るく、鮮やかな赤色を作りだしていた。

ふと横を見ると、男の方も手の平に炎を作っていた。

こちらの炎は青く、力強さを感じられる炎だった。


「魔法・・・?いやまさか」


思わず口にする。

そんな馬鹿な、ありえないと思いたかった。

ひょっとして・・・?


「おい、入っていいぞ」


門番は道を避け、カップルは町の中へ入っていく。


「次はお前だ、見せろ」


2人は俺の方を向き、何かを要求する。


「門番さん、今の2人は何ですか?」

「え?何って、マジシャンだろ?」

「あーなるほど」


これですべて説明がついた。

おそらく、この町でマジシャン(手品師)大会の類が開かれるのだろう。

つまり、「見せろ」とはその参加資格、つまり手品を見せろということだろう。

さっきのカップルも手品師だったのか。


「はやくしろ!お前、もしかしてノーマルか?」


マジックからはもう足を洗ったのだが、まあいいだろう。

元日本チャンプの力を見せてやる。

地面にある「アレ」を拾い、右手を門番の前でちらつかせる。


「はい、種も仕掛けも在りません。」


そのまま、さきほどのカップルがした事と同じように、手の平を上にする。


「ここで手をぐっと握ります」


門番2人の目線が右手に集まる。


「そして手を開くと・・・!?」


勢いよく開いた手の平。

そこに先ほど拾ったタンポポが地面の土と一緒に現れたのだ。


「まだ腕は落ちちゃいねえな」


本来、花は強く握ると萎れたり茎が折れたりするのだが、力加減で調整することができる。

これがプロとアマチュアの差なのだ。


どうだ見たかと言わんばかりのドヤ顔と共に、門番2人を見る。

驚愕した門番の顔、この顔が見たかった。

そのまま土と一緒に、タンポポを自分の足元に埋めなおす。

それを見るや否や、先ほどとは打って変わった態度で。


「すみませんでした!!」

「ど、どうぞ中へ!!」


屈強な見た目をした男2人が俺に頭を深々と下げている。

やばい、ニヤニヤが止まらない。ポーカーフェイスの練習もするべきだったな。

胸を張って堂々と町へ入る。

しばらく歩いたところから後ろを向く。

さっきの門番がまだ頭をこちらへ向けて下げている。いい気味だ。

それにしても、あんな簡単なマジックであの扱い。

レベル低いなぁ、きっと面白くない大会なんだろうな。


そうだ、その大会に出場しよう!

きっと優勝景品や賞金がもらえるかもしれない!

7年のブランクがあるが、さっきの2人のお客さんの顔が忘れられない。


もっと驚いた客の顔が見たい。そう思った。


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