2 追いかけっこ
町を求めて30分程度。
草原を抜け、今は森林地帯の中を足元の道を頼りに歩くのみ。
「暑い・・・。」
本来の自分なら、今頃クーラーをガンガンに効かせた部屋でゲームを貪っていたはず。
俺は何故ここまで来たんだろう?もしくは連れて来られた?
そしてここに来るまでの記憶が無い。俺は記憶喪失者?
考えれば考えるほど謎が深まるばかり。
止めだ止め、考えると貴重なカロリーが落ちる。
・・・そういえば喉が渇いた。
しまった、勝手に脳内で「カロリーが落ちる→食べ物→口に入れる→喉が渇く」というロジックが喉の渇きを刺激してしまった!
水が欲しい・・・いやダメだ!そんなこと考えるな!今はただ歩くだけだ!
と、その時に右斜め前の方向から水の音が。
「みみ水!?」
大量のカロリーと水分を消費し、その水の音がした方向へ走る。
「か・・・かわ!川だあ!」
それにしても結構大きい川だ。向こう岸まで10mはありそうだ。
しかも流れが滝のように速い。だがそんなことはどうでもいい。身体が水分を催促する。
自らの手で皿を作り、水を汲み、口に運ぶ。これを何十回も満足するまで繰り返した。
ようやく一息つくことができた。
それにしても、川はいいものだ。
冷たくて気持ちいいし。ここで野宿するというのもアリかもしれないが、町を探すという目標がある為、旅を続けることにした。
しかし何か変だ。川の流れがさらに速くなっている気がする。
・・・あれおかしいね、川の真ん中に大きな穴が開いた。
そこから大きなザリガニが・・・ってえ!?
「ヴゥ・・・・バウゥ・・・」
巨大なザニガニはまっすぐ俺の方向に進んでいる。
体長5mはあるだろうか。
ザリガニモンスターが俺に向かって一声上げる。
「うわああああああああああ!!!」
ただ走る。闇雲に走る。逃げる逃げる逃げる!殺される殺される殺される!!!
前が見えない。ただ走ることに必死。
そのまま走っていると、気がつけば森を抜けていた。
ザリガニも追ってきてはいなかった。
「はああぁ~・・・」
思わずため息が漏れ、その場で倒れこむ。
森の先も草原だった。
草木が心地良い。
「どうなってんだよ、これ」
もうわからない。なにもわからない。わからなくなりたい。
それにさっき全力疾走した結果、体力が無くなった。
疲労も十分溜まり、疲労は睡魔を誘った。
眠い・・・眠すぎる・・・寝・・・
その時だった。
聞こえた、確かに聞こえた。その音は・・・。
「人!?」
睡魔はどこかのバイキンキャラのように吹っ飛んだ。
人間の声だった!仲間だ!助かったんだ!
疲れた身体を引きずりながら、その声の方向へ向かった。
そして思わず声を上げた。
「町だ!」