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朝焼けの戦線  作者: 海崎 涼
プロトタイプ 
4/14

2 騎士の誓い

 ライフルとエネルギーパックを手に入れた俺達はそれらを馬の横についているバッグの中にぶち込んだ。

 ほかの見張りの兵には「ちょっくら偵察行ってくる」と、言ってあるので決して不審には思わないはずだ。

 剣を腰につけ準備完了。 相棒はでっかい盾まで背負っている。


「我らが故郷へいざ行こう!!」


「おう!!」

 

 そう答えると、補給基地に別れを告げ。馬を走らせた。

 




 ラトラスへは意外と短時間で着いた。

 あの作戦計画書によると、決行は五日後、三百人規模で行われるらしい。総人口五十人のちっぽけな村では到底かなわない、そこで、俺らが避難させ、俺らは何事もなかったように帰る。そうすれば無事に終わる。

 そんな作戦を練りながら、村長の家の前に馬を止めると、降りて家に入る。

 煉瓦で造られた家の中には四十人ほどが集まっていた。

 

「集まってるな、呼んでもないのに」


 相棒が首をかしげる。

 四十人全員が泣いていた。


「何があったの?」


 少女に問いかける、すると、少女は、泣きじゃくりながら二階のほうを指差した。

 二階に上がってみると長い廊下の先に寝室が在り、その中に何名かいるのが見えた。

 入ってみると、寝床の上に今にも死にそうな白髪の男性と、それを囲む村人の姿があった。

 

「イグナかい?」


 か弱い声で老人が聞いてきた。

 

「ああ、そうだよ爺ちゃん」

 

 彼は、昔、幼くして両親が死んだ俺を育て、鍛え、送り出してくれた恩人なのだ。


「ああ、最後にお前の顔を見れてよかったよ……ありがとう……」

 

 彼の手が俺の頬を撫でた、驚く程白く、しわくちゃで、細い手だった。


「最後に願いを聞いてくれ……この村を……民を……誇りを……何があっても、守ってくれ、後は…………頼ん……だよ……」


 そこで彼は息絶えた。

 隣で泣き叫ぶ人々、そして涙を浮かべた相棒。

 まずいことになった。これじゃあ到底逃げろとか言う雰囲気ではない。

 そんな事を思っていると、俺の肩にずしりとした感触、振り返ってみると、俺の肩に手を乗せたがっしりとした男が立っていた。


「あんたが次の村長だ、イグニールさんの遺志を継いで、この村を共に守っていこう」


「ええええええええ!?」

 

「なんでですか……」


「イグニールさんは昔から君のことを自慢していたんだよ『次の村長はイグナだ』って」

 

 もしかしたら、この状況は俺にとって好都合なのかもしれない、村長の言うことなら、無視できないだろう。


「わかりました、頑張ります。」

 

「よろしく頼むぜ、イグナ村長」


 相棒が冷やかしてくる。


「任せろ」


そういうと、覚悟を決め、話し始めた。


「皆さん、私は帝国軍の兵士です、そこである作戦を耳にしました、五日後、この村を攻撃するというのです」

 

 周囲が一気にざわついた、そんな中で、さっきの男が口を開いた。


「本当か?」

 

 低く、落ち着いた声に、周囲が静まる。


「はい……しかし今なら間に合います、だから、早く……」


そこまで言いかけて、俺の言葉はさえぎられた。


「守ってね……お兄ちゃん…………私……この村大好きなの……」


さっきの少女だ泣いたまま俺に抱き着いてきた、いつの間に二階に来たのかは知らないが、さっきの話は聞いたらしい。

俺に抱き着きながら泣き続ける少女の髪を撫で俺は力強く、明るい声で言った。


「任せとけ!こう見えても俺とそこの盾の人強いんだぞ!!帝国なんかこわくないぞ!!絶対守ってやるから安心してくれ!!」


根も葉もない大嘘だった、イルドはともかく、俺のほうは訓練学校一の落ちこぼれ生徒だったのだ、そんな奴が勝てるはずがない。だが、そんな不安も彼女の笑顔を見て吹き飛んだ。


「ありがとう」


「約束する、何があっても、この村を護るよ、騎士の……誇りにかけて」


 必ず護る、この村も、人も、そう誓って俺は、作戦を話し始めた。

 

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