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朝焼けの戦線  作者: 海崎 涼
プロトタイプ 
3/14

1 長い夜の始まり

 えげつない夏の日差しが俺の体力を奪っていく。

 このクソでかい補給基地の警備を命じられ、一週間がたった。

 盗賊も来ないと非常に暇な任務である。

「おーい、交代まだかー?」

 テントに向かって叫ぶと、すぐに返事が聞こえてきた。

「あと一時間頑張れー、自慢のジビエ・コレクション食わせてやるから」

 ふざけんな、あと一時間で日没じゃねえか、と、内心でののしりつつ少しずつ夕焼けに染まりつつある空に目をやった、小高い丘に位置するこの補給基地は、見晴らしが素晴らしい、一日中立ちっぱなしだった疲れが癒えていく。

 地面に腰を下ろすと、相棒が出てきた。

「ほい、これイグナの分」

 そう言うと彼は、コーヒーの入ったマグカップを差し出してきた。

「あんがとイルド」

 短く礼を言うと、コーヒーをすすった。

 すると彼は薄い冊子を手渡してきた。

 冊子の表紙には、《スラム街及びラトラス村殲滅作戦詳細》と、書いてあった。

 殲滅__つまり皆殺し。

 ラトラス村は、この補給基地から、十五キロメートルほど離れた位置にある。そして、その真反対には、帝国軍の本部がある、つまりこの補給基地は、この作戦のためだけに、スラムの人々と、俺と、イルドの故郷であるラトラス村の人々を殺すためだけに造られたのだ。 

 帝国には、ラトラス村を襲う理由も、スラムの人々を襲う理由は無い筈だ。

「イルド……どうする……」

「ライフルってどれぐらいあったっけ?」

「エネルギーライフルが三丁だけ」

「補給基地のくせに三丁かよ」

「まだ作って一週間だしな、ちなみにエネルギーパックが五十個」

「一パック五十発だから結構撃てるな。」

しばらく考えた後イルドが口を開いた。

「やろう」

「そうこなくっちゃ」

 俺が不敵な笑みを浮かべて答える。

 既に辺りは暗くなっていた、まるで、未来を暗喩するかのように。

 

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