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朝焼けの戦線  作者: 海崎 涼
プロトタイプ 
2/14

0 プロローグ

 凄まじい爆音と共に、俺の左腕が吹き飛ばされた。

 衣服には血が滲み、胸につけられた勲章も、紅く染められている。

 俺の体から力が抜け、地面に倒れこむ。

 こんなところで死ぬために騎士になったわけじゃないのに。

 左肩から血があふれ出る。

 とうとう誰にも必要とされないまま、最期の時が来てしまったようだ。

 齢十八にして戦場に散る英雄というのも、なかなか美しいじゃないか。

 無理矢理自分に納得させると、ふと目を左肩に向けた、むき出しになった骨と肉が、ぐちゃぐちゃになっているのが鮮明に確認できた。

「これは……子供の頃、転んで膝を擦りむいたのとスケールが違うなあ」

 誰にも聞こえないであろう最小の声でつぶやいた。

 後方から足音が聞こえてきた。

 恐らく、止めを刺すべく来たのだろう。

 敵国の英雄の首を取って、せいぜい喜んでろ、どうせ俺一人で戦の勝ち負けが決まるわけでもないしな。

 せめて最後は、英雄っぽい名言残してこの世を去ろう、そう決意した俺は、現時点で残されているありったけの力を振り絞り、そいつに向かって叫んだ。

「て、帝国に、栄光あれ‼」

 最初噛んだし、一般兵も言いそうだけど、まあ良しとしよう。

「あの」

 女の声だ、優しく、透き通った声は、それだけで痛みを和らげてくれた。

 声のしたほう顔を向けると、赤毛のストレートヘアーを背中の中ほどまで垂らした女性が、俺に声をかけている、視界がぼやけて、はっきりは見えないが、夕暮れの空と重なってか、美少女的なオーラを出している。年は声から推測すると大体同い年であろう。

 返事をしようとしたが、もう声が出ない、意識が遠のいていく。

 人生の最期に美少女の声が聞こえただけ良しとしよう。

 そう思った刹那、俺は意識を失った。

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